参加型異世界日記
yamyom
第1話 11月某日の私
■ーーーーー
『左!キテルキテル!』
「おうっ!」
その男は振りむきざまに左手の短剣で切りかかった。
ギャンっ
犬みたいな鳴き声のその生き物は首の下をから血飛沫を上げながら倒れると毛皮と長い歯みたいな物を残して本体を土の中に沈めていった。
「あれが最後のやつか。」
あたりを見回して男は静かな声で言い、足元にある毛皮と歯を拾って鞄に入れから奥の扉へ歩いていく。
『今日はもう終わり?』
「ああ。今日は来るのが遅かったな。」
『今日は残業で帰りが遅くなったからね。』
「 ? そうか。」
扉を開けると床の一部が円形に光っている場所に歩いていく。
フオォンッ
『ポータル万歳っ』
「・・・」
この男曰くゲートと言うものらしいが、私的にはポータルと言いたい。
円形の中に男が立つと光が体を包み、目の前の景色が変わった。
目を開けるとそこは石を積んだ薄暗い部屋だった。
「っ」
男が小さく呻く。
このゲートは起動する際に少し浮遊感を感じる。
それにまだ慣れていないこやつは少し怠そうにしている。
ジェットコースターとか無理なタイプだね。
『大丈夫?』
「ああ。」
少し頭を振ってもさらに悪くなるだろうに。
寡黙で分かりづらいが、中に入っているからか具合の悪さというか倦怠感が少し伝わってくる。
私はこの男の中に入っている。
実際にどうなっているのかさっぱり分からないが、簡単に言うとそういうことなのだ。もうかれこれ半年程お邪魔している。
この男に入ると離れる迄は付いて回ることになる。手足の感覚はない。そもそもこの男と長文で会話することが出来たのもつい1ヶ月前程からだ。
この男も本当に動じない。最初に話しかけた時は草木が揺れる様な音だったそうだ。つまり気の所為だと思っていたと。
確かになあ。私も、聞いても何も返って来ないし、普通の人間だったのによくわからない存在になったものだと、もしかしてずっとこのまま男の生活を見守っているだけの背後霊になったのかと思った。
ついに単語が通じた時は叫んでしまって、男は「煩い! 頭に響く!」と怒られた。
頭に響く様な聞こえ方らしい。私と同じように聞こえるのか。
半年経った今、私は言葉が通じない背後霊から言葉が通じる居候にランクアップを果たした。
■
ピピッピピッピピッピピピピピピピ.....
「っ」
今日は昨日より寒い。
日に日に寒くなるな。
二度寝に入りそうになりながらも、それをしては人生終わると必死に布団の中から藻掻いて近くのカーテンをがっと開ける。
暗い部屋が一気に明るくなって目が追いついて行けないっ!と言うようにシパシパする。
毎朝の事ながらしばらくぼんやりしてしまう。
ここ最近めっきり寒さが強くなったので羽毛布団を出したのだが、動きが鈍くなる。
これはいけない。
なんとか立ち上がって冷蔵庫に貼ってある付箋にメモをする。
『今日は虫系無し。歯と皮ゲット』と。
昔から学級日誌や日記、作文等が苦手だった。
必須の宿題だとしても、書いても何も解決されない上に、ただの凡人の日常を何故書かされなければいけないのか?
個人情報だろう?と先生聞いて変な諭され方をされた記憶がある。
小学校の夏休みの絵日記は学校にメール投稿だったので、日時指定設定して1日で全て投稿した。代わり映えのない当たり障りない内容で完全にバレていただろうが、まあ今更どうでもいい。
大人になった今は、気になる事をメモを取るそんで見えるところに貼る。思い返す事は単語で可能だ。
うちの冷蔵庫は付箋だらけだ。
専門学校を卒業して就職。9時間勤務のデスクワーク。昼は社食ですまし、電車で片道30分の家に帰る。
タブレットで動画を見ながら夕食を食べてお酒を飲み寝落ちる。
これが私の生活。
そして今日も夢を見る。
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ここまで読んでいただき、
ありがとう存じます。始めてなので短めに。
誤字脱字の校閲は後ほどに行います。
こいつっ 笑 と思いながらお付き合いください。
一括投稿等のハイスペックな事できません。
出来る時は頑張る不定期投稿です。
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