第13話 理性間近


跨いで膝立ちした京乃は

彼女が驚いている間に両手首を掴み上げ唇を奪ったー




リップ音が微かに聞こえ2度目の口づけをすると彼女の閉じた歯を舐めて口から離れた。

部屋は静寂へと変化した。

「何驚いているんですか?…」

京乃はクスッと笑うとベッドから降り離れた。

怒っていた様子の彼はいつも通りの様子となっていたが

千影の白い肌は顔から首まで真っ赤になっていた。

「僕は学校があるので…僕がいない間は必ず部屋にいて下さい、絶対ですよ」

千影に再度近付き、赤くなった彼女の頬を撫でる彼はいつもの表情へ戻った。

「何かあれば女中がしますから…ゆっくり休んでいてください」

彼が離れて部屋から出ていったが

千影はまだ固まったままだった、赤く火照った肌は熱くなっているが思考が追いつかずベッドの上のまま動くことが出来なかった。



ーーー



京乃はスーツ姿と髪をかきあげオールバックにして千影の前とは違う姿で後部座席乗っていた。

公道を走り続け景色は移り変わっている。

「あー…はぁ…」

千影の姿が頭から離れない。

触られること、抱きしめられること、頬、抱き上げること、どれも大した反応はしなかったのにキスだけは違ったようだ。

耳が弱くてキスをすれば赤く頬が火照る…

気が強く、何でもないような表情をしている割には初々しいと思うとどうにもこうにも…大切にしたいと。


木々島はいつものように運転しながら気が気ではなかった。

「ほ…報告申し上げます…蛇組に襲われ数名刃物で刺れて病院に送られました…現在数名でまだ闘争中です」

木々島に書類を数10枚渡された京乃は読むことはせず無造作に座席に置いた。

最近休暇を取っていた京乃は仕事が山積みだった。

「組長…現場に向かっても宜しいですか…」

木々島がハンドルを握る手は汗ばみ生唾を飲み込んだ。

「あぁ、アレはどうなった」

機嫌がいい雰囲気を見て木々島は少しだけ安心した。

「はい…スマートフォンからも確認が可能です」 

組長が5歳の頃から近くで見てきましたがある日を境に人が変わったような…


彼女にだけ貪欲。異常なまでに執着。

絹のような銀色の髪に赤い瞳…彼女の見た目は美しさも相まって悪魔のような容姿…と言ったほうが近いのかもしれない。


「千影…」

「ヒッ!?」

急に彼女の名前を呼んだ京乃に木々島の体は飛び跳ねた。

機嫌がよくてもやはり怖い。

木々島は運転しながら後部座席にいる京乃の手元をチラッと見るとスマホを持ち見ていた。

スマホには部屋に設置された監視カメラから千影の映像が映し出されていた。

その表情をミラー越しに見てまた少し安心した。


無造作に置かれた書類の中に

“唐紅家”が全焼している写真と誰かわからないほど焦げた遺体の写真が載っていた。

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