第11話 暴露

「まず、さっきはテテチテさんを驚かせてしまってすみません。実は僕の左腕、呪われてるみたいで……」


「いやぁ、気にすんなって!しかし、呪いってのはどうゆうことだい?」


(覚悟決めたつもりだったけど……緊張する。……あぁ!僕はなんでこうもっ……!ウジウジとじれったい!うぅぅぅっ!もう、どうにでもなれ!)


 アルは思い切ってローブを脱ぎ捨てる。


「こ、これが呪われた左腕です!」

 

 虫の足や触覚、羽、外殻、複眼などが大量に生えた左腕を見た2人の目はまん丸に見開いた。


「アル君……」「うわぉ……」


「気持ち悪いですよね……。僕も今の今までどうしてこうなったのか分からなかったんですが『人間苗床説』の話をしてたら、微かに思い当たることがあって……。僕が襲われた時、お腹に何か注入された気がするんです」


 アルは右手でチュニックの上からお腹をさすりながら続ける。


「想像もしたくないですが、僕もきっと苗床にされてたんです。でもなぜだか、僕の中では成長できなかった。その代償なのか……左腕に蟲の特徴が出てきてしまったようです」


「アルがさっきうずくまってたのは『自分も苗床にされたんだ!』って分かってショックだったからか!しかしよぉ、なーんでアルの体内では成長できなかったんだろうな?」


 堪らずテテチテが質問する。


「うーん。見たところ、村のみんなは全員孵化してますもんね。ということは、村のみんなにはあって僕に無いもの……。あ。魔力、かも」


「アル君って魔力が無いの?」


「うん。僕は生まれつき体が弱くて、物理系能力値は全て成人の正常値以下だったし、魔法系に関してはどれも0だった。この事件が起きるまで、だけど」


「含みのある言い方をするじゃねぇの!」


「はい。襲われた後、ジケニアの町で目を覚ますと、能力値が異常に上昇していたんです」


 リセチが恐る恐る口を開く。


「異常……そんなに?」


「うん、特に魔法系の数値は驚くと思う。STR:8、VIT:7、AGI:9、INT: 501――」


「500!!」「500ぅぅ!?」


 アルが全ての能力値を言い終える前に、2人の絶叫が遮る。


「おいおい嘘じゃねぇだろうな!INT500超えって言ったら世界で5本の指には入るんじゃねえのか!?」


「うんうん!そうだよね!有名なのは、南大陸にある血脈魔帝国の三賢とか!」


「あぁ!その通りだ!魔法に関する知識や技術が最も発展した国だからな!魔力に関しては他の追随を許さない!三賢か。ミッドナイト、ナハトノワール、リー・ラブラスブラウ、こいつら3人が――」


(2人ともかなり興奮してる。というか世界で5本の指に入るって言った!?それは僕の想像以上だ!)


 アルが心の中ではしゃいでいると、リセチに祝福の声を掛けられた。


「アル君すごいじゃん!!こんな奇跡的なことってあるんだね!」


「ありがとう、リセチさん。嫌われて無さそうで良かった」


「嫌わないよー!そりゃ見た目にはビックリしたけどさ!」


 えへへと笑いながらリセチが大げさに驚いたポーズを取る。


「そうそう!アルは良いやつそうだからな!これくらいじゃぁ俺っちは嫌いにならないぜ!」


「テテチテさんも。ありがとうございます。安心しました」


「ってか、アル。そんだけ能力高いならウチに来いよ!俺っちからリーダーに推薦してやるぜ?なぁ!リセチちゃんも良いアイデアだと思わねぇか?」


 急に振られたリセチは、アルのことをチラリと見た後、なんとか取り繕って答える。


「そ、そうねー」


 アルは、リセチがこの任務を最後に『狂火乱武』を脱退するつもりであることを知っていたため、気まずさを感じていた。


「テテチテさん、お誘いありがとうございます。でも僕は冒険者になりたいわけじゃないんです」


「何でさ!アルほどの能力がありゃガッポガッポと稼げるぜ!?」


「僕は稼ぎたい訳じゃなくて、食人巨蟲を駆逐したいんです。冒険者の皆さんとは目的が違うんですよ。僕が村長から聞いた話によれば、内陸部には、人類を脅かすほど大量の食人巨蟲が生息していると聞いています。僕はそこに乗り込んで行って、アイツらを駆逐したいんです!!村の人たちの仇を取りたいんです!!」


 アルの決意が大きな声となって、死体だらけの村に響き渡った。




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


読んでいて

『アル!一匹残らず駆逐してやれ!!』


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