やれば出来るじゃありませんの。

マジかよー。


悪くても犠牲フライに出来るようなボールに見えた真ん中高め。真上に上がったキャッチャーフライですから、タイミングは良かったですけれど、ボールの下を叩いてしまいましたねえ。


153キロと今日最速のボールを打ち返すことは出来なかった。



2アウトになり、芳川君が打席に入る。先ほどは打点が付いたものの、ちょっともったいない感じのサードゴロでしたから、ここは気持ちの良いバッティングを期待したいところである。


初球は1打席目に手を出した外のスライダーであった。またそれにバットが出そうになったが、寸でのところでなんとか止める。


2球目はストレート。アウトコース高め。これもバットが反応したが、高いと判断してストップ。キャッチャーは1塁審判にリクエストしたが、腕は横に広がった。


3球目。



「カウント2ボールです。この局面でしっかり狙い球を絞っていけますかどうか」


「狙っていって欲しいですね。速いボールに力負けしないように」


「セットポジションから添田。………投げました!ストレートだ!打ちました!右中間方向!ライトの左、飛び付く!………抜けたっ、抜けましたー!!


ワンバウンドでフェンスに達する!ランナーはもちろん2人還って来ます!打った芳川も2塁へ!スタンディングダブルが貴重な2点タイムリーになりました!ビクトリーズ勝ち越し3ー1!芳川が添田を打ちました!今日これで3打点!」


ベンチ前でキャッチボールをしていた碧山君が両腕を挙げて大いに喜んだ。




試合は進み、8回。1アウトランナー1塁で俺に打席が回る。


ベンチからのサインは特になかったが、1塁ランナーのナミッキーがスタートを切っていたようだった。


俺が低めにきたストレートを打つと、2塁ベースに入ろうとしたショート龍地の逆を突く格好になった。


グラブを弾いた打球が弱々しくレフト前に転がる。ナミッキーは一気に3塁へ。俺は1塁を大きく回ったところでストップした。



「ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします。ファーストランナー、新井に代わりまして、鳥福」


俺はここでお役御免。



ソエソエに対して、今日は内野ゴロ3つ。最後のも、本来ならショート正面のダブルプレーコースであったが、ラッキーなヒットを1本もらった形になった。



そして1、3塁となって、バッターロマーノ。代走のランナーが気になったのか、ソエソエの初球が引っ掛かり、ロマーノの足元へ。


キャッチャーが腕を伸ばして捕球すると、ロマーノはすぐさま膝の辺りのズボンを指で引っ張るようにしてアピールした。


この打席でしくったら4タコさんですから。3番抜擢でそれだけはなんとしても防がないといけませんから、彼は必死であった。



そんな必死さのあるアピールが無事に伝わったようで、球審はデッドボールのコールをしたのだった。




「1アウト満塁となりまして4番の芳川です。今日は添田から右中間突破の2点タイムリーがありました。ドラゴンス守備陣は1度マウンドに集まります」


「添田もテンポ良く来ましたが110球を超えてきましたからね。なんとかこの場面まで凌ぎたいということでしょう。エースですからね」


「ピッチングコーチがベンチに戻り、内野陣も散りました。そのエースと4番の今日4度目の対決です。1アウト満塁。初球………ど真ん中!空振り!151キロ!まだ力のあるボールが来ます!!」



ソエソエの投げたボールがベルトの高さに来て、それを芳川君が強振したけど空振りになった瞬間、一瞬満塁ホームランまで見てしまったベンチ一同はひっくり返るようになりながら残念がりました。



1番悔しいのはもちろん本人であり、まだど真ん中で空振りが取れるストレートを投げれるのかと、ドラゴンスの背番号18のエースに凄みを感じる中、2球目のストレートはインサイドにきっちり来た。



さっきよりのさらに力の入ったスイングで迎え打つ芳川君。





バキッ!!



折れたバットからフラフラッと上がった打球。ショートが下がり腕を伸ばす、前進してきたレフトが足から滑り込む。



その真ん中に落ちた。





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