加速(制御不能なー)
高倉晃平
プロローグ
「若狭湾でネズミ揚がる」
この小さな新聞記事が、すべての発端だった。若狭湾で漁を行っていた漁船の網に、数十匹の死んだネズミがかかったというのだ。「ここで30年漁をしているが、こんなことは初めてだ」という地元漁師のコメントで、記事は締めくくられていた。
いつものように、コーヒーを飲みながら新聞に目を通していた
2030年秋、日本のエネルギー不足はいよいよ深刻になっていた。世界中から原油や天然ガスを何の不自由なく調達できた幸福な時代は過ぎ去り、中東からの化石燃料の輸入割当をめぐって日本は中国と外交的に微妙な関係にあった。
1970年代のオイルショックを契機に始まった日本の新エネルギー開発計画は、ことごとく失敗に終わっていた。環境保護の気運が高まるにつれ、原子力発電所の新設や再稼働は困難になっていた。資源エネルギー庁は5年前の2025年、「2030年代のエネルギー供給に関する長期構想」と銘打った報告書を発表したが、内容は原発の再稼働と再生可能エネルギーのさらなる開発の必要性を訴える抽象的なものにとどまっていた。
しかし、表面的な停滞の裏で、この時、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます