第7話 一滴の希望

文化祭の興奮が冷めやらぬ中、玲奈と翔太の関係もさらに深まっていた。彼らの演奏は大成功を収め、多くの友人たちからも称賛の声が寄せられた。だが、そんな中でも彼らには一つの新たな挑戦が待っていた。


ある日、玲奈は学校の掲示板で見つけたポスターに目を止めた。それは、地域の音楽コンテストの案内だった。優勝者には音楽プロデューサーとの契約が約束されているという内容に、彼女は興味を持った。


「水嶋くん、見てみて!」玲奈は翔太にポスターを見せながら、興奮気味に話しかけた。「この音楽コンテスト、応募してみない?」


翔太はポスターをじっくりと見て、考え込みながら答えた。「確かに魅力的だね。でも、ちょっと本気で取り組まないといけないし、準備も大変だろうね。」


「うん、わかってる。でも、これをチャンスに変えられるかもしれないし、挑戦してみたいんだ。」玲奈は決意を込めて言った。


「そうだね。玲奈がやりたいって言うなら、僕も全力でサポートするよ。」翔太は彼女の目を見つめて、優しく答えた。


それから二人は、コンテストに向けての準備を始めた。曲の選定、アレンジ、練習…。その全てにおいて、彼らは真剣に取り組んだ。時間が経つにつれて、彼らの努力が実を結び始めていった。


ある晩、玲奈と翔太は校舎の裏で練習していた。夜の静寂の中で、彼らの音楽が響き渡り、その美しいメロディが夜空に溶け込んでいった。


「水嶋くん、これで大丈夫かな?」玲奈はギターの音色を確認しながら尋ねた。


「うん、すごく良い感じだよ。」翔太は微笑みながら答えた。「でも、緊張するかもしれないから、心の準備もしておこうね。」


「うん、わかった。」玲奈は少し不安そうな顔をしながらも、頷いた。


その時、翔太はふと思い出したように言った。「そういえば、あの曲にちょっとだけアレンジを加えた方がいいかもしれない。もっと心に残るメロディにするために。」


「いいアイデアだね。」玲奈は嬉しそうに答えた。「じゃあ、そのアレンジを加えてみよう。」


二人はその夜、アレンジ作業に没頭し、曲がより一層完成度の高いものへと仕上がっていった。練習の合間に、互いの意見を交わしながら、より良い演奏を目指して努力を重ねた。


そして、コンテスト当日がやってきた。会場は緊張感に包まれ、多くの音楽愛好者やプロの音楽関係者が集まっていた。玲奈と翔太は、舞台裏で最後の準備を整えていた。


「緊張するけど、大丈夫だよね?」玲奈は手に汗を握りながら訊ねた。


「もちろん。僕たちの音楽を信じて、思いっきり楽しもう。」翔太は彼女に力強い言葉をかけ、彼女の手を優しく握った。


舞台に立った瞬間、玲奈と翔太は一瞬の静寂を感じた。観客の視線が集まる中、彼らは深呼吸をして、心を落ち着けた。


「それでは、次にお送りするのは、私たちが心を込めて作り上げた一曲です。」玲奈はマイクを握り、観客に向かって話しかけた。


そして、演奏が始まった。玲奈の歌声と翔太のギターが、観客の心を引きつける美しいメロディを奏でていった。その音楽は、観客の心に深く響き、感動を呼び起こした。


曲が終わると、会場には大きな拍手と歓声が響き渡った。玲奈と翔太は、その反応に胸がいっぱいになりながらも、互いに微笑み合った。


「すごく良かったよ、玲奈。」翔太は彼女に向かって言った。


「ありがとう、水嶋くん。君と一緒に演奏できて、本当に良かった。」玲奈は目に涙を浮かべながら答えた。


コンテストが終わり、結果発表の時間がやってきた。玲奈と翔太は緊張しながら、その瞬間を待っていた。


「それでは、優勝者を発表します。」司会者の声が会場に響く中、玲奈と翔太は手を握りながら、息を呑んで結果を待った。


「今年の音楽コンテストの優勝者は…水嶋翔太さんと…桐谷玲奈さんです!」司会者の言葉が会場に響き渡り、観客からは大きな歓声が上がった。


「やった!」玲奈は驚きと喜びで目を大きく開けながら、翔太と抱き合った。「本当に、ありがとう!」


「こちらこそ、ありがとう。」翔太は彼女の背中を優しく叩きながら、満面の笑みを浮かべた。


その夜、二人は祝福の言葉を受けながら、たくさんの人たちと楽しいひとときを過ごした。彼らの音楽が、心に残るひとしずくの希望となり、未来に向けた新たな道を切り開いていくのだった。

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