頑張り屋な後輩ちゃんは世界で一番美味しいオムライスを作りたいらしい
錠
第1話 近所のスーパーにて
(場所は近所のスーパー。ガヤガヤと買い物客で賑わう音。裏では軽快なBGMが鳴っている)
「────セ~ン~パ~イ~~っ!」
(遠くから元気な後輩の声)
(こちらに走って来る、軽やかな靴音)
(声がフェードイン)
「センパイセンパイセンパ~イ!!」
「こんばんは、ですっ! 歩いてたらセンパイの後ろ姿が見えたので声かけちゃいました!」
「はいっ、お夕飯のお買い物です! 卵に玉ねぎ、ケチャップに鶏のもも肉……何を作るか分かります?」
「大正解! そうです、オムライスです!」
「センパイは何を買いに? カゴにはまだ何も入っていないみたいですが」
「あ~、メニューが決まってなくて歩きながら悩み中……なるほどです。センパイが一人暮らしなのは前から知ってましたけど、ちゃんと自炊とかしてるんですね。なんか意外かも……」
「え、そんなに意外か……です? う~ん……そうですね、センパイってちょっとだらしないところありますから。私てっきり、カップ麺とかコンビニ弁当ばかりの不健康生活を送っていると思っていました」
「あはは、そう不貞腐れないでくださいよ! 立派ですって!」
「自炊くらい別に当たり前……そんなことないですよ? ほらっ、メニュー決めて、ご飯作って、後片付けして~って、それを毎日続けるのは大変なんですから」
(あなたは、たまには彼女に作ってもらいたいとぼやく)
(虚を突かれたような、間の抜けた声で)
「……へっ? セ、センパイ今なんて…………たまには彼女に作ってもらいたいって、言いました?」
(あなたが頷くと、後輩ちゃんは動揺から足元を乱す)
「んなっ……セ、センパイって彼女いたんですかっ!? 私聞いてないですよ! いつから付き合ってたんですか!」
(しょぼんとして、声量が小さくなる)
「と、というかその前に……好きな人……いたんですか」
(あなたは誤解だと話す)
「誤解……?」
(後輩ちゃんに説明する)
「な、なんだ……彼女がいたらって、仮定の話ですか……」
(ぼそっと小声で)
(ホッとしたように)
「もう……センパイってば、紛らわしいんですから……」
「……いえいえ、なんでもありません!」
(ふぅーっと息を吐く)
(声のトーンが上がる)
「よくよく考えてみると、センパイの周りって女の子の気配皆無なんですよね。私くらいじゃないですかっ? センパイと仲の良い女の子なんて。レアですよ、レア。もっと大切にしないといけないと思うんです」
「えぇ、まだ本気出してないだけって……」
(呆れた声で)
「はぁ……なんだか、センパイにちゃんと彼女ができるのか後輩として心配になってきました。言っておきますけど、美味しい料理を作れる女の子なんてそう簡単には捕まえられませんからね」
(小声で)
「でも、そっか……センパイの彼女になるためには……やっぱり……」
「いえ、何も! それじゃあセンパイ、私はまだ買うものがあるので。自炊、大変だと思いますが頑張ってください♪」
(後輩ちゃんが二歩後ろに下がる。ゆっくりと、名残惜しそうなタッチの靴音)
「さよなら、です!」
(あなたが店内を歩く靴音)
(しばらくしてすぐに後輩ちゃんが足早に追いかけてきて、あなたの服の裾をガバッと勢いよく掴む)
(靴音のフェードイン)
「セ、センパイ!」
「あ……ははは」
「え、えっとですね」
(少しの溜めがあってから、思い切ったように話を切り出す)
「あ……あああのっ! ……さ……さっき言ってましたよね、まだお夕飯のメニューが決まってなくて悩んでるって」
(照れ気味に)
「も、もしよければ、よければの話なんですけど…………」
(後輩ちゃんが大きく息を吸い込む)
(とびっきり大きな声で、しどろもどろに)
「つ、つつつ付き合ってくれませんかぁ!? 私の特訓にっっ!!」
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