記憶のカケラ

彼はアルバムをめくりながら、あることに気づいた。


幼少期の夏の思い出が、まるでパズルの一片が欠けているように、途切れているのだ。


海で遊んだ記憶、花火を見た記憶、それらは鮮明なのに、母親と手を繋いで砂浜を歩いたはずの記憶が、まるで白紙のように何もなかった。


ある日、古いビデオテープを発見した。

それは、彼が幼い頃の記録だった。


映像は途切れ途切れで、ノイズが混じっていたが、あるシーンで彼はハッとした。


ビデオの中の彼は、母親の手を振り払い、一人で砂浜を走っていた。


そして、その直後、映像は途絶えていた。

彼は、リモコンを握りしめ、再生ボタンを何度も押したが、映像は、その瞬間で永遠に止まったままだった。



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