第27話 前世で武神と呼ばれた男、師になる②

 ハッカとソリスを軽く一蹴したあと、シェナと手合わせを始める。


 真向かいに立つ彼女の持つ武器は槍なので俺も槍を持った。


「よろしく!」


「よろしくですの」


 互いにゆっくりと間合いを詰める。さすがに武芸を嗜んでるだけあってさっきの二人と違って攻め方が慎重だ。


「【物理攻撃力上昇】【防御力特大上昇】【俊敏大上昇】」


「おっ」


 俺が声を上げるとシェナの方から攻撃を仕掛けてきた。


「えいっ、やっ」


 シェナは素早く槍で二回突いてきたので、得物を使って横へと攻撃を逸らした。


 さらに一突きを繰り出したシェナ。再び突きを逸らしたあと、槍を翻し、柄で相手の頭を叩こうとすると、


「【|風乙女《ウィンディア】」


 シェナは全身に風を纏った。俺の柄は風によって自然と上方向へと逸らされる。そのあとシェナは急いで中腰になって後方へと下がった。


 『戦乙女』という職業は聞いた話通り、体に風を纏うらしい。そして、武器を召喚することができるはずだ。


「手加減はしなくていいですのね」


「もちろん」


 俺は指で丸を作った。


「【槍乱舞スピアーダンス】」


 シェナのスキル発動と同時に彼女の前方から数十本もの槍が飛び出した。


 それに対応するために俺は技を発動する。


「【風人之体ふうじんのたい】」


 俺は『自然エネルギー』を操作して、風を体に纏わせた。要は今のシェナと同じ状態になった。


「私と同じようなスキル!?」


 シェナは驚嘆しながら、俺の体の手前に到達した槍が弾かれるのを見ていた。


 槍は四方八方に転がる。


「『風足ふうそく』」


 そのあと俺は移動術で距離を詰めて槍を振るう。シェナは慌てて俺の槍を受け止めるが、


「きゃっ!」


 俺は槍でシェナの持っている槍を捻って、槍ごと体をひっくり返した。


 シェナは小さな悲鳴を上げて地面に背中を打つ。


「ま、参りました」


「よし、次はシアドだ。こい!」


 降参したシェナと入れ替わるようにシアドが目の前に立つ。


 彼は素手だ。なら俺も素手で戦おう。


「最初から全開で行きます!」


「こい!」


 シアドは二本指を構え、


「『炎弾ファイアバレット』『炎弾ファイアバレット』『炎弾ファイアバレット』!」


 炎の玉を三回連続で放った。宣言通り最初から本気だ。


「炎にはやっぱ氷かな。『氷影爪ひょうえいそう』」


 右手、左手、右手と順に振る。すると氷の斬撃が三回連続で飛び出る。


 炎の弾と氷の斬撃は相殺し合う。


 その後、シアドは手のひらを上に向け、 


「『火焔砲弾フレイムキャノン』」


 五、六人を簡単に呑み込むであろう巨大な炎の玉を生成した。


「はっ!」


 彼は炎の玉を放つ。


 俺はさっきの技の出力を上げよう。


「『氷影爪ひょうえいそう』!」


 俺は先ほどより鋭く速い氷の斬撃を放った。


 氷の斬撃は巨大な炎の玉を真っ二つにして凍らせ、そのままシアドの方へと向かった。


「ま、まずい! えっとファイア……!」


 彼は戸惑ってスキルを発動できず、目の前まで到達した氷の斬撃に対して目を閉じていた。


 俺は指を鳴らし、氷の斬撃を消すとシアドは尻餅をついた。


「さ、さすがヒューゴさん」


「よし、だいたい四人に何が足りないか分かった。あとはそうだな、時間が無いけど『体内エネルギー』の使い方を教えようかな」


 俺はこれから四人に何を学ばせるか考えながら、強くなる姿を想像して心を躍らせていた。

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