「う、わ。なにそのクマ! 空、もしかしてオールした?」

 

 翌日。

 昇降口にて、同じく登校してきたマリエと鉢合わせた私は、昨日、夜中まで橋坂くんと通話したことを話した。


「ふーむ。仲が深まりつつありますな。でもいいの? 空はこのままで」

「えっ?」

「ラブレター、ホントは先輩に渡すはずだったのに、誤解されたままでいいの?」

「それなんだよねー……どうしようか、まだ迷ってるんだ」


「先輩、って……?」


 ──橋坂くん。

 やだ。うそ。聞かれた──⁉


 彼は、私たちの横を、スッと通り過ぎて。

 そしてそのまま、教室に入っても、私の顔を見ようとはしなかった。


 ──これは罰なのかもしれない。


 真剣に自分を好きになってくれた人の気持ちを軽んじたりして、自分だけの都合で、お付き合いを延ばそうとしたから。


 私は死んじゃうのに。


 橋坂くんがどれだけ私を好きになってくれようが、私は結局、いなくなってしまう存在なのに。


 なにが、まだ迷ってるんだ、なのよ。

 なにが、誤解されたまま、なの。


 私は、昨日の夜の通話だけで、こんなにも橋坂くんのことが好きになっていたのに。

 そんな大事な自分の気持ちに、気づきもしないで!


 鼻がツン、として、じわり、と目に涙が浮かぶ。


 さっきの、橋坂くんの驚いたような表情かおが、脳裏に焼きついて離れない。


 きっと、軽い気持ちで恋愛する子だと思われて、失望させてしまった。


 私のことを、綺麗な心でずっと一途に想い続けてくれていたであろう橋坂くんを、傷付けてしまった。


 ごめん、ごめん、ごめんなさい。橋坂くん……。

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