清楚系美少女が俺の前でだけ小悪魔になるんだが

ヴォルちゃん

プロローグ

俺は不登校児である。


だが、それは一般論を鑑みての結論であり

自己中心的な論理で言ってしまえば俺は学校に行っていないだけである。


それを世間一般的には不登校児というのだ。という正論が聞こえてくるが

...まぁ、なにも言い返せない。実際その通りである。


いくら自己中心的な論理を俺が高らかに語っても

客観的に見て俺が不登校児であるという事実は揺るがない。


だが俺には普遍的な不登校児とは一線を画すところがある。

それは俺は別に『何らかの精神的や身体的、社会的背景により登校できなくなった』

わけではないという点である。


非常に難しい話だが俺が不登校になった理由は

ただ何となく気まずくなってしまい行けてない。というもので

俺はあくまでも登校可能な状態にはあるのである。


だが、ここまで長いトークをしたとしても

俺が不登校児であるという点に違いはない。


では何故このような生産性が皆無な話をしているのかというと

単純な言い訳である。


なんてったって今日は卒業式!

みんなとの思い出を振り返って涙を流す日!


などという楽観的かつ陽キャ的思考はあいにく持ち合わせていないが

卒業式の性質上、不登校児という肩書きがやや鬱陶しく感じてしまうのだ。


正直言って行きたくない。

だが、そんな現実逃避じみたことを考えている間に時間は刻一刻と過ぎていく。


時計を一瞥する。


「8時12分」


学校が始まろうとしていた。その事実を知った途端

緊張とも興奮とも言えないような感情が頭の中を飽和する。


さっきまで『行こうと思えば行けるんだよねぇ』

とドヤ顔で言っていた少年はどこへやら。


「はぁぁぁぁぁ」


少し長めのため息を吐く。


「行ってきます」


憂鬱と期待を含んだ声で静かに言った。

そして流れるようにドアを開いた。





「いただきまぁす」






そこから先の記憶はない。



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清楚系美少女が俺の前でだけ小悪魔になるんだが ヴォルちゃん @vorutann

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