独断と偏見の映画レビュー

星海

1.グレイテスト・ショーマン(原題:The Greatest Showman)

2018年に日本でも公開されたヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画ですね。実話が元だそうで。

個人的に洋画作品の中で今となっては断トツで一番好きな作品です。好みにもよるとは思いますが、洋楽なんかが好きな人は見て絶対に損は無いんじゃないかなと。

私は公開当時に映画館で観ましたが、終わった後は思わずスタンディングオベーションをしたくなった程です(笑)




ミュージカル映画というジャンルの特徴でもあると思うんですが、根幹のストーリー自体は大変シンプル。嚙み砕いた流れだけなら少年漫画とかでも見受けられる感じになっていますね。

幼少期に苦労していた主人公がごく普通の幸せを手に入れる→そこから何かに目覚めたかのようにある物事に夢中になる(要約するなら調子に乗ってしまう)→全てを失う→周りの仲間達に勇気づけられて再出発だ!

分かりやすく言うとディズニー映画なんかはこの手法がしょっちゅう使われている印象です。老若男女問わず誰でも分かるお話になっているというか。



ストーリーはシンプルながら、私はその他の演出がすべて完璧だったなと思っています。

音楽・ダンス・演出・美術・メイク・衣装。

キャスト陣や監督さんのインタビューなども少しですがかじってみた所、こだわりが本当にすごい。



まず、主人公であるバーナム氏が行ったのは異形人たちを集めてショー、引いてはサーカス。


成人男性のはずなのに幼児ぐらいの大きさの人。

髭が生えた巨漢の女性。

2m以上身長がある男性。

身体がくっついている文字通り一心同体の双子の兄弟。

差別に悩まされている黒人の兄妹などなど。


バーナム氏自身、幼少期は貧しい仕立て屋という家庭で育つものの、顧客先のお金持ちのお嬢様・チャリティと親しくなり、やがては小さな恋のメロディになっていきます。

それから離れ離れでありながらもずっと想い合っていた2人は結婚し、2人の女の子が生まれて些細ながらも幸せに暮らしていた。


しかしそこからバーナム氏は面白いことをやりたい!と目覚め、変わった外見の人たちを集めるに至る、と。



話の流れを文だけで書くとちょっと退屈なのでは?と思うかもしれないですね。でも安心して頂きたい。

何せ歌とダンスと演出でほぼ全部のストーリーの流れを補完してるのがこの作品なんです。

曲のシーンには一気に引き込まれるし、歌詞と映像の演出で充分どんな物語なのかがちゃんと理解できる。

個人的にはバーナム氏とチャリティさんの離れ離れながらも手紙でやり取りを続けつつ成長していく流れの演出が大好きです。お金の無いバーナム氏が郵便屋さんのバッグに手紙を忍ばせる場面とか。



また、ミュージカル映画って急に歌いだすな、という演出に違和感を覚える人が多数いるという意見を過去に見た事があるんですが、この作品では比較的その違和感もマシなんじゃないかな……と思っています。

なんというか曲それぞれイントロがしっかり入ってるんですよね。歌い手さんの歌のセリフから入る形が少ないと言いますか。とはいえ突然曲が始まる、って点では一緒なんですが。



他にも、監督さん方のインタビューで語られていた事なんですが、映画の始まりでは主演のヒュージャックマンの顔があえてちゃんとは見えないんですよ。でもそのシーンについて監督はカメラマンに対して「ビビるな。観客は影だけでもヒュー・ジャックマンだと分かるに違いない。大丈夫」と鼓舞した結果出来上がったシーンだそうで。

結構思い切った演出だなと思います。だからこそ非常にかっこよくて印象深い始まりになっているなという印象なんですが、監督さんのヒュー・ジャックマンという俳優に対する絶対的な信頼が無いと出来ない手法なんじゃないかと。

また、幼児ほどの体の大きさしかない男性(親指トム将軍という名前のみ)に至っては実際に身長が127cmと非常に小柄なサム・ハンフリー氏が演じられていますが、実際のトム将軍の身長へより近付くために膝立ちで演じきったとのこと。



また、映画って始まる前に制作スタジオや配給会社なんかのロゴが出るじゃないですか。

このグレイテスト・ショーマンではそのロゴの場面からすでに音楽が始まってるんですけど、それも思い切ったりしたのかなと個人的に感じました(笑)


そんな音楽を制作されたのはラ・ラ・ランドの楽曲も手掛けたパセク氏とポール氏。

ラ・ラ・ランドも曲が素晴らしくて印象的だったので本当に才能溢れるお二人なんだなと思います。



その他の私がすごい、と思ったこだわりポイントとして、衣装やステージの装飾などにあえて茶色を使わないように徹底したというお話。どうしても小汚い・くすんだ印象になってしまう、という事から省いたそうです。

作中では艶やかな衣装がたくさん出て来るんですが、確かに茶色がありません。影や明暗で茶色っぽく見える色はあるものの、厳密には茶色じゃないんですよね。

加えて中盤で登場するオペラの歌姫であるジェニー・リンドというキャラクター。ジェニーの歌唱シーンの白いドレスはオートクチュールだったそうで本当に驚愕でした。



あと、巨漢の女性、レティ・ルッツ役であるキアラ・セトルさんは本来曲の歌手としてだけの起用だったのにワークショップでの気迫もあり役者の方でも大抜擢。

※元は舞台女優さんだそうで日本で言うところの森公美子さんみたいな人だと思ってます。



色々と書きましたが1番ビックリしたのは主演のヒュー・ジャックマンの裏話。

撮影前に五度目の皮膚がん罹患していたため、ドクターストップもかかっていたらしいんです。80針も鼻を縫ったんだから歌ったら駄目、と言われていたものの、長年に渡って映画化の夢を願っていた作品だったことから出演を断る、という選択肢は無かったようなんですね。

命懸けながらにバーナム役を演じきったのは圧巻であり、今現在もヒュー・ジャックマンの芝居を見られている身からすると奇跡なんだなと感じます。



続編の企画も動き始めているという話もあるので気長に楽しみに待っていようと思います。

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