女子高生同士の禁断の愛、育んじゃいました

@MK_desu_

第1話

 4時間目の終わりを告げるチャイムが響き渡る。牧野詩織は、授業中ずっと抑えていたお腹の鳴る音がようやく解放されたことに、ほっと胸をなでおろした。空腹が奏でるあの切ないグググーという音、クールで通している自分には何よりも屈辱的なもので、男子たちの視線が刺さるたび、頬が微かに熱を帯びた。


 詩織は普段、冷静沈着で通している。そんな彼女にとって、生活感丸出しのこの音は、オナラと同等の、いや、それ以上に恥ずかしい。クラスの中心で響き渡ることなど考えただけで背筋が凍る。


 しかし、ようやくこの試練が終わり、待ちに待った昼休みが訪れた。詩織はカバンの中から黒い敷物を取り出し、丁寧に広げる。そして、今日のお弁当は何かと心躍らせながら、蓋を開けようとした、その瞬間――。


 「詩織、今日も部室でキスしようね」


 突然の声に、詩織はびくりと体を震わせる。声の主へと視線をやると、金髪の美佳が悪戯っぽい笑みを浮かべていた。その瞳は挑発的で、まるで詩織の反応を楽しむかのように細められている。


 「美佳ちゃん、急に何を言ってるの……?」


 詩織の声は震え、頬は瞬く間に真っ赤になった。心臓の鼓動が速くなり、まるで身体中に熱が広がっていくようだ。そんな詩織の動揺をよそに、美佳はその得意げな笑みを崩さない。視線は冷ややかでありながら、どこか甘美な毒を孕んでいるかのように感じられた。


 「何って、美術部の部室でいつもやってるじゃん。お互いの唇を密着させて、アツーいキスを……」


 詩織は瞬時に反応し、美佳の口を手で塞いだ。美佳はまだ何か言いたげな表情を浮かべていたが、詩織の手で言葉が遮られて、くぐもった声しか聞こえない。その様子に周囲の視線が集まる前に、詩織は美佳を引っ張るようにして廊下へと出た。


 廊下に出ると、詩織はやっと美佳の口を塞いでいた手を離した。美佳は自由になった途端に、少し咳き込んでから、口元に薄い笑みを浮かべた。


 「美佳ちゃん!なんで人前でキスの話なんかするの!」


 詩織は声を潜めつつ、恥ずかしさと怒りが入り混じった表情で詰め寄る。顔全体が火照り、心臓の鼓動が速くなるのを感じた。美佳の言葉は無防備で、詩織の平静をあっという間に乱してしまう。


 「えー、いいじゃない。キスくらい別にさ」


 美佳は悪びれる様子もなく、むしろ楽しんでいるかのように無邪気に笑う。その笑みは、詩織の中に抑え込んでいた感情を再び刺激した。事実、2人は放課後の誰もいない美術部の部室で、しばしばカップルごっこと称してキスをしていた。それが遊びであっても、詩織にとっては言葉にできないほど特別で、胸の奥に秘めておきたい感情だった。


 きっかけは、あの忘れられない美術の時間だった。詩織が授業中に耐えきれず鳴らしてしまった大きなお腹の音。それを聞いていた美佳は、あの日、詩織が恥ずかしさで消え入りそうになっているのを目ざとく見つけていた。2人はその後、放課後の美術部でたまたま二人きりになることが増え、美佳は自然と詩織に近づいてきた。


 その日も、詩織はただ静かに絵を描いていた。そんな彼女の背後から、美佳がゆっくりと近寄り、ふいに耳元で囁いた。


 「牧野さん、この前のお腹の音、すごーく大きかったね。グググーって。本当に情けない音だったよ。」


 詩織の心に再びあの屈辱がよみがえり、頬が急激に熱を帯びた。思い出したくないはずの記憶が蘇り、身体が硬直してしまう。そんな詩織の様子を見て、美佳はなおさら彼女に近づいてくる。詩織はその距離がたまらなく嫌で、思わず一歩後ずさりした。しかし、美佳はそれを許さないかのように詩織の腕を掴んだ。その手は予想外に力強く、詩織の心臓がさらに激しく鼓動を打ち始めた。

