第9話 徹夜ハイ
緊張の糸が切れた俺は、大きなため息と共に机に突っ伏した。片目だけ上げて見た壁の時計は午前四時を過ぎていた。
このまま、朝まで受付に置いてあるソファででも仮眠しようと思い、立ち上がった。
今までいじっていたマシンも一度電源を落とそうと思い、スクリーン セイバーを解除した。画面の左端にトルクが映る。勇者が来ない限り、こいつは永遠に蕪と人参とかぼちゃを繰り返し植える。
トルクが三回目の蕪を植え始めたとき、俺はトルクの関数が入ったファイルを開いた。
トルクの関数が読み込まれると、最初に蕪を植えるアクションの回数が定義される。
俺はここに新たな関数を組み込んだ。トルクが「自分で」実行できる関数だ。
トルクが蕪や人参やかぼちゃを植えるのに飽きたときに、どうにかして逃げ出せるための関数。
トルクに意思がない限り、この関数が実行されることはない。
でも俺は、何度も死んでしまうトルクに逃げ道を作ってやりたかった。
こんなに感傷的になっているのは徹夜ハイだ。ちょっと恥ずかしいと思いつつも関数を追加した。
最終的な動作に問題ないことを確認した俺は、女子アルバイトが使っているひざ掛けを勝手に借りてソファに仮眠しに行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます