第18話 遺された遺志
エリオットとアイリスは、王宮の地下を再び歩み始めた。リオネルが遺した最後の手がかりを追うため、彼らは影を封じた祭壇からさらに奥へと進んでいった。暗く冷たい空気が漂う中、二人の足音だけが静寂を破っていた。彼らの心には、リオネルが伝えたかった何かを見つけ出す決意と、その使命を成し遂げるための覚悟が強く刻まれていた。
「リオネル様が残したものは、この地下にまだ眠っているはずだ。私たちがそれを見つけ出し、影を完全に消し去るためには、すべてを知る必要がある。」
エリオットは静かに語り、アイリスの目を見つめた。彼女も同じ決意を持っていることが、その瞳から伝わってきた。
「ええ、エリオット。リオネル様が遺したものが何であれ、それを見つけ出して、この王国を本当に救うために使いましょう。」
二人はさらに奥へと進み、やがて地下の最深部に辿り着いた。そこには、今までとは異なる雰囲気が漂っていた。古代の壁画や文字が、まるで何かを封じ込めるために施されたかのように壁一面に刻まれていた。石造りの階段を下りきった先に、巨大な扉が現れた。それは、これまでの扉とは異なり、異様に重厚であり、長い間封印されていたことを物語っていた。
「ここだ……リオネル様が最後に到達した場所……」
エリオットは呟きながら、その扉に手をかけた。扉には古代の紋章が彫り込まれており、それが何を意味するのかを理解するには、リオネルの残した日記の記述が必要だった。エリオットは慎重にその日記を開き、紋章に対応するページを探し始めた。
「これは……リオネル様が影を封じた時の儀式の一部に使ったものだ……」
エリオットはそのページを見つけ、日記の内容を声に出して読み上げた。それは、影を封じるために使われた強力な封印術であり、同時にそれを完全に解放するための呪文も記されていた。
「この呪文を使えば、扉を開くことができる……でも、それは影の力を完全に解放することにも繋がる……」
エリオットの言葉に、アイリスは静かに頷いた。彼女はエリオットと共に、リオネルの遺志を遂行するためにこの扉を開く決断をした。
「私たちがやるべきことは一つ。この扉を開いて、リオネル様が遺したものを見つけ出し、それを影から取り戻す。それがこの王国を救うための鍵になるはず。」
アイリスの言葉に、エリオットは頷き、共に呪文を唱え始めた。二人の声が地下空間に響き渡り、扉に刻まれた紋章が徐々に輝きを放ち始めた。やがて、その光が扉全体に広がり、重い音を立てて扉がゆっくりと開き始めた。
扉の向こうには、異様に広がる空間があった。その中央には、巨大な石の台座が置かれており、その上には古びた箱が鎮座していた。その箱は、何世代にもわたって封印されていたものであり、その中にはリオネルが遺した最後の遺志が隠されていた。
エリオットとアイリスは慎重にその箱に近づき、静かに蓋を開けた。中には、古代の文献と共に、リオネルが残した最後のメッセージが収められていた。それは、影を封じるために必要な儀式の完全な手順であり、リオネルが命を賭して守ろうとしたものだった。
「これが……リオネル様が遺したもの……」
エリオットはその文献を手に取り、目を凝らしてその内容を読み始めた。そこには、影の力を完全に消し去るための最終的な儀式の手順が記されていたが、その代償として、儀式を行う者は永遠にこの場所に封じ込められるという恐ろしい真実が記されていた。
「これは……あまりにも重すぎる代償だ……」
エリオットはその内容に愕然としながら、文献を閉じた。リオネルはこの儀式を行わずに、別の方法で影を封じ込めようとした理由が、今ようやく明らかになった。それは、自分が永遠にこの世界から消え去ることを避けるためであり、それでもなお影を封じるために彼は別の道を選んだのだ。
アイリスもその文献を読みながら、静かに涙を流した。リオネルがどれほどの苦悩の中でこの決断を下したのかを考えると、彼の犠牲の重さが彼女の胸に痛烈に響いた。
「エリオット……私たちがこの儀式を行うことが、リオネル様が望んでいたことなのかどうか……」
アイリスの問いかけに、エリオットはしばらくの間黙り込んだ。彼はリオネルがこの儀式を避けた理由を理解していたが、それでも今、王国を救うためにはこの儀式を行うしかないという現実に直面していた。
「リオネル様は、この儀式を避けた……だが、今の私たちにはもう選択肢が残されていない。この影を完全に消し去るためには、私たちがこの儀式を行うしかない。」
エリオットの言葉に、アイリスは静かに頷いた。彼女もまた、この王国を救うために自分が何をすべきかを理解していた。二人はリオネルが遺した文献を基に、儀式の準備を進め始めた。
「エリオット、私たちが共にこの儀式を行えば、影は完全に消え去る……でも、その代償として、私たちは永遠にこの場所に封じ込められることになる。」
アイリスの声には、恐怖と覚悟が混じり合っていた。エリオットは彼女の手を握り、静かに微笑んだ。
「リオネル様がこの王国を守るために命を賭けたように、私たちも同じ覚悟を持たなければならない。この儀式が成功すれば、王国は救われるんだ。」
エリオットの言葉に、アイリスは再び頷いた。二人は最後の儀式に挑むための準備を整え、リオネルが残した遺志を遂行する決意を固めた。
「これが私たちの最後の試練になるだろう……エリオット、共にこの儀式を成功させましょう。」
アイリスの言葉に、エリオットは深く頷いた。二人は再び立ち上がり、最後の儀式を行うための準備を進めた。彼らの心には、リオネルが遺した遺志と、この王国を救うための使命が強く刻まれていた。
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