 

 「今度、放課後になったら、すぐに部室に来て。二人で話したいことがあるの。もし断るなら、あの情けないお腹の音、部員全員に教えちゃうよ。後輩にもね。」


 美佳の冷淡な声が詩織の耳に刺さるように響き、詩織は一言も返せずにその場を去った。心臓が高鳴り、冷や汗が背中を伝う。言い返したい気持ちはあったが、あの恥ずかしい瞬間を思い出すと、何も言えなくなってしまった。


 翌日、詩織は学校が終わるとすぐに部室に向かって走った。美佳にお腹の音のことをばらされるのが怖くて仕方なかった。クールで通している自分が、そんな恥ずかしい秘密を共有されるなんて、耐えられない。部室のドアを開けると、そこには美佳が待ち構えていた。彼女は不敵な笑みを浮かべ、まるで詩織を試すかのようにその瞳でじっと見つめていた。


 「約束通り来たよ。だから、みんなには内緒にして」


 詩織は緊張を隠しきれず、震える声で言った。美佳の視線は鋭く、まるで猫が鼠を捕らえたときのような冷たい狡猾さが感じられた。


 「私の言うことを聞いてくれればね」


 その言葉に詩織は思わず身構えた。美佳が何を要求してくるのか、まったく予想がつかない。お金を要求されるのか、それとも何かもっと嫌なことか……。詩織の心臓は早鐘のように打ち始めた。


 「私とキスをして」


 「は?」


 詩織は思わず声を上げた。美佳の要求に頭が真っ白になり、意味を理解するのに数秒かかった。キス?なんでそんなことを?混乱と驚きで、詩織の心はぐらぐらと揺れた。どう答えるべきか、拒絶するべきなのか、それとも従うべきなのか……。


 美佳は詩織が動揺しているのを楽しんでいるかのように、ゆっくりと詩織に近づいていった。その動きはまるで獲物にじわじわと迫る捕食者のようだった。


 「私さぁ、牧野さんとキスしてみたくて。この前、牧野さんがお腹の音を立てて、恥ずかしがってるのを見たとき、なんだかすごく興奮しちゃってさ。それ以来、牧野さんのことを、性的な目で見るようになったの。だから、私とキスをしてほしいんだ。」


 美佳の言葉が詩織の心に冷たい刃を突き立てる。彼女の興奮気味の表情を見るたびに、詩織は嫌悪感が込み上げてきた。それでも、詩織は断ることができなかった。美佳の強烈な視線に囚われ、まるで逃げ場がないように感じた。反抗の意思は心の奥底に押し込められ、従わざるを得ない状況に追い込まれていることが、詩織の心をさらに重くした。


 美佳は詩織の決意が固まったことを感じ取ったのか、満足げな笑みを浮かべた。


 「じゃあ、キスしようか」


 その言葉が、二人の間に漂う緊張感をさらに高めた。詩織の心臓は激しく鼓動し、まるで胸から飛び出してしまいそうなほどだった。初めてのキス。それが女性相手であるという現実に、戸惑いと興奮が入り混じる。自分がなぜかその状況に少し興奮していることに、詩織は一層の嫌悪感を覚えた。


 「3秒カウントしたら、キスしようか」


 美佳の提案に、詩織はただ無言で頷いた。二人の顔の距離はわずか10センチもない。美佳の温かい吐息が詩織の頬を撫で、彼女の緊張を一層高めた。


 「3…2…1…」


 カウントが終わると同時に、二人の唇が静かに重なった。詩織は一瞬、世界が止まったかのように感じた。美佳の唇は柔らかく、思った以上に温かかった。彼女が抱きついてきた瞬間、詩織はその体温をはっきりと感じ、心臓の鼓動がさらに速くなった。彼女の体が自分の体に密着し、二人の間の境界が曖昧になっていくのが分かった。


