カクヨム版 メニエール氏は小説家が好きかもしれない
江東うゆう
第1話 2022年の再発の話
ノベルアップ+さんの「心と身体フェア」でこのエッセイを書いたのは2020年でした。
大学院生時代に起きためまいについて、メニエール症候群ではないか、と医者に言われました。その後、あれほどのめまいが起きることはなく、倒れずに過ごすことができていました。
しかし、2022年の初春、コロナ禍のストレスなどもあいまって、再び、めまいで倒れてしまいました。
ノベプラ版「メニエール氏は小説家が好きかもしれない」では、メニエールで倒れた、当時大学院生の私が重大な決断をするのですが、2022年にも同じような決断をしました。
それは、再発当時に目指していた賞の応募作品を書くことより、死ぬまでにこれを仕上げておかなければ死ぬに死ねない作品を書くことを優先しよう、ということでした。
(とはいえ、公募をあきらめきれずジタバタするのですが。)
私には、小説講座時代、長編をいくつも書き続けた時代などがありまして、データのままになっている作品がたくさんあります。また、同人誌として出したものの、イベントに参加しなくなってからは在庫も足さず、作品を読もうとすれば、やはりパソコンのデータを引っ張り出してくることになる作品もあります。
そのうち、どうしても思い入れの深いシリーズが二つありました。
一つは、「幻怪夜話」。もう一つは「夢現」です。
前者は、小説講座に通っていた時代に自分の強みをつかんだ作品であったこと、また、2015年に出版された『仙境王還記 みどりごの魔宵歌』で解消されなかったこと(凜花の病気や、「仙境王還記」というタイトルの回収など)を果たしておきたかったことなどから、書いておきたいと思ったものでした。
後者は、私が同人活動をしていたころに、初めて、キャラクターやトリックの書き方をつかんだ作品でした。とはいえ、何度か書き直したものの、まだ、書き直す余地がありました。これも、書いておかなければ後悔する作品でした。
おかげさまで、「幻怪夜話」は、8月17日、8月31日に更新し、完結する予定です。
「夢現」のほうは、全五章で、現在三章まで完結しました。あと二章、がんばります。
「幻怪夜話」の完結を間近に控え、私が2022年の再発を振り返って思うのは、50近くなって再度味わったメニエールの苦しみは、人はいつ死ぬかわからない、と強く感じさせるほどのものだったのだな、ということでした。
ご存じの方も多いと思いますが、メニエールで死ぬことはないそうです。
でも、死ぬほど苦しいと感じる人もいると聞いたことがあります。
その苦しみから得たことが、作品を仕上げてしまおうという気持ちにつながったのでした。
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