パプリカの受難
@kinakomochi12
第1話 グナーダにて case-1
太陽が照っている中、二人の少女が城門に到着した。城塞都市グナーダである。
兎耳の方は短剣を二本。猫耳の方は自分の背丈ほどある杖をもっている。
港ジブータルから、徒歩と馬車で10日前後。
「パプリカ、あんたって本当につまんないやつよね」
兎耳の方の少女が猫耳を方を揶揄う。
「別に。」
パプリカは興味もなさそうにあしらう。
城門で手続きを済ませると二人は、街の中に入っていった。
兎耳は後ろを少し振り返りながら、
「ねえ、みた?」
「なにを?」
パプリカはまためんどくさそうに対応する。
「あの門兵、私の抜群のプロポーションに釘つけだったわよ。どこのチェックしてるんだか」
パプリカは兎耳の身体を上から下まで見てから、
「そう」
兎耳はパプリカを小突きながら、
「ったく、すねないでよ。あんたもこれから色々大きくなるから」
パプリカは自分の体を見てから、
「キンジャルは、まだ大きくなる?」
「さあね」
キンジャルは駆け出す。彼女は軽々と屋根に飛び乗る。
「それじゃ手筈通りに」
パプリカは杖をかたむける。
「うん。」
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「パプリカちゃん、次はこっちを頼むよ」
街に入ってから数週間、パプリカは、自身の知識を活かして、聖地院にて患者の手当を行う仕事についている。
「はい、わかりました。」
グナーダは、最近まで、魔族と戦争を行なっていた。勇者サーディンが、彼らからこの街グナーダを取り返したのですある。
魔族といっても、彼らは未知なる種族に過ぎない。
以前は、三又首の犬や毒を吐く龍、人間よりも大きなミミズのような、存在が居たとされるが、今の世界には複数の人種と人間になり損なったものがいるのみである。
魔族は魔法を使う。未知なる者が使う未知なる力だから魔法である。
人間側にも、同じように不思議な力を扱えるものが一定数いる。これは、聖人と呼ばれて、その力は奇跡とよばれることが多い。
奇跡は、大別すると相手を害するものと人を癒すものがあり、前者が得意なものは戦士となり、後者が得意なものは、教会や聖地院にて従事することが多い。
パプリカは、弾丸の魔法を使うことができる。
"奇跡ではなく、魔法である。"
魔法は、敵を害するものが殆どと言われているが、パプリカの魔法は非常に殺傷能力が高かった。
それゆえに暗殺者となったのである。
しかしながら、パプリカの魔法には欠点があった。
一つ目は一日一度しか使えないこと、二つ目は特殊な奇跡や魔法をもつ相手には、接近してその力を同質化させてからでないと弾かれるということである。
だからこそ、パプリカはこのグナーダに潜入して機会を伺っていた。
「それにしても、パプリカちゃんの手は冷たいね」
患者の男の一人が包帯を巻くパプリカに話しかける。
「そうでしょうか」
パプリカは、手を緩めずに返す。
「ここに来て何日になる?」
「2週間と少しでしょうか」
男は問いかける。
「パプリカちゃんは、魔族が怖くないのかい?」
「どうしてですか?」
「そりゃ、このグナーダはつい最近まで戦地だったからな、いつまた攻められるのかわかったもんじゃないからな」
「攻められるんですか?」
「そりゃ、勇者様とその仲間たちは強かったよ。だけども、万能ってわけじゃないだろうからね」
パプリカは持っていた包帯で処置をし終える。
「また、皆さんが守ってくれるんじゃないんですか?」
「そりゃそうだけどよ。俺はパプリカちゃんが心配でよ。」
他の患者の面倒を見ていた、マダム・シファは二人に話しかける。
彼女は、この聖地院に長く勤めている。パプリカと同様、奇跡が使えないために、出世はできないが、戦争中も軍隊の救護班として奪還のために力を尽くしたらしい。
「ちょっと、うちの新入りをナンパするのはよしてくれよ。」
「ナンパってな、俺は本当に」
「本当に惚れるのも禁止。パプリカもぼさっとしないでお使いにでもいっとくれよ。」
パプリカは、マダムから用を伝えられると出ていった。
「ちぇっ、マダムはいつも邪魔をする。」
「あの娘は、いい子だけどあんたには手に負えないよ。報奨金を貰って、傷が治ったら田舎に帰るんだな。」
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