孤独の山小屋
138億年から来た人間
第1話 山小屋
人は、死を意識する時、必ず自らの本能から、自分の過去を語るものだ。
此処は、群馬県と新潟県の境にある谷川岳に令和6年に出来たばかりの山小屋『
俺はこの山小屋で群馬県の依頼を受けて主として働いている
谷川岳は百名山の一つ三国山脈にある山だ。
トマの耳、オキの耳という二つの峰があり遭難者は世界でも有名なほど多い。
天神尾根から登山してくれれば安全なのだが、人間ってやつは、人と同じことを嫌がる生き物だ。
一ノ倉沢などからわざわざ岩壁を登ってきて遭難死している。
最近顕著にロッククライマーの遭難が目立っている。
人間の楽しみは計り知れないほど多いが、命と引き換えの楽しみなんてものは、喜びにならねぇことぐらい分かってもらいたいものだ。
この話は、文殊の荘で起こる様々な事件、事故を俺事、米茱萸が書いた日記をもとに綴るドラマだ・・・。
令和6年1月1日
晴れ
気温零下5度。
年初め、仕事始めと立て続けに初っ端が続くと心配なのは事故、手違いだ。
山小屋歴40年だが、初めての場所だと思えば素人並みに細心の注意を怠れねぇ。
特にここは、遭難者の数が群を抜いて多い。
正月早々死亡事故など縁起でもねぇことにならぬよう注意が必要だ。
山道の整備と山小屋の雪かきに追われる。
半端ねぇ雪の量だ。
食料の確保は出来てるが、薪の量が若干心配だ。
無線によると今日は豪雪注意報は回避された。
今日は登山客が少ないせいか監視できそうだ。
緊急事態発生。
高尾根から一人の登山客が滑落したと連絡あり。
すぐに現場に向かい、救助ヘリで救出作業の手伝いをした。
命は無事だが、両足骨折で長期入院のようだ。
趣味で登山をして、怪我して生活に支障が出るなど本末転倒。
しかも、登山靴の底が割れていることに気付いていて、それを履いたままこの山に来たらしい。
申し訳ねぇが自業自得だろう。
二度と甘い考えで登山することは辞めてもらいてぇ。
いい迷惑だ。
その後は何もなし。
この日記を書き終えたら、かみさんが作ってくれたおせち弁当とお神酒でゆっくりやろう。
今日の泊りは男3人、女二人の計五人だった。
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