第14話 過去は鬼の子 [過去編]



十鬼朱ときあけ家の産まれた赤子は一定の期間を経て男女関係なくとある施設に送られる。

その施設では戦闘訓練と称して人体実験が行われてて選別を行っている。

ほとんどが命を落としているが十鬼朱家に産まれた子供は人ではなく人の姿をした“おに”と言われている。


汗が滴り床に水溜りができていた。

真っ白な壁と床は血で汚れ、辺りは複数体の獣の死骸鼻が剥がれ落ちそうなほどの悪臭。

ここにもし窓があればコバエや蝿が集り卵を植え付けてすぐにウジ虫が湧くだろう。


興奮剤を打たれた獣が部屋に解き放たれて鬼の子が戦闘不能になるまで戦い続ける。

ギィィィー!!

興奮したイノシシが理由もわからず突進する。腹を突き破られる感覚、思考が追いつく前に血を吐き出して倒れる鬼の子。

『8時間25分30秒5体討伐…05番心肺停止』

特殊なモニターで確認をしながらガラス越しで複数人の研究者がマイクで指示を送りながら鬼の子のデータを取る。

武装した5人の人間が部屋に入り麻酔銃で獣を眠らせ回収してから心肺停止した鬼の子の05番を押さえつけて回収する。

生きていればそこで回復する前にベルトで体を固定して目を隠し厳重な拘束をしたあとに回収されるか実験を続ける。

鬼の子は身体が頑丈で簡単には死ぬことはない

名前も呼ばれず血反吐を吐いても…毎日毎日毎日訓練訓練訓練…鬼の子はまだ人間ではない。

鬼の子が産まれる腹なんてどうでもいい

十鬼朱家当主の種で受精したソレは鬼の子。


『13番20時間経過』

ガラス越しにマイクを通して部屋に響く声も13番には聞こえずただひたすら13番も目の前の脅威と戦って戦って戦った。

悲しむことも喜ぶことも何かしらの感情を感じることはない「痛い」と言葉を発することも知りはしない。知る機会もない。そう育てられたから。

それが鬼の子にとっての普通の日常だった。



ーーー


『13番』

ズクズクと脈打ち脳みそが溶ける感覚に苦しみを感じながら口角を上げる。

片腕は獣に食われ片目は視力を失っていた。

倒れて気絶していたらしい。その間に薬を打たれたようでなんとか意識を取り戻した。

「ゥ、ゥ」

声にならない唸り声をあげながら13番はギシギシと軋む音がする自分の体を無理矢理起こそうとして足に力を入れると再度倒れた。

『13番32時間50分02秒26体討伐…回収』

心肺停止はしてないことを研究者がモニターで確認をして指示を送ると武装した5人が素早く13番を拘束した。

両手両足体にベルトを巻いて目隠しをして注射を首に打つ。


長い1日が終わった。

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