塩と飴
鳥尾巻
ユキちゃん
ユキちゃんと出会ったのは、バイト先のコンビニ。一緒に仕事しながら話してて同じ大学だと知ったけど、だからと言って最初は特に仲良くなるつもりはなかった。
ただ、変にこだわりの強いユキちゃんが、お客と揉めたりしてるのを見るうちに、助け舟を出さざるを得なかったというか。
小柄でショートカットで目がくりくりした小動物みたいな見た目をしているのに、やけに気が強い。いや、それも偏見だと思うけどね。メイクは目元を赤く染めた地雷系だし、服も髪色も派手だ。
本人曰く自分が好きな格好をしたいし、男ウケは狙ってないということだった。見た目が幼いのでナメられたくないとも言ってたかな。
我が道を行くというか、なんというか。クールぶって何事にも淡白な僕からしたら、自分のこだわりを持ってるユキちゃんはすごいと思う。本人に言ったら「そうでしょ?」って得意げに言いそうだからやめておく。
「初対面なのに敬語使わない奴ってなんなのよ! 失礼千万!」と、歯をギリギリしてるユキちゃんに「そうだねえ」って適当に相槌打ったりね。そんなのほっとけばいいと思うんだよ。お客様は神様とは思わないけど、受け流しておけば給料は自動的に入ってくるんだから、お札かなんかだと思っておけばいい。
そうして僕は若干引き気味に接していたはずなのに、いつの間にかユキちゃんのペースだ。気が向いた時に愚痴を聞いたり、大学で会ったり、休みが合った時に遊びに行ったりしてるうちに、ユキちゃんから告白されて付き合うことになっていた。
なんで僕が良かったのかって聞いたら、「キヨくんはあたしがウザ絡みしてもテキトーに流してくれるから」って、よく分からない理由だった。
あと、顔が好みなんだって。身長はさすがにユキちゃんよりは高いけど平均より少し上程度だし、友達とか親には「何考えてるか分からない薄い顔」って言われるんだけど。
ユキちゃんはほんと物好きだよな。
今日もバイト帰りにうちに来て、疲れた疲れたって言いながら、ゲームをしてる僕のベッドに乗ってこようとする。とりあえず手洗いうがいして靴下は脱いでもらっていいかな。シャワーも浴びてくるといいよ。
いつの間にか洗面所や僕の部屋にはユキちゃんの物が溢れている。珍しくごねずに僕の言う通りにしたユキちゃんは、置いてあった部屋着を着てベッドにダイブする。メイクを落とした彼女は幼く見えるから、なんとなく背徳的な感じがしなくもない。
僕を抱き枕にするのはちょっとやめて欲しいけど、ご飯を食べる元気もないのは可哀相。僕はマスカラも付けまつげもついてない白い目尻に軽いキスをして、ユキちゃんの気が済むまで抱きつかせておいた。
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