深淵を覗く時

かなちょろ

 深淵を覗く時

 青い空、白い雲、透き通った海……。

 そんな事を言っていた日は遥か彼方……。

 毎年毎年最高気温更新中の夏。

 その暑い中、私はいとこの虫取りに付き合わされている。


 田舎に行けば既にいとこの子がいて私が来るのを待っていたらしい。

 そして今、虫取りに付き合っている。


 田舎の森の中でも日陰でも、気温が高いと冷房が恋しい……。

 キンキンに冷えていたジュースも既にカラ。

 虫取りもやっと終わったようで、虫籠にはカブトムシやクワガタなどの甲虫が沢山いる。


 家に戻り、冷たいアイスと冷房が……、天国……。


 夜は私といとこの子は同じ部屋で寝るのだが、捕まえた虫がガサガサうるさい。

 まあ、せっかく暑い中取りに行ったのだからこのくらいは良いか……。

 私も数年前までは夏休みが楽しくて仕方が無かったし。


 その夜、いとこと布団を並べ眠っていると、凄く視線を感じる。

 うっすらと目を開けると、いとこがじーっと見つめていた。

 私は思わずうわっ! と叫んでしまったが、いとこの子はえへへーとだけ言って布団に戻った。


 次の日は海に魚釣りに付き合わされる。

 元気ハツラツだ。

 魚を釣りながら、暑くなれば浜辺に行って服のまま海に入ってしまう。

 びしょびしょで抱きついてくるのはやめてくれ!


 そしてその日の夜、電気を消した暗い部屋から視線を感じる。

 また、いとこの子かと思って目を開けるが、そこにいとこの子はいない。

 寝方を変えてうつ伏せとなり、ふと枕の上を見ると……。


 そこには黒い甲虫がこちらを見ていた……。

 そう、黒いあいつだ……。

 その黒いあいつと目が合ってしまった。

 私は叫び、飛び退けた時、虫籠を蹴飛ばし中のカブトムシなどを部屋にばら撒いた……。


 暗い部屋の中、黒い甲虫が飛び交う。

 もうカブトムシなのかあいつなのかよくわからない大惨事。

 いとこの子も私に釣られて大暴れ……。

 ひと段落した時には、もう汗だくだ。

 こんなに驚いたのはいつ以来だろう……。


 汗をかいてしまった私といとこの子はシャワーだけでも浴びようとお風呂場へ。

 いとこの子が先に入って、脱衣所で下着を脱いでいると、隙間から視線を感じる。

 その隙間を覗くと、黒いあいつがこちらを見ている!


 私は慌てて風呂に入ると、いとこの子が体を流していた。

 脱衣所のあいつの事を話そうと振り向いた時、いとこの子の体が何か変だ……。

 そう、私と少し違う……。


 私は裸のまま風呂を出て、下着と服を手に脱衣所のあいつを躱し、布団に潜った……。


 布団にくるまってこれからどう接しようかと考えていると、くるまっている布団が少し持ち上がり、従姉妹が暗闇からニマーっとした笑顔でこちらを覗いて来るのだった……。


私はこの時初めて深淵を覗く時深淵もまたこちらを覗いていると言う事を知った……。

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深淵を覗く時 かなちょろ @kanatyoro

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