日没は訪れない
大陸の西方、イベリア半島。
半島の戦乱は他の地域の戦乱と違い、人の野望や欲望によって行われた物ではなく、その殆どが宗教による物であった。
神同士の戦いとも揶揄されたイベリアの戦争は、最も血で濡れた戦争であった。
信心を元に戦争を遂行した為、国が滅びようとも、最後の一人になるまで戦ったのが殆どであった。
数百年の間、徐々に宗教同士は融和し、遂に半島は一つになった。
他の国家に比べ、最も遅く成立したのだが、大陸に興味は無いとして、他の大陸へと進出を始めた。
僅か十数年でイベリアは、本土の十倍はあろう植民地を手に入れた。
だが....栄華も最早終わりへと近づいているようだ。
コルドバ家による継承が行われてから、王国は段々と不穏な状況へと変わっている。
太陽の王国とも言われたイベリアは、次第に向上するナショナリズムの影響力をもろに受けた。
イベリアの西方、ポルトガルは自治から独立へと方針を変え、今こそ自らの帝国を作らんとしている。
植民地の維持も限界を迎えている。
ヨハネス皇子はファランクスを血縁に持つ。
それを頼りに今日まで王国を保たせて来た。
王国に日没は訪れるのか。
イベリア半島の西端、ポルトガルは、長い歴史を持つ王国であり、帝国の栄光を夢見ていた。かつてはイベリアの一部として、他の王国と共に争い、植民地を広げていったが、次第にその自治権を強め、独立を目指して自らの道を歩み始めていた。今、ポルトガルの国民は、自らの帝国を築く時が来たと感じていた。
その運命を左右するのは、現王、ヨハネス皇子である。彼はファランクス家の血筋を引き、あの「槍」の異名を持つ名将アルバート・ファランクスと遠い血縁関係にある。そのため、王国の軍事力と外交戦略においては他国に劣らない実力を誇っていた。だが、彼の立場は次第に危うくなっていった。イベリア全土で勢いを増しているナショナリズムの波は、もはや単なる政治的潮流ではなく、国民の心を動かす強大な力となっていた。
「太陽の王国」と呼ばれたイベリア王国の輝きも、今や衰退を迎えつつあった。かつては世界を席巻した植民地帝国も、維持することが次第に困難になり、財政は圧迫され、国内外の政治的な不安定さが増していった。ポルトガルはその自立を進め、周辺諸国からの干渉を排除しようとしたが、次第にその動きは他の大陸にも波及し、帝国の解体を引き起こす恐れがあった。
王宮内でも、ヨハネス皇子の決断を巡る議論は激化していた。イベリアの王国は、もはや強大な一枚岩ではなかった。カスティーリャ、アラゴン、ポルトガルといった各地域の権力者たちが、それぞれの利益を守ろうとする中で、王国の統一は脆弱なものになっていた。ポルトガルはその独立を求め、イベリア本土との距離を取ろうとしていたが、それがまた他の国々にとっては許しがたい動きとなり、政治的な緊張が高まっていた。
その中で、ヨハネス皇子は一つの選択肢を考えていた。それは、ポルトガルが独立することを認め、その代わりにイベリア全土を再び一つにまとめるために軍事的手段を取るというものだった。しかし、ヨハネスがその決断を下す前に、ポルトガル国内で起きていた動きが波紋を広げ始めた。
ポルトガルの中では、ヨハネスの血縁関係にあたるアルバート・ファランクスの存在が大きな影響を与えていた。アルバートの軍事的な名声は、彼の親族であるヨハネスにも大きな支持を与えていたが、その血統を利用しようとする勢力が台頭し始めた。ファランクス家の名を冠する者たちが、ポルトガルの指導者として新たに立ち上がる気配を見せ、王国内での政治的な対立がますます深刻化していった。
「太陽の王国」としてのイベリアが徐々にその光を失いつつある中で、ヨハネス皇子の指導力と、彼の持つファランクス家の血筋に託された期待が、どれだけ彼の未来に影響を与えるかは未知数だった。しかし、彼が選ばなければならない道は、確実に困難なものであり、王国に日没をもたらすか、それとも新たな時代を迎えるのか、決断を下す時が迫っていた。
ポルトガルは、ただの植民地帝国から独立を果たし、新たな帝国を築こうとしていた。それはイベリア王国を超えた存在となるのか、それともイベリアの一部として新たな秩序を築くのか。ヨハネスの未来は、彼らの手の中にあった。
だが、ポルトガル国内の独立運動と共に、隣国との関係も再び緊張し始めていた。既にイベリア本土では、王国の衰退に焦りを感じた国々が、ポルトガルの独立を認めるわけにはいかないと、強硬な姿勢を見せていた。ポルトガルの独立と新帝国の誕生は、すでに戦争の火種を内包していた。
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