夢たち

春雷

第1話

1、マヨネーズの夢 

 僕はスーパーマーケットの入り口にいる。右手にはマヨネーズ、左手には弁当によく入っているカップを持っている。マヨネーズをカップに出して、それを丁寧に床に置いていく。他の客は見もしない。僕は孤独にその作業を続ける。

 やがて尿意が襲ってきたので、トイレに行く。しかし、店のトイレは床に寝転んで用を足すタイプの作りだったので、僕は諦め(安いプライドだ)、店を出る。

 店を出ると、同級生がバイクに跨っていた。乗れ、と言われたので、彼女の後ろに乗る。

 ぐーんとバイクは急加速し、そのまま空へ飛んでいった。

 僕はマヨネーズの空いた容器で、用を済ました。でもほとんど飛び散ってしまった。


2、カリキュラムの夢

 夕暮れの教室で、彼女と語り合っている。彼女は、「カリキュラムって、カリギュラという人が作ったから、カリキュラムと言うんだよ」と教えてくれた。僕はなるほど、そうなのかと思った(実際はそうではなかった)。

 遠くの方で鐘が鳴っている。近くでは風鈴の音。ゴーン、ゴーン・・・、チリン、チリン・・・。でもどちらも存在しないのだ。ゴーン、ゴーン、チリン、チリン・・・。存在しないのに、鳴っている。音は確かに聞こえるのに。不思議だなと思う。視覚からの情報に頼っているがゆえに、そんなことを思うのかしら、と考えたけれど、きっと違う。

 風が吹いて、カーテンが揺れた時、彼女がふっと消えた。そして、そうか、彼女もまた存在していなかったんだな、と思った。


3、ゴンドラの夢

 僕はゴンドラにしがみついている。ゴンドラの外側にいるため、いつ落ちるかわからない。下を見ると剣山。怖い。でも誰も助けに来ない。

 仕方がないので僕はずっと泣いていた。泣くことしかできないので、泣いていた。

 しかし、それが功を奏した。涙が溜まり、湖ができたのだ。

 僕はこれなら飛び込める、と思い、ゴンドラから手を離して、落下した。

 頭から落ちた。すると、一本だけ長い剣が湖面から伸びていて、そのまま突き刺さってしまった。頭からどくどくと血が流れる。

 僕はふたたび泣き出した。泣くことしかできないので、泣くしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢たち 春雷 @syunrai3333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る