真夏のスーパーの出会い

一の八

真夏のスーパーの出会い



日差しが容赦なく照りつける午後、いつものように地元のスーパー「マルス」に向かった。店内は冷房が効いていて、外の蒸し暑さから一時的に解放される小さなオアシスのようだ。買い物カゴに必要な品々を入れ、レジに向かうと、そこには数人が並んでいた。


私は列の最後尾に並び、退屈そうに順番を待っていた。ふと、視線を前に移すと、目の前にいる男性に思わず息を飲んだ。彼はごく普通の中年男性だが、ただ一つ、異常なまでに引き上げられた半ズボンが目を引く。膝上どころか、太ももを露わにし、まるで「もっと上げてやる!」と決意したかのような位置まで引き上げられていたのだ。おそらく、もう少し上げたら短パンではなく、トランクスとしても通用しそうなほどだった。


「さすがにそれは上げすぎだろう…」心の中で突っ込みを入れつつも、彼の姿から目が離せなかった。しかし、驚きはそれだけでは終わらない。彼の肌は、その引き上げられた部分までしっかりと日焼けしていたのだ。これが単なるファッションの事故ではなく、彼の日常のスタイルであることを示していた。つまり、この奇抜なズボンの引き上げは、今日限りの気まぐれではなく、彼の日々の生活の一部なのだ。


私は彼の背中を見つめ、彼がどんな日常を送っているのかを想像してみた。彼の家には鏡があるのだろうか?それとも、彼は自分のスタイルに絶対的な自信を持っているのだろうか?思わず微笑みがこぼれた。


その時、レジの店員が商品をスキャンしている手を止め、顔を上げた。彼女も同じように、その男性の半ズボンに驚き、目をぱちくりとさせた。そして、まるで自分の目を疑うかのように、もう一度彼を見たのだ。


その瞬間、私はなんとも言えない安心感に包まれた。「自分だけじゃなかったんだ」。奇妙なファッションに驚く私の感覚は、どうやら店員さんとも共有されていたのだ。同じ感覚を持つ人がいることが、こんなにも心強いとは。


そんなことを考えながら、私はようやく自分の順番が来るのを待った。レジの音がリズムよく響き、日常の中の非日常が、また一つ私の記憶に刻まれた。

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真夏のスーパーの出会い 一の八 @hanbag

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