第6話 冒険者パーティ
ザイン村へと向かう道に戻るとアルは小さな変化に気付く。
「そういえば、ジケニアの町を出てから結構歩いてるのに、あんまり疲れないな」
虚弱体質のアルにとって、長時間歩くことは本来なら避けなければならない状況である。
これも能力値絡みと予想したアルは、改めて【チェック・ステータス】を唱え、ステータスを確認する。
「あれ、よく見ると物理系も数値が上がってる」
以前は、STR《筋力》、VIT《耐久》、AGI《敏捷》、どの項目も数値が7未満で、正常値には届いていなかったが、今は違う。
「物理系、どれも正常値の範囲内だ。これってもしかして虚弱体質が治ったんじゃないか!?」
興奮のあまり、アルは衝動的に駆け出した。
グングン加速していき、景色の流れるスピードに心がときめく。
冒険者などからすれば、決して速いとは言えないスピードだったが、これでもアル史上では最速だった。
全速力に近い速さで100メートル程走ると流石に息が切れてきた。
「はぁ、はぁ……凄い、スピードと、体力だ!これなら、もう、虚弱体質なんて、言われないぞ!ははっ!」
村を食人巨蟲に襲われて以来、坂道を転がり落ちるように悪いことが続いていたが、ようやく前向きな出来事を経験できた。
「はぁ、でも、ちょっと、休憩だ、ふぅ……」
アルは道端の木陰で体力が回復するまで休むことにした。
全速力の反動と興奮で、心臓の鼓動が馬の
「大丈夫かな。し、心臓が飛び出しそうだ」
そんな心配をよそに、数分も休むと心臓や呼吸がすっかり元通りとなった。
「普通の人はこんなに回復が早いのか。なんて便利な体なんだ!」
体の変化に喜びを隠しきれず跳ねるように立ち上がると、アルが歩いてきた方角から近寄る大量の足音が聞こえた。
しばらく警戒しながら足音の方角を見ていると、
「あれが、冒険者パーティってやつかな。かっこいいなぁ」
物珍しさから冒険者一団をジッと見つめていると、先頭を歩くスキンヘッドで大柄な男と目が合う。
「あ?なんだガキ。ジロジロ見やがって」
筋肉でパンパンに膨らんだ上半身をレザーアーマーに押し込めたいかにもな男に睨みを利かされてアルは怯んだ。
「あ、いえ、すみません。何でもないです」
アルがサッと目線を外したのも束の間、スキンヘッドの男は号令を掛けた。
「隊列止まれい!」
(げ……やばいな)
スキンヘッドの男は、脂汗でテカテカと光る顔をアルの顔に近づけてから、足先まで舐めるように観察する。
「おい、ガキぃ。こんな所で1人か?何してやがる?」
男の視線が一瞬、左腕で止まったような気がしたが、気にせず答える。
「ぼ、僕は故郷の村に戻るところです」
「ほう?村だと?俺の記憶が正しきゃこの先の村は1つだ。お前はザイン村の出身か?」
「は、はい!そうです!」
(嫌な予感がする……。もう厄介ごとは勘弁だ。頼むからどっか行ってくれ!)
「そうか。ってことは、
村の生き残り、そのワードに反応したアルは、反射的に目線を合わせる。
「え、知ってるんですか?」
「あぁ。俺たちゃ今任務中でな。ジケニアの町から来た『狂火乱武』ってパーティだ。俺がリーダーのギガだ」
(ジケニア!そうか、だからザイン村が襲われたことを知っているのか)
「任務内容は『ザイン村の周辺調査』と『ザイン村を襲った巣の特定』なんだが……ん?お前、ザイン村が襲われたと聞いて驚かないんだな。お前の方こそ、襲われたことを知ってんのか?」
アルはここまでの経緯を簡単に話した。
ザイン村で襲われたこと。ジケニアの町で治療を受けたこと。今は村の様子を見るために戻っている最中だということ。
念のため、左腕のことは伝えずにおいた。
「そうか。ならついでだ。俺たちと一緒に来い」
「いえご迷惑でしょうし遠慮しておきますそれでは!」
早口で挨拶を終えるや否や立ち去ろうとしたところ、ギガに右腕を掴まれた。
「いや、迷惑じゃねえ。むしろ村のことを知ってる奴がいた方が、何かの役に立つかもしれねぇ。いいからガタガタ言わずに後ろの馬車に乗れや!」
(僕のことはほっといてくれよーっ!)
アルの願いは叶わず、無情にも屋根付きの貨車へと押し込まれてしまった。
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読んでいて――
『ヤバイ人と目を合わせてはいけないってことだな!』
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