 唇が触れ合うだけだったはずのその瞬間は、予想以上に長く感じられた。10秒ほど続いたキスの後、二人は一度唇を離し、互いの目を見つめ合った。その瞳には、言葉では表せない何かが宿っていた。無言のまま、お互いに軽く頷き合うと、再び唇が重なり、今度はさらに深く、長く、官能的なキスが始まった。


 詩織は美佳の舌が自分の唇を優しく撫でるのを感じ、その感触に体が震えた。美佳の手が詩織の背中を撫でるたびに、詩織の中で何かが崩れていくようだった。心の中では拒否したいという声が響いているのに、身体は美佳のリードに自然と従ってしまう。二人のキスは次第に激しさを増し、詩織はその情熱に飲み込まれていく。美佳の体温が、自分の体全体に伝わり、そのぬくもりが詩織の心を溶かしていくようだった。


 キスが終わり、二人はゆっくりと唇を離したが、その瞬間、詩織の中には一抹の寂しさが残った。美佳は満足げな笑みを浮かべ、詩織の頬を軽く撫でた。その仕草に、詩織は再び心を乱され、ただ黙って美佳の顔を見つめるしかできなかった。二人の間に漂う微妙な緊張感と、抑えきれない感情が、さらに深まっていくのを詩織は感じていた。


 それからというもの、詩織と美佳は部室での二人きりの時間を、まるで密やかな約束のように繰り返していた。キスを交わすその瞬間、初めは何気ない遊びのつもりが、今や彼女たちにとっては心の奥深くで繋がる瞬間となっていた。




 詩織が美佳を廊下に連れていく。美佳が詩織に向かって、挑戦的な微笑みを浮かべながら言った。


 「そんなに二人きりでキスをすることが恥ずかしいなら、クラス全員の前でキスしてみたらどう?」


 美佳の言葉に、詩織の頬が再び赤らむ。心臓が激しく鼓動し、身体の奥から熱がこみ上げてくるのを感じた。


 「そんなことできるわけないじゃん!これってレズだってこと、知ってる!?レズって恥ずかしいことなんだよ!」


 「詩織、レズだって、立派な愛の形だよ?私たちの愛を堂々とクラス全員に見せつけてやろうよ!」


 美佳の言葉には、彼女なりの強い意志と愛が込められていた。その熱意に押されるように、詩織は戸惑いながらも動揺を隠せない。しかし、美佳はその無防備な気持ちなどお構いなしに、詩織の腕を優しく、しかし確固たる手で掴み、教室へと引っ張っていった。


その手の温もりが、詩織の心をさらにざわつかせる。彼女の内心では、恐れと興奮が交錯し、胸の奥で激しく渦巻いていた。美佳の強い意志と、自分の心の奥深くで芽生えた新たな感情が、どこへ導くのか分からないまま、二人はその一歩を踏み出した。

 


 「皆さん、これから私と牧野さんがキスをします。」


「えっ、ちょっと美佳!?」


 女子たちの間にくすくすとした笑い声が広がり、男子たちはざわめき始める。教室の窓からは、他のクラスの生徒たちが興味津々にその様子を覗き込んでいる。


 無数の視線が二人に集まる中、詩織は恥ずかしさから思わず視線を下に向けそうになった。その瞬間、突然美佳が詩織にキスをした。そのキスは予想外のものであり、しかも今までとは比べ物にならないほど長く、深いものだった。


 その濃厚なキスが続くうちに、詩織の脳裏は思考が乱れ、感覚が麻痺していった。


 突然、教室に響き渡るほどの大きなお腹の音が鳴り響いた。クラス中が一斉に笑い出す中、詩織の頬は真っ赤に染まった。


 焦りながらお腹の音を止めようと右手をグーにして腹部を押さえようとしたが、美佳がその手を押さえた。さらに、美佳は左手で詩織の頭を優しく固定し、キスを続けさせる。お腹の音は止まることなく、教室の中で響き続ける。


 「やめて…」詩織の心は切実な願いでいっぱいになり、美佳の顔を見つめた。美佳の表情は不敵にニヤけていた。


 美佳は詩織とのキスを続け、二人の間に漂う複雑な感情の渦の中で、その瞬間を楽しんでいた。


 

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