我らの草原よ
大陸が業火に包まれ、血に濡れる中、ここフィンランドは平和であった。
元々人が少なかったのは勿論の事、近年まで資源が見つからず、ただの森林しか無いと考えられていたからである。
しかし、時代は平和を許してはくれなかった。
一人のゲルマン人探検家、ノルドル・イェーガーがこの土地を調査した結果、鉄を始めとする幾つもの鉱物資源が発見された。
どの国よりも先に動いたのは、ルーシ帝国であった。
総勢10万もの大群でフィンランドを制圧し、この地をルーシ帝国の領土とする事を定めた。
.....時が立ち、ルーシ帝国が連邦制へ移行する事が決まると、真っ先に離脱を宣言しようとしたのはフィンランドであった。
しかし、アンドレイ・クルバノフ、イヴァン・ヴァガノフ等の残虐な命令の下、フィンランド市民は虐殺された。
無論、これで諦める訳が無い。
我々の土地を持ち続ける以上、敵なのだ。
今や我々一人一人が兵士なのだ。
我等を率いるヘンリク・クロニミエリ始め、幾多もの独立軍は地下を根拠として活動している。
フィンランドが独立する為に
思う存分ポルカを歌う為に
我等の草原と森林を自らの手に戻す為に
フィンランドの地下では、かつてない規模の抵抗運動が展開されていた。ヘンリク・クロニミエリをはじめとする独立軍の指導者たちは、国土を奪還するための計画を練り、地下の隠れ家で活動を続けていた。彼らは荒れ果てた大地に、ただ一つの希望を抱いていた。それは、フィンランドの独立と、その美しい大地を再び手に入れることだった。
クルバノフやヴァガノフの残虐な行為が続く中でも、フィンランドの人々の心は決して折れることはなかった。虐殺の恐怖に屈することなく、地下で活動する彼らの抵抗は日々強くなっていった。フィンランドの広大な森林、草原、そして雪に覆われた大地は、彼らにとって単なる故郷ではなく、自由と誇りの象徴であり、失われた土地を取り戻すための戦いの舞台だった。
「我々の土地を取り戻すためには、手段を選んではいられない。」ヘンリク・クロニミエリは仲間たちに言った。彼の目には決意と怒りが宿っていた。「ルーシ帝国がどれほど強大であろうとも、我々の意志を試すことができる者などいない。我々の土地を奪う者に、絶対に勝つ。」
その言葉に続いて、フィンランド独立軍のメンバーたちは力強く頷いた。戦うためには犠牲が伴うことは理解していた。しかし、自由のために戦うことは、彼らにとって当然の義務であり、それ以上の誇りだった。
その夜、彼らは地下の隠れ家で集まり、作戦を立てていた。ヘンリクと彼の仲間たちは、ルーシ帝国が持つ鉄道や通信網をターゲットにし、破壊工作を行うことに決めた。これにより、帝国の補給線を断ち、フィンランドの独立軍が活動する余地を広げることができると考えたからだ。
作戦の中で最も重要なことは、戦術的な奇襲と瞬時の決断だった。地下で活動するフィンランドの独立軍は、物資の供給に常に制約があり、戦力においてもルーシ帝国には到底及ばなかった。しかし、それを補うのは彼らの機敏さと地の利だった。森や湿地帯を熟知し、ルーシ軍の動きに先んじて行動することができれば、大きな成果を上げることができると確信していた。
ヘンリクは、仲間の兵士たちに作戦の詳細を説明しながら言った。「我々の戦いは、ただの軍事的な戦いではない。これは文化の戦いだ。フィンランドの歌、フィンランドの誇り、そしてフィンランドの自由を守るために戦うんだ。ポルカの歌を再び街中で響かせるために、我々は勝たなければならない。」
兵士たちは一斉に声を上げた。「ポルカを歌おう!我々の歌を、我々の土地で!」
その言葉が地下に響き渡ると、次第に皆の気持ちが一つにまとまった。フィンランドの独立軍は、どんな困難にも屈せず、この地を取り戻すために進み続ける決意を新たにした。
数日後、最初の作戦が実行に移された。フィンランドの独立軍は、ルーシ帝国の鉄道を破壊し、その周辺を占拠した。鉄道が動かなくなれば、物資の供給が滞り、帝国軍の前線を維持することが困難になる。それにより、ルーシ帝国の軍勢はフィンランドの地で更なる混乱を引き起こし、戦局を有利に進めることができる。
ヘンリクは、夜の闇の中で戦士たちとともに素早く移動し、計画通りに鉄道を爆破した。爆発の音が夜空を裂き、フィンランドの独立軍はその後迅速に撤退した。帝国軍はその混乱に対応するため、即座に反応したが、すでに独立軍は姿を消しており、次なる奇襲を準備していた。
「これが第一歩だ。」ヘンリクは静かに言った。「我々の土地は決して譲らない。フィンランドの自由を守るために、我々は戦い続ける。」
その後、独立軍の活動は広がり、ルーシ帝国の支配を次第に圧迫していった。各地でゲリラ戦が起こり、フィンランドの民衆も次第に独立軍に加わるようになった。
しかし、ルーシ帝国は黙ってはいなかった。ヴァガノフをはじめとする強硬派は、独立軍の活動を根絶するためにより一層の軍事行動を加速させ、フィンランドの民衆を徹底的に抑圧しようとした。それでも、フィンランドの人々の心には決して消えぬ自由への渇望があった。
そして、いつか必ずフィンランドの草原と森林を、自らの手に取り戻すその日が来ることを信じて、彼らは戦い続けた。
数十年の悲願は、今達成されようとしているのだ.........
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます