カマドウ・メン

 僕がさっき、僕とCが先にこの公衆トイレへ入っていった際に、三つ目奥の大便器用個室が閉まっていたと言いましたよね。



 僕がトイレへと逃げるように入って行くと、そこにはABが尻もちを付きながらビビッて怯えている姿が目に飛び込んできました。二人が見ている方向を追って見てみると、奥の扉は開かれそこから二本の長い足がニョキっと出てきていたのです。僕は直ぐに状況が理解出来ずにいると

「・・・ああ・・・おおぅ」


 男のような呻き声が奥から聞こえてきました。


 後から入ってきたCが怯えて座り込んでいる二人を起こそうとしている間も、僕はその足から目が離せないでいます。何故なら、あまりにも「生々しかった」からです。その声も、見えている足も、霊やそういった現象の勝手なイメージですが、心霊現象特有のフワっとボヤっとしていなくて、ハッキリと見えて聞こえている様な気がしました。


 すると、中からその足の本体がゆっくりと出てこようとしてくるのです。


 友人の二人が何とか起き上がり、三人ともが走り去って行く最中、僕はその正体を見極めようとも思い、身構えていると中から『』が出てきました。

 二人とも全裸で、真夏の個室で汗が滴り落ちる程にむさ苦しくも抱き合っていたのです。

 完全に「人」だと認識してからでも、余りにも恐ろしくて僕も急いでその場を走り去って逃げました。




 数日後。




 AとBに何があったかを聞きました。


A「いや、俺たちも何だか小便がしたくなってさ。二人で用を足してから、鏡の前でアレを言おうとしたんだよ。そしたら・・・・・・」


B「奥の方から、変な声が聞こえてきたんだ」


A「なんか、苦しんでいるような、な」


B「ビビッてさ、二人で息を殺しながら様子見てたら・・・・・・」


A「ゆっくりと、奥の扉が開き出して・・・足がさぁ」


B「後は、お前らが来て、って感じ」

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