第89話侯爵夫人の葬儀⑩【親族②】

ルモア家が騒いでいる離れではアレックの親族パルリス家がヒソヒソと話をしていた。

「…隣のルモア家だったか…何か騒いでいるようだな…」

「騒ぎたくなるだろう…アレックの妻が亡くなったんだ…妻が亡くなったと言うのにアレックが浮気をしていたと言うじゃないか…」

「…し、信じられないわ何かの間違いよ!アレックは今まで女性問題なんてなかったわ。真面目で仕事を手伝う自慢の息子だと兄さんがいつも言っていたのを知っているでしょう!?」

焦るように声を上げ、アレックの浮気を信じない叔母がアレックを庇うように話をしていた。

「俺もそう思いたいが…最近のアレックに不満を言ってくる仕入れ先から連絡があったようなんだ。待ち合わせの時間に遅れたり、頼む商品の名前などを忘れたりする事があったと聞いた」

「え?アレックが!?そんな事今までなかったわ…」

「それに、必ず仕入れ先には女性も一緒だったそうだ」

「夫人ではないのか?」

「いや、仕事の話などは分からないと話していたそうだ。いつも仕入れ先にはその女性を連れていたらしい…」

「そんな…ソフィアさんでなかったら…」

「アレックが浮気をしたのはソフィアさんの妹だろうな…」

ザワッとアレックの親族は声を出していた。

「何をやっているんだあいつは…兄さんが亡くなった後でも夜遅くまで仕事をしているのを何度も見かけた…真面目な奴だと俺も知っていた。結婚してからもソフィアさんと一緒に仕事を始めたと聞いた時は、良い人が嫁いで良かったと安堵していた…それが、一瞬に崩れ終わってしまうとは…」

アレックの伯父が肩を落としていた。

「…いろいろ話を聞いて、どうしてアレックが屋敷へ招待してくれないのか分かった気がするわ…」

「アレックが結婚して一度も屋敷へ行っていないのか?」

「ああ、私達夫婦が毎年屋敷へ行っていたのを知っていると思うが、アレックが結婚してから一度も屋敷へ行った事がない。こちらから連絡すると『仕事が忙しいから会えない』と『妻が体調不良だから』とか言っていたから私達も屋敷へ行くのは諦めていたんだ…結婚したばかりでもあったと思っていた…こんな事になるのなら行けばよかったと後悔している…」

親族が集まる部屋では、ソフィアの死を悲しむ者もいればアレックとエミリーの話で騒がしかった。

「パルリス家の皆さん少しいいだろうか?」

ソフィアの叔父がアレックの親族に声をかけていた。

「皆さんも初めて聞いて驚いていると思います…私はソフィアの叔父になります…頭が良く皆から愛され優しい子でした…パルリス家の使用人達からも慕われていたと聞きました…自慢の姪でした…」

グスッ、と叔父の話を聞きソフィアの親族は涙を拭う者もいた。

「残念な事にソフィアは、夫でありますアレック侯爵と結婚してから亡くなるまで…夜を過ごした事がないのです…」

!?

アレックの親族達は驚き「まさか…」と声に出す者もいた。

「…それは、どういう…」

「ソフィアは、子を身籠る事なく白いままで逝ってしまったのです…」

ザワッザワッとアレックの親族達が騒ぎ親族の一人が声を上げた。

「ま…まさか、アレックはソフィアさんの妹と…」

「…はい…侯爵の子を身籠っています…」

!!

ガタッ!とアレックの叔母が気を失い倒れてしまい親族達は大騒ぎとなった。



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