森 その1 これは事故よ!

 俺たちは仲間たちとハイキングにきていた。


 ペペロンチーノ自然歩道。


 田舎町によって、ホテルをとって、朝から自然歩道に入ったわけだ。


 大自然にみんな楽しんでいたが、とある問題点が起きた。


 ベルシュタインが、要塞があるから、別のルートを行こうと言い始めたのだ。


 田舎町の宿屋のおばさんから、ルートを外れるなと忠告を受けたが、ちょっと行くだけだとみんな賛同した。


 4時間歩いたところで、道に迷ったことに気づき、そして事件が起きた……。




美雪「どないしようおおおおおおおおっ!!!!」




門平「うっるせい! 急に叫ぶなよ!」


美雪「今のみんなの気持ちを代弁してやったんでしょ!」


 逆ギレする美雪に、俺はリュックをせおい直す。




ベルシュタイン「これは……事件ですわ」



 ベルシュタインの足下には、突然転がってきた、大木によって、顔の半分がつぶれた死体があった。


 後ろの木と、転がってきた大木に顔がはさまった形になる。

 

 変な仮面をつけてるが、男だ。


 犯人はわかっている。


萌美「う~ん。この人どうしちゃったの?」


 萌美が口に指を当てる。


 犯人はこの子だ。


 魔法の力で、大木を転がしてみたら、運悪く人が下にいた。


 道に迷って暇だったんだ。


 登山しながら、萌美の魔法に笑っていた俺たちも、悲鳴が聞こえてきて青ざめた。


門平「……死んでるよな? この人?」


萌美「死んでるって何?」


 幼い萌美は人の死が理解できないのか、首をかしげている。


門平「とにかく手当てを……」


ベルシュタイン「待ちなさい」(門平の手をつかむ)


門平「あっ……もう手遅れか」




ベルシュタイン「指紋がついたら、どうするの」




門平「はっはい?」


ベルシュタイン「誰!?」


 ベルシュタインが山の斜面に振り向いたが、誰もいない。


門平「脅かさないでくださいよ」


美雪「そうよ。人がいたら、通報されるまえにやらなきゃならないでしょ?」


 美雪が冷静に怖いことを言う。


ベルシュタイン「これは事故よ。しかたなかったの」


萌美「えっ? 違うよ? 萌美が魔法で大木を転がして、この人を殺した……」




ベルシュタイン「萌美ちゃん! もういいの。忘れましょ」




萌美「はぁい」


 萌美ちゃんはかわいらしく手を上げて、首をかしげた。


 そのあと死体は放置し、俺たちは町へ帰ろうとしたが、夜になって雨が降ってきた。




美雪「遭難してるんじゃないの!?」




 美雪が先頭を歩く、ベルシュタインに言葉をぶつける。


ベルシュタイン「えっ? あっ、ごめんなさい。頭が真っ白になって」


門平「しかたないですよ。あんな後じゃ……」


ベルシュタイン「今日の晩ご飯の献立を考えてたの」


門平「お母さん!? 下山のルート考えてたんじゃないんですか!?」


萌美「ねむぅい」


 ぼけてしまったベルシュタインのせいで、遭難が確定した。


 あきらめて、テントをはり、今日はここで寝ることにした。


 朝になり、テントからでて驚いた。


 墓だ。


 たくさんのお墓があって、俺たちはここで寝ていたのだ。


ベルシュタイン「『GORIRA』?」


 ベルシュタインがお墓にかかれた文字を読んだが、それ以上はわからなかった。


 下山しようとすると、美雪がいなくなっていた。


 トイレにでも行ったのだろうと思ったけど、一向に帰ってこない。


 俺と萌美、ベルシュタインさんは美雪を探すため、山の中で声を上げた。


萌美「あっ? 何かの小屋があるよ」


 萌美が何かの小屋を見つけた。


 俺たちが入ってみると、小屋の中には、いろいろな道具がった。


 鎌、槍、剣、携帯、有刺鉄線……。


ベルシュタイン「あの町の連中の物だわ」


門平「なんでこんな物を?」


ベルシュタイン「知りませんわよ。あの連中はおかしいですわ。早く帰りたい……!!」


 人の気配がした。


 俺たちが小屋の窓から外を見ると、山道を2人の男が歩いていた。


 変な仮面をつけて、おかしな衣装を身につけている。


 2人は大木を持っていて、動物が両手、両足を縛られ、縄でつるされていた。




ベルシュタイン「あれ、美雪さんじゃなくって!?」




 麻袋を頭からかぶされているが、服装から美雪のものだとわかった。


 殺された動物のように静かだ。


 俺たちは同時に喉を鳴らした。




ベルシュタイン「ちょっと!! あなたたち!! 待ちなさい!!」




 正義感の強いベルシュタインさんが、2人の男のところに向かう。


 俺は一応剣を持ってついていった。


男「※○→△」


 男は訳のわからない言語で、何かを言っている。


ベルシュタイン「その女性は私たちの仲間でしてよ! 今すぐ下ろして! まさか……殺したの!?」


男「▲■◇※」


 青ざめるベルシュタインに、男たちは動かない美雪を下ろした、身振り手振りで何かを伝えようとしている。




萌美「ちゃあ!」


男「ぶぼっ!?」


門平「へっ?」


ベルシュタイン「えっ?」




 男がいきなり爆発し、肉片が森の中を飛び散った。


 べちゃっと、俺とベルシュタインさんの顔に血がつく。


ベルシュタイン「もっ萌美ちゃん!? いったい何をして……」




萌美「この人、美雪お姉ちゃんを殺したんだよね? 破壊しなきゃ!」




 萌美はかわいらしく、残酷なことを言う。


 破壊魔法を使ったのか。


 妖精さん、やりすぎっ!


門平「……はっ!? もう1人の男がいなくなってますよ!?」


 俺は消えた男を探したが、森がざわめくだけだ。


 地面に下ろされた美雪がびくっと震えた。


門平「美雪さん?」




美雪「ぐごおおおおおおおおっ! ぶしゅるるるるるるるるるるるうっ!」




門平「寝てたのっ!?」


 美雪は殺されていたのではなく、寝てただけだった。


 つるされたのに寝てるって、どんだけ爆睡してるんだよ!


 夜更かししたのかな?


門平「ベルシュタインさん、これって、無実な人を殺した……」


ベルシュタイン「事故よ!!」(くわっ!)


門平「うわっ!?」(ベルシュタインに肩を強くにぎられる)




ベルシュタイン「門平さん! これは事故なのよ! いいこと! 今すぐ忘れるの! アンダースターンド!!」




門平「あっはい。イエス」


萌美「え~。でも、萌美が破壊して……」




ベルシュタイン「萌美ちゃん! これは事故なの! あなたは魔法を使わなかった! いいことっ!!」




萌美「はぁい」


 すごい剣幕のベルシュタインママに、しぶしぶ萌美は従うしかなかった。

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