第3話:りっぱな殺人事件。

豆駒は、芸のお稽古の合間に高校に入学することを許された。

祇園から一番近い高校。


「京都西之宮芸能高等学園」


いろんな芸に打ち込んでる若者たちが通う高校。


なにを隠そう・・・今、僕は日之宮芸能高等学園の教師をしてる。

偶然じゃない。

僕も豆駒に一番近くにいたかったので西之宮を選んだ。

まあ、そこを見越して豆駒は西之宮を選んだんだけどね。

豆駒は昼間にお座敷から声はかかることはまずない。

もし授業中に用事がある場合は用事を優先してくれる融通の利く学校だ。


舞妓も高校許育は受けてたほうがいいだろうって吉田屋さんの女将さんが

進めてくれたらしい。


で、めでたく豆駒は西之宮芸能高等学園に入学した。

豆駒は担任の先生「僕」からクラスのみんなに紹介されて、席は真ん中の

左側に決まった。

僕からしたら豆駒の席はどこでもよかった。

教壇から豆駒が見えるからね。


これで、暗黙ではあるけれど、公然と豆駒といられるようになった。

クラス内では僕と豆駒の関係は内緒。

まあ、そのうちバレるかもしれないけど、バレたらバレた時のこと。

別に悪いことをしてるわけじゃなし・・・。


これからは無理に祇園に足を運ばなくても学園内にいる時は豆駒と話も

できるし、このまま豆駒が学園を卒業するまで愛を育むこともできる。


もともと豆駒は中学生の頃から成績はよかったし頭もよかった。

特に豆駒が興味を持ったのが推理小説や刑事ドラマ。

彼女の一番好きなヒロインはアガサ・クリスティ作の推理小説に登場する

おばあちゃん「ミス・マープル」

テレビドラマは「ジュリア・マッケンジーさん」のマープルが好きみたいだ。

セリフを覚えるくらい観ている。


そしてその事件が起きたのは豆駒が学園に入ってから数日後のことだった。


クラスのひとり「人吉 素直ひとよし すなお」君がお昼の弁当を食べた

あと牛乳を飲む習慣があったみたいで、その牛乳を飲んだとたん苦しみ初めて、

結局その教室で亡くなったんだ。


「これは立派な殺人事件や思いまへん?、俊介はん」


豆駒が嬉しそうに言った。


「え〜?・・・これって殺人なのか?豆駒?・・・自殺とか?」


「どう見たかて毒殺ですやろ?」

「自分で自分の牛乳に毒を入れるおバカさんなんていてしまへんえ?」


そこで科学に詳しい人が理科の実験室で残った牛乳を調べたらキノコなどに

含まれるアルカロイド系の毒が検出された。


誰が人吉の牛乳に毒なんか入れたのか?

祇園界隈で探偵として有名な豆駒の推理がはじまった。


「まずは人吉はんの人間関係からどすな」

「きっと、どなたはんかに恨まれてるはずどす」


「まあ、人間関係から探るのが初歩だろうな・・・殺人なんて、だいたいは

恨みか金のもつれか女性関係だろ?」


「今回の場合、凶器は毒やよって動機が問題やね」

「人吉はんは過去に誰かと揉めたとか・・・たとえば何かを目撃して相手を

強請ゆすってたとか?・・・それで逆恨みされたんやあらしまへんやろか?」


なわけで、僕と豆駒は人吉と親しくしてた生徒に情報を聞いて回った。


「豆駒なんで、僕たちがこんなことしなきゃいけないんだ?」

「こんなの警察に任せときゃいいだろ?」


「同級生が殺されはったんどすえ・・・明日は俊介はんかもしれまへんえ?」


「怖いこと言うなよ、僕は人様に恨まれるようなことはしてないよ」


「俊介はん・・・慌ててはる・・・面白おす」


「からかうなよ」


「俊介はん、嫌ならええどすえ・・・私ひとりで解決しますよって」


「いやいや・・・君ひとりに任せてはおけないよ、大切な彼女を放っては

おけないだろ?」

「僕には彼氏としての責任があるからね」


「じゃ〜一緒にファイトどす」


「名探偵の舞妓はんには敵わないかもしれないけど、お手伝いくらいは

僕でもできると思うよ」


で収集した情報によるとだな・・・人吉には特に仲がよかったやつが、ひとり

いたことが分かった。

ほんとに仲がよかったかどうかは分からないけどな、なんせ死人に口無しだから。


人吉につながりがあって一番近い存在なやつ。

そいつの名前は「横島 脇道よこしま わきみち」・・・隣のクラスのやつ。

豆駒はこいつが怪しいって睨んだ。


「豆駒、証拠はあるの?・・・君の勘だけじゃ無理だよ」


「証拠なんかあらしまへん・・・けど大丈夫どす」


今の所、横島が犯人だって証拠はない・・・全部、豆駒の推理に基づく判断。

豆駒が絶対だって言うから僕は横島を担任として僕のクラスに呼び出した。


つづく。




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