かぷちーの!

和辻義一

第1話 深緑色の小さな宝石

 谷川たにがわみどりには、少し前からずっと気になっていたクルマがあった。


 街の中古車屋の片隅に置かれた、小さな緑色の軽自動車。今どきではまず見かけない古いデザインだったが、低く構えた車体は全体的に丸みを帯びていて可愛らしい。


 クルマの色も気に入っていた。自分の名前と同じ色。一見地味だが、じっと見ていると心が吸い込まれそうになるぐらいに綺麗だった。


 ただ、惜しむらくは値段がべらぼうに高かった。1997年式の中古車に、200万円の値札が付いていた。年式の割には綺麗な外観だとは思うが、30年近く前のクルマの値段としてははなはだ異常だろう。


 それでも、勤め先である市役所まで自転車で通う途中、毎日そのクルマの前を通る度に少し胸が高鳴っていた。自動車の運転免許証は身分証明書代わりに取得しただけで、実家のクルマを運転することもほとんどなかったのだが、なぜこんなにも気になって仕方が無いのかは分からない。


 そのクルマの名前は、スズキのカプチーノというらしい。

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