第26話 共和国にて case-6

翌朝、パプリカはご機嫌斜めであった。

「痛いでござるよ。たんこぶになっているでござる。」



「あなたのせいでしょ。」



セイフォンは、昨晩パプリカの尻尾を撫で回した挙句、パプリカに怒られたのであった。



「そんなことよりも、あなた昨日の商人に呼ばれているのでは?」



「そうでござった。」

セイフォンは順調にコロッセウムの内部に入れそうだ。


「なんでも、お礼がしたいそうでござる。それにしてもパプリカ殿」



「なに?」

パプリカは怪訝そうに聞いた。




「パプリカ殿の耳も触らせてくれんか?」




「絶対嫌。今日は仕事だからじゃあね。」

パプリカは颯爽とでていった。



「そんな」

部屋にはセイフォンの悲しい呟きが響いた。



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セイフォンはその日、奴隷商人の口添えで貴族クラスの剣闘士としての参加が認められたようであった。


「パプリカ殿、お疲れでござるな。」

セイフォンはパプリカにマッサージをしている。



「変なところ触らないでよ。」

パプリカはリラックスしたままである。



「失礼な。それがしは卑劣漢とは違います。」

セイフォンは抗議したいようだった。



「それで、剣闘士になったおかげで色々と情報を知れたんでしょ?」



「うむ。大会で勝ち上がってきそうな大体の候補が絞れたでござるよ。」



「じゃあそいつらの誰かとアリヤバンが。」

パプリカは尻尾を振っている。



「それについてだが、それがしが剣闘士について色々と尋ねていたらこんなものをくれたでござるよ。」

セイフォンは懐から雑誌のようなものを取り出した。



パプリカは、その雑誌をめくっていくと、それは剣闘士に関する情報であった。



「優勝候補には丸をつけているでござる。」



「優勝候補は全部で3人。」

パプリカは真剣に雑誌を読み込んでいる。



「順番に紹介するでござる。まず一人目がこの男。名はファイキンとか言ったでござるな。

元々は北方の出身で征服民でござる。

相手を必ず殺すから、こいつは剣闘士の間で嫌われているらしいでござるよ。」

セイフォンは物知り顔で言っている。



「使う奇跡は、武器を大きくする能力だとか。本人がかなりの大男でいちいちパワフルな感じらしいでござる。」



「むさそうね。」

パプリカは冷ややかに言った。



「そして、次がなんと魔族でござる。さすがは共和国と感心したでござるよ。」

セイフォンは興奮気味にいう。



「それでどんなやつなの?」



「それが上半身、下半身共にけむくじゃらで手が異様に長く武器は鉤爪のようなものを使用するらしいでござる。魔法の方も厄介で戦闘中に二体に分身するとか。」

セイフォンは想像しながら伝える。



「二体に分身ね。」

パプリカは物憂げに答えた。




「残りの一名は、この国の元貴族でござる。

なんと名門の家の生まれだったのにも関わらず、家庭の望んでいる奇跡を使えなくなったことから追放になったとか。


その彼の奇跡とは、相手を状態異常にするらしいでござる。

境遇が初代の王サトゥーに似ていることから、彼は人気でござる。」




「その三人だれとアリヤバンが戦っても負けそうだけど。」

パプリカは王を思い浮かべた。




「パプリカ殿は王に会ったことがあるでござるか?」

セイフォンは尋ねる。




「あなたもこの街にもう何日かいたらわかるわよ。」

パプリカは含みを持って答える。





「とにかく、彼らの動向には目を配るでござるよ。」





「でも、その三人が勝ち上がってくるなら、私の魔法でどうにかなりそうだわ。」

パプリカは晩御飯の準備を始める。




「今日はパプリカ殿の料理でござるな。楽しみでござる。」



「それで、あなたはどうするつもりなの?」



「それがしでござるか?」

セイフォンは不意に自分の話題になったことにきょとんとしている。



「そう。あなたなら普通にしていればどんどん上位にいってしまうのではなくて?あまり面が割れるのは避けたいのだけど。」

パプリカは釘を刺すように言う。



「そのことであるが、それがしには秘策があるでござるよ。安心して欲しいのでござる。」

セイフォンは胸を張っている。実はそれなりに豊胸なのだ。この娘は。



「そう。とにかく任務の妨げになるようなことにはならないようにしてね。」



「もちろんでござる。明日はそれがしのデビュー戦がある故、パプリカ殿も応援よろしく頼むでござる。」

セイフォンはそう言うとパプリカの料理を手伝い始めた。



「あなたって、なんだか犬みたい。」

パプリカは一人でつぶやいたがセイフォンはせかせかと動き回っており、その耳には届かなかったようだ。

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