第43話 指導(人形)
竜の少女は左耳から聞こえる師匠の言葉に翻弄された。
次々と矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「刃はどこのあたりの血液で作る?」
「心臓にある血液で作ります。そのほうが早いですし、ダメージも与えられます。」
「刃の色は?」
「イメージでも、刃は周りと区別するために赤とは違う分かりやすい色がいいですよね。…白にします。」
「刃の形は?」
「ナイフのような感じで、もちろん直接持つわけではないので邪魔な持ち手の部分はなしですね。」
「刃の軌道は?」
「刃の軌道は、えっと致命傷にできる限りなりやすいようにとは思いますが…すみません。こういう知識はあまりありません。」
「心臓は太い血管をいくつも持っているが、それを切り裂くのがいいだろう。そして、それを切り裂くのであれば、斜めに切ればいい。」
「刃の大きさは?」
「…師匠、」
師匠に必要な情報を教えてもらおうと師匠と呼ぶ。
「もう情報はここに書いた。」
しかし、師匠はすべて予測どおりと言わんばかりにミニ黒板に必要な情報はすべて一通り書いていた。
こんな感じで、師匠の質問という猛攻に耐えること数時間。それから、魔法のイメージは完成し、後に残るのは実践のみ…と言っても、ここからが長いのだ。
しかし、その実践は師匠の予想をはるかに超えた速度で終わった。竜の少女の才能が発揮されたのだ。
魔法はイメージが完成しても、実際に使えるようになるのはまた全く別の話なのだ。イメージが完成しても、実際に使えるようになるのは1年後だったという話は珍しくない。だが、竜の少女は開始たった30分で師匠が用意したてんこ盛りの人形やらぬいぐるみやらおよそ30体を実験体として、魔法を使い、練習した。
9時の鐘の音が鳴ってからちょうど1時間後、その魔法はついに完成したのだった。
静かに瞼を閉じる竜の少女を傍目に師匠は言った。
「やはり君は優良物件だったようだ。」
「そうですか。それなら、良かった…です。」
そして、竜の少女はそれだけを言うと、魔力がきれた魔石のようになり、翼を閉じて床に向かって落ちた。もう、精神的にも肉体的にも限界をとうに超えてしまっていたのだろう。朦朧とする意識の中、最後に感じたのは硬い床の触感ではではなく、何か柔らかい触感だった。
少年は竜の少女の自分の予想を超える才能に歓喜していた。少年は床に向かって落ちていく少女を腕で受け止める。やはり、竜の少女にはなんだかんだ甘いのかもしれない。そう思わせるようなそっとした優しい受け止め方だった。
いや、しかしそんなこともなかったのかもしれない。
「危なかったね。さすがに、今はまずいよね。まあ、君であれば、死ぬ直前までは行ってもショック死とかで死ぬことはなく済むと思うけれど、今は時間がないし、ダメージが回復しなかったら、せっかくの初陣が台無しだからな。」
「この人形は直接肌に触れると超高圧電流が自動的に流れるんだよ。これは結構、便利でね。電気耐性をつけるのには最適だったんだ。雷属性の魔法はまれに見るからな。これを毎日抱いて寝ると、1ヶ月後には大抵の雷の魔法は避けなくてよくなる。まあ、もう聞こえていないだろうけれど。」
少年はそんなふうに余裕の表情でしゃべりながら、何も纏っていない手で人形の手をなでる。今も、超高圧電流が流れているはずにも関わらず…。
それから、12時の鐘がなり、うなされていた悪夢からは解放されたが、次に待っていたのはさらなる地獄だった。それは竜の少女が師匠の部屋にいた人形の手入れをしていたら、突然雷が降ってきて、すごい痛みを実感するというリアルすぎる悪夢から、変わったかわいそうな哀れな人たちの地獄だった。
そう、悪夢から覚ました竜の少女の目に映ったのは師匠の縛られている姿と帝国の兵士たち数人の姿だったのだ。これ以上ない戦慄を覚えた。
竜の少女はその人たちのできるだけ、平和な最後を祈りながら、今度はいい夢が見れますようにとまだ回復していないヘロヘロになった身体を癒すため、再び眠りにつくのだった。
みなさん、こんばんは。サイカです。
今回で第二章が無事完結しました。ひとえに、私や私の作品を応援してくださっている皆さんのおかげです。
勝手ながらですが、明日からは2日に1話のペースで更新していきます。できれば、これからもこの作品を書いていきたいので、応援していただければ嬉しいです。
まだまだ、暑さが残りますが、日常生活も頑張りましょう。
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