出来損ない冒険者に転生した俺は、タイムリープ能力を駆使して、没落王女と共に真実の世界へ導く

煙雨

第1話 没落王女との出会い

 契約。


 この世界では、王族や貴族と契約をすることで力を手に入れることが出来る。いくら努力したところで、契約をしているのか否かで実力が明確に分かれる。


 王宮騎士はもちろん、冒険者でも、名を上げている者は王族や貴族と契約をしている。

 そんな世界に転生してしまった主人公---ダイラル・アークネットは、誰にも力を認められず、出来損ない冒険者と呼ばれていた。


 契約試験が明日に控えている日、俺は冒険者ギルドに辿り着くと、目の前にいるガタイの良い男性が話しかけてくる。


「明日の契約試験を受けに行くのか〜??」

「う、うん」


 俺の返答に対して、周りにいる冒険者全員が笑い出す。


「やめておけよ。お前じゃ無理だって」

「や、やってみなくちゃ分からないだろ」

「いやいや、お前何度目だよ」

「五回目」

「数年に一回ならともかく、年三回も行われる試験だぞ。今回も同じに決まっている」

「……」


 こいつらの言う通り、受かる見込みが低いのは分かっている。それでも、諦めたら可能性すらなくなってしまう。


 それは嫌だ。俺はこの世界に転生したんだ。どれだけバカにされたって、夢をあきらめることだけはできない。


「まあ、無理だろうけど頑張れよ」


 周りにいる奴らが笑いながらそう言って、目の前から消えていった。


(クソ、絶対に今回こそは‼)


 俺はそう思いながら、この場を後にして宿に戻って行った。



 翌日、俺は試験場にたどり着くと、そこには百人以上の受験者が立っていた。

 顔見知りが何人もいたが、大半の人は初めて見る人であった。


 すると、試験官が挨拶をする。


「今年最後の契約試験が来ました‼ さて、何人の人が王族や貴族のお眼鏡に掛かるのでしょうか‼」


 その言葉と共に歓声が上がる。


 契約試験。王族や貴族たちにとってのお祭りごと。俺たち受験者は見世物。この世界は、貴族や王族の至上主義であり、認められていない者はクズ以下ともいえるような存在。


「では、今回の見どころ受験者は~」


 そう言い始めた時、一人の女性が試験場に現れて、一瞬にして先ほどまでの空気とは変わった。


「没落王女……」


 この世界で唯一、王族でありながら敬遠されている存在。


「あ~、しらけてしまいましたが、見どころ受験者を発表していきます‼」


 試験官が淡々と読み上げて行き、最後に俺の名前が言われる。


「昨年よりこの世界に現れた異世界人、ダイラル・アークネット。五回目の出場になりますが、今回こそは契約を勝ち取れるのか‼」


 その言葉と共に歓声が上がる。


(クソが……)


 見世物にされているのが分かる。それだけでも吐き気がする。


「では、試験の内容を発表いたします。今回はオールバトルロワイアル。最後まで残っていた人が契約を勝ち取れます。それ以外にも王族や貴族に目が止まった人には個別でオファーがあるでしょう‼」


(最悪だ)


 ここに居る誰よりも強くなければいけない。だが、そんなことはあり得ない。

 貴族たちが、力試しで出場させる名目もある。そのため、この試験には契約者も存在している。


 そんな中で、一番を取るなんて無理に等しい。


(クソ……)


「では、皆さん、一分後に移動させます。楽しんできてくださいね」


 そう言って、俺たち全員は転移させられた。


 目を開けると、あたり一帯が草原地帯になっていた。


(落ち着け)


 目的を忘れるな。最後まで勝ち抜けばいいわけじゃない。最終的に貴族や王族と契約が取れればいいだけ。


 俺は草原地帯を歩いていると、あたりから戦闘音が聞こえ始める。


 腰に付けている剣を手に取り、先へ進んでいく。


 歩き始めて十分ほどが経った時、左側の草むらが一瞬動いたのを察知する。


 すると、奇襲をかけてくる形でこちらへ攻撃を仕掛けてくる受験者が現れる。俺はそれをギリギリのところで避け、みねうちを取る形で気絶させる。


(これでいい。無理に目立とうとするな。俺の実力を証明するだけ)


 そう思いながら、何度か戦闘を繰り広げながら時間が経っていくと、試験官からの声が聞こえる。


「残り十名を切りました。皆さん頑張ってください」


(よし。これなら俺も‼)


 そう思った瞬間、目の前に見覚えのある人物が現れる。


「よぉダイラル」

「アレク……」


 この世界に転生させられた存在。同じ転生者ということもあり、最初は仲が良かった。

 だけど、初めて試験に出た時、アレクは合格し、俺は不合格となった。そこから、歯車が崩れてしまい、会うたびにバカにされる日々。

 アレクに対して、何も言い返せなかった。あいつは俺より実力を持っていて、俺は力を持っていない出来損ないだから。


 すると、嘲笑いながら言ってくる。


「残念だったな。ここで終わりだ」

「……」


 俺が剣を構えた瞬間、アレクは目の前から消えるほどの速度で背後へ移動し、攻撃を仕掛けてくる。


(あっぶね)


 ギリギリのところで避けると、アレクは笑い出す。


「前から目は良かったもんな」

「……」


 それから、アレクの攻撃をギリギリのところで避けていくと、徐々に顔を真っ赤にしていった。そして、真正面から攻撃を仕掛けてくる。


(待っていたよ)


 ここしかない。俺は全力でアレクの攻撃を避けて、一撃を食らわせる。


「ぅ……」


(これでも、気絶しないのかよ)


 俺がそう思っていると、アレクの表情が一変し、こちらを睨みつけて来た。


「もういいわ」


 そう言った瞬間、俺の視界がぶれて、気を失った。



 目を覚ますと、そこは試験場の外になっており、目の前には試験官が立っていた。


「あの、試験は‼」

「落ちましたよ」

「……」


(今回もダメだったのかよ……)


 すると、嘲笑う形で言ってくる。


「残念でしたね~。でも次は頑張ってくださいね」

「は、はい」

「起き上がれるなら早く出て行ってね」


 言われるがまま、俺は試験場を後にすると、外は真っ暗であった。


 何も考えずに歩きだす。


(俺は何のために生きているんだ……)


 異世界へ転生した時は、高揚感があったが、今は何もない。


「もう、ダメなのかな」


 そう思っていると、フードを被った女性がこちらへ近づいてきた。


「ちょっと、話せる?」

「は、はぁ……」


 目の前の女性に言われるがまま路地裏について行く。すると、あたりから数名の黒服を着ている暗殺者に囲われてしまう。


(嵌められたか……)

 

 俺がそう思っていると、フードを被った女性もあたふたとしていた。


(嵌められたんじゃなくて、この人が標的?)


 黒服を着ている暗殺者たちは、俺の方は見ずに、フードを被った女性のことだけを見ていた。


 それと同時に短剣を取り出してきた。それを見た瞬間、体から震えが止まらなくなる。何かしなければいけない。そう思いながらも、体を動かすことが出来なかった。


(クソ、俺はこんな状況ですら何もできないのかよ)


 俺が呆然としていると、黒服の暗殺者一名がこちらへ近寄ってきて、攻撃を仕掛けてくる。


 じっくりと攻撃を見て、よけようとする。だが、体が動かない。


(クソクソクソクソ‼)


 なんで動かないんだ。頼む。動いてくれ。


(ここに来ても何もできないのにな)


 そうわかっていても、何もできない。俺が死を覚悟した時、フードを被った女性が俺に抱き着く形で攻撃を避ける。

 

 すると、暗殺者たちがアイコンタクトをして、一斉に攻撃を仕掛けて来た。その時、フードを被った女性が霧魔法をかけて相手から視界を暗ます。


「私の血を飲んで」

「は?」

「お願い…」

「わ、わかった」


 俺はフードを被った女性の指から出ている血を体内に含むと、手の甲に紋章が現れた。


――――――――――――――――――――――――――――――

  

 新作です‼


 読んでいただき、誠にありがとうございました。


 ・フォロー

 ・『☆で称える』の+ボタンを三回押して評価

 

 上記の方法で応援をしていただけますと幸いです。作品更新の励みになります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る