第2話 契約
体中から燃え上がるような熱さを感じる。それと同時に霧魔法が解けると、至近距離に黒服の暗殺者たちが居た。
そして、俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
(あれ? なんでこんなに遅く感じるんだ?)
そう思いながらも、体が勝手に動いて攻撃をことごとく避ける。 すると、暗殺者たちは驚いた表情でこちらを見てくる。
(体も軽い。今の俺なら‼)
目の前にいる一人の暗殺者に近づいて攻撃を仕掛ける。すると、思っていた数倍の速度で剣を振り下ろし、気絶させる。
(何だ、この力は……)
そう思っていると、残りの暗殺者がフードを被った女性を標的に変えて、攻撃を仕掛ける。
俺はすぐさま、フードを被った女性を庇う形で攻防を繰り広げていくと、一本のナイフがフードを切り裂いた。
「え……」
そこには、没落王女と呼ばれているアリス・ローゼンが立っていた。
「殺せ、あいつさえ殺せば‼」
暗殺者はアリスを狙う形で攻撃を仕掛けていく。
一人目の暗殺者の攻撃をかわしつつ気絶させ、二人目の攻撃を防ぐ。
「出来損ないがなんでこんなに強いんだ‼」
俺はすぐさま二人目の暗殺者も気絶させると、最後に残った暗殺者が俺の方を見てくる。
(やばい……)
今だからはっきりわかる。さっき戦った暗殺者とはレベルが違う。今戦ったところで勝てない。
そう思っていたが、最後に残った暗殺者が気絶している暗殺者を殺してこの場を去って行った。
目の前から暗殺者が消えたことによって、一気に緊張がほどけて地面に座り込んでしまう。
「助けてくれてありがとう」
「あ、はい」
俺がそう答えたのと同時に、力が抜け落ちる形で視界が暗くなっていき、意識を失った。
★
目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった。
「ここは?」
ボソッと呟いたのに対して、隣に立っている金髪の女性が言う。
「私が取っている宿だよ」
「あ、アリス王女……」
「へ~、知っているんだね」
「まぁ」
ローゼン王家。隣国にあるが、国民から信頼を失った王族。
「ねぇ、ダイラル。昨日のことを覚えている?」
「昨日……。あ‼」
そうだ。俺はアリス王女を助ける形で暗殺者たちと戦ったんだ。
「思い出してくれたね。左手の甲を見てみて」
言われるがまま左手を見てみると、そこには紋章があった。
「え?」
「ダイラル、あなたは私と契約したの」
「え、は?」
言われている意味が理解できなかった。
「いつ契約したんです?」
「私の血を望んであなたは飲んだ。それが契約だよ。だから、昨日力を手に入れていたでしょ?」
「‼」
すると、アリス王女は音魔法を使って、あたり一帯の音をかき消した。
「ダイラルに一つお願いがあるの」
「な、なんでしょうか?」
「私と一緒にこの世界を救ってほしい」
「は?」
(この人は何を言っているんだ?)
「この世界は腐っているわ」
「??」
「なんで、王族や貴族と契約をしたら力を手に入れられるか知っている?」
「知らない……」
(そう言うもんだからじゃないのか?)
「簡単に言うと、王族や貴族は魔族と契約をしている。だから、契約している王族や貴族たちは力を手に入れている」
「王族や貴族と契約していると間接的に魔族と契約しているってこと?」
「そう言うこと」
「じゃあ、なんで俺はアリス王女と契約をして力を手に入れているんだ?」
アリス王女の理屈で行くと、魔族と王族や貴族が契約していると力を手に入れることが出来る。だけど、アリス王女の良いぶりからして、ローゼン家が魔族と契約をしているわけではない。
「この世界には四つの王族がいるわ」
「そうですね」
アリス王女のローゼン家に今いる国のバードル家。他にラートリア家とウィンザー家。この四つがこの世界に存在する王族。
「四つある王族は、かつて魔王を倒すために力を合わせていたわ。だけど、現実はそんな甘くなかった。四つの王族が力を合わせたところで魔族に勝つことはできなかった」
「……」
逸話と全然話が違う。俺の知っている話では、王族の力によって魔王を封印して、平和の世界が訪れている。
「そこで、王族の中で対立が起きたの。ローゼン家とバードル家、ラートリア家でね」
「ウィンザー家は?」
「ウィンザー家はあなたも知っているでしょ?」
「あ、そっか」
ウィンザー王国は現在滅亡している。
「でもね、本当はウィンザー家は今も実在している」
「え?」
「ウィンザー家は魔法に長けている国で、今は隠れている。私たちローゼン家が本格的に動き出した時、ウィンザー家は動くはず」
「じゃあ、お願いって言うのは、バードル家とラートリア家と契約している魔族を倒すこと?」
アリス王女は、俺の言葉に首を縦に振った。
「うん。多分拒否権はないけどね」
「どう言うこと?」
「あなたは、私と契約したのを暗殺者に見られている。だとしたら、あなたも狙われる標的になっているってこと」
「あ……」
「それでどう?」
どうって言われても拒否権が無いなら受けるしかないよな
(それに、俺にもこの世界に転生して、やりたいことはたくさんある。そのためにもこの力は必要だ)
「あぁ」
「じゃあ決まりね」
俺とアリスは握手を交わす。
「それで、何をするんだ?」
「まずは、バードル家を救う」
「でもどうやって?」
「公にして私を殺すことはできないわ。それに加えて、昨日の騒動で手も出しにくくなっているわ」
アリスの言う通り、テーブルに置いてある記事が昨日の事件を大々的に記されていた。
「だから、仲間を作るわ」
「どうやって? 他の王族は魔族と手を組んでいるのに?」
「人族はね。でも他種族なら?」
「あ‼」
「まずは、エルフの国と交渉しに行く」
「え?」
エルフとは、他種族を嫌うことで有名である。それに加えて、エルフ国がどこにあるのかも知らない。
「この国に第三王子が捕まっているから」
「はい!?」
俺はアリス王女の言葉に驚きを隠しきれなかった。
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