第2話 超絶レア鉱石
「それでお姉ちゃん、先ずは何するの?」
握手を終えてすぐ、少年からそんな質問を受けたので迷わずこう答えた。
「ふふふっ、先ず初めにすること……それは昼食よ!」
ということで、直ちに台所へ案内してもらって調理を開始。
先ずは氷の魔石を利用した魔導冷却貯蔵庫……通称〝冷蔵庫〟からピンクボアのバラ肉を加工したベーコンとベジターブルの背中から採った青ネギ、あとはガーデンバードが産んだ卵を取り出し、ベーコンと青ネギを〝イリア〟の包丁で細かく切ってから〝イリア〟のボウルで卵を溶き、それら全てをトーヨーナタネから抽出したサラダ油を薄く敷いた〝イリア〟のフライパンで中火のまま豪快に炒める。
因みに〝魔導コンロ〟には火の魔石が利用されており、弱火・中火・強火・鬼火と4段階の調節が可能だ。てか、鬼火って必要……?
次は白米。この米は自国【メガロス・ドワーファ】の北東地域で作られているアシタコマチ。そこいらの米とは粒立ちが違う。
そのブランド米を火と水の魔石を利用した〝魔導炊飯器〟から〝イリア〟の木杓子で掬い取り、具材を炒め終わったら具材と合わせてまた炒める。この時、火力は強火に。
白米が黄金色に馴染んだら醤油・塩・胡椒・ガーデンバードの骨を煮込んで作られた鶏ガラスープの素を少量入れ、サッと炒めてすぐに火を止める。
最後はお皿に丸く盛りつけ、小口切りにした青ネギを乗せれば母直伝〝B.A.T.炒飯〟の出来上がり。
早速、出来立て炒飯を頂く……前に、イリアさんのために〝自家製梅干し入り玉子粥〟をササッと作り、少年を連れて届けに向かった。
「あのねママ、このお粥お姉ちゃんが作ったんだ! 僕の作る黒いお粥と全然違うよね? うーん……なんでだろ?」
少年の質問に「な、なんでだろうね。あはは……」と苦笑いで誤魔化してから玉子粥を少しずつ食すイリアさん。
彼女の美味しそうに食べる姿を見ていたら自然と笑みが零れた。
されど、スプーンを持つその手は木の枝のようにか細く、今にも折れてしまいそうで見ていてとても心苦しい。
それにさ、ずっと見てたら食事の妨げになっちゃうよね……
そう思った私は少年と居間に戻って炒飯を食べることにした。
「いただきます(×2)」
居間に戻ってすぐ、私たちは黙々と炒飯を食す……とその最中、またもや少年から質問が。
「それでお姉ちゃん、次は何するの?」
この質問に一旦食事の手を止め、スプーンを皿の上に置いてから一言。
「次は作業場の確認かなぁ」
質問に答えた途端、少年から「早く食べて行こっ!」と急かされてしまい、速攻で炒飯を食べ終えて息つく暇もなく作業場へと向かうことに。
それにしても、少年は何故こんなに嬉しそうな表情をしているのだろうか……?
「お姉ちゃんっ、ここが作業場だよ!」
作業場に着くなり少年は両手を広げて作業場であることをアピール。
この工房に入った時点で知ってはいたが、「そうだね、教えてくれてありがと」と敢えて少年に感謝を。
それが少年を益々調子づかせてしまったのか、彼は様々なものを紹介し始める。
武器製造に必要不可欠な
「えーっと、これが
「うんうん、キミは凄いねぇ──って、え゙ぇぇぇ~っ!?」
20年間生きてきたなかで一度もお目に掛かったことのない超絶レア鉱石が目の前にある事実に、思わず目が飛び出そうなくらい驚いてしまった。どれか1つでも相当凄いことなのにって。
で、でも、全部が全部本物なのか分からないし一応調べてみなきゃ……この鑑定スキルで!!
最近、この街でも見た目だけ似せた紛い物の鉱石が出回っているため素養のある者は鑑定スキルを習得するのが通例となっており、幸いにも故郷の村で習得済みの私は未だ
だからこそ、いついかなる時もスキルで鑑定する癖をつけておかなければならないのだ。
てなわけで、本物か否かを鑑定スキル『鉱石鑑定』で視ることにした。ゴクリ……
【
【詳細:全鉱石の中で最も魔力伝導率が高く、毒物に触れても黒く変色しない不思議な銀系鉱石。古代文字で〝聖〟の名を冠する理由もこれに当たる】
【
【詳細:全鉱石の中で二番目に硬く、陽光を浴びると黄金色から緋色に輝く謎の金系鉱石。変色のメカニズムは未だ解明されておらず、一説では異世界の鉱石だからとか】
【
【詳細:全鉱石の中で最も硬く、最も重い鉄系鉱石。現在の加工技術では素色の黒から色を変えることは不可能とされている。鉄に属するだけに、まさに
【
【詳細:全鉱石の中で最も総合値が高く、バランスの取れた銅系鉱石。真鍮にも拘らず、錆や黒ズミが付かないのは神が愛でているからだと云われており、それが名前の由来とも】
【
【詳細:五大金属の一つ、
「……す、凄い、これ全部本物だ……どれもこれも調べた特徴そのまんま──ってヤバっ! なんかめっちゃ興奮してきたぁ!」
どの鉱石も特徴と合致した鑑定結果であるため本物と断定。鑑定偽装もないものと思われる。
生産者ギルドで指標鉱石に指定されているのは鋼鉄……つまりは〝
……それにしても、よくこれほどの超絶レア鉱石を集められたものだ。たとえ王家であっても全てを集めることは不可能に近い。だけど、それをイリアさんはたった一人で……
「よーしっ、私も頑張らなきゃ! 少年っ、危ないから下がってて!」
やる気に火が付いたところで製造作業を始めることにした私は、石炭と火打ち石で火床……謂わゆる〝炉〟に火を熾し、木桶で水瓶から掬い取った水を焼き入れ用の水槽に何度も移しては溜め、
因みに手槌だけは自前のやつ。武器職人を始める時に母からプレゼントされた〝イリア〟の手槌で私の相棒……ううん、相槌だから。
「お姉ちゃん! これから何使って何造ってくれるの?」
瞳をキラキラと輝かせる少年の期待に応えるべく、今造れるなかで一番自信のある武器を造ろうと決心し、ある素材を手にして「これを使って弓を造るの!」と少年に向けて言い放つ。
すると少年の「おぉ~っ!」と喜ぶ姿に更なるやる気を貰えたため、勢いそのままに弓を造り始めた。
私が手にした素材はダンシャオ竹。
この街から西に少し向かった場所にある竹林〝チン竹林〟に自生する背の低い竹であり、通常の竹よりも伸びない分曲がりが少なく丈夫でしなやか。弓にはもってこいの竹だ。
その竹を縦4分割にしてヤスリを掛け、火床で熱した後に全て重ね、金型に挟んで形を作る。
村にいた頃は楔を打ち込んで形を作っていたが、この街に来てからは金型に頼る方法を身に付けたので作業がかなり楽になった。
……と、昔のことを思い出している内に竹が冷えたので金型から外し、両先端から一定間隔で金具を付けて重ねた竹を固定。
魔珪石を溶かして作られた耐熱塗料を塗布して自然乾燥させ、軽く熱して塗料を硬化させれば弓の本体〝
そして、両先端の金具に麻弦を通して竹がしなる手前まで張れば弓の完成だ。
この工房に備えられてある器具や工具のお陰なのか、過去最高の弓が造れた。
これから少年に見せることを考えると……ふふっ、彼の驚く顔が目に浮かぶようだ……──
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