応援コメント

第36話 あらすじ」への応援コメント

  •  企画主催者です。このたびは「私が読んで、サンプル1の感想を書くだけの企画2(条件つき)」への参加、ありがとうございました。また、最終的な感想(本コメント)の投稿が、大変遅くなったことをお詫び申し上げます (*´・人・*)ゴメンナサイ
     1回目のコメントから間隔がだいぶ空いてしまったため、この感想を書くにあたっては御作を読み直し、短時間での通読を終えています。したがいまして、御作に対する理解度は、一般的な読者と大差ない状態を、維持できたと自負しています。

     以下に「全体を通しての印象」、「私が思う御作の欠点」、「総評」、「その他の雑感」の順で列記しました。



    ①、全体を通しての印象
     第一幕の後宮女人失踪事件だけを取り出して見たならば、コメディ要素が多めのハートフル作品という評価で、相違ないかと思います。
     しかしながら、これを受けて綴られる第二幕については、一部にコミカルな部分が見られるものの、その語り口はシリアスのそれであり、また、これは御作全体にも通じることですが、悪役として登場するキャラクター(桃/風/黄呂)の動機が、決してお馬鹿なものではないため、最終的にはややシリアスな傾向にあると感じられました。以前の11段階評価で表すならば、6~7あたりが全体に対する印象です。

     御作からは和の風を感じられる一方、ミステリーの雰囲気については弱いです。こちらついては、以前にノエルアリさんご本人からも、その旨を伝えていただきましたので、作者/読者ともに同様の評価をしているという形になるかと思います。ただし、御作にあっては、ミステリーの雰囲気を感じられないことは、必ずしも欠点にはあたらないと考えます(後述の③)。もちろん、御作がミステリーを志向していたのであれば、失敗という評価は免れないでしょう。

     キャラクターが主体の物語になっていたかどうかに関しては、②に譲ります。



    ②私が思う御作の欠点
     御作の問題点は、登場人物が多すぎることです。
     本書を『ヘイアン公達の月交換視察』の番外編と割り切り、ファンザービスを志向したものとするならば、たとえ出番が僅かであったとしても、メインキャラクターは大いに出すべきだと私も主張します。本書にはなんら欠点が見受けられません。

     しかし、そうではなく、単体としても十分に楽しめる作品として仕上げたつもりであるならば、キャラクターの数は減らすに越したことがありません。そして、ノエルアリさんご自身も、本書が単体で十分に完成していると、お考えになったからこそ、文学賞に応募したのだと思います。
     登場人物が多いと、読者はこれを把握することに力を使うため、ストーリーを楽んでいるだけの余裕がありません。念のために言えば、これはストーリーの是非を問うものではありません(後述の③)。同様の理由で、後半までほとんど登場しない幼名などの固有名詞を、一息に書いてしまったことは悪手であると考えます。作中用語にあたるものは、言うなれば作者と読者の間でのみ通じる「暗号」にあたるため、このような暗号が少なければ少ないほど、多くの読者にとって分かりやすい物語となることは、きっとノエルアリさんも同意してくださることでしょう。そして、分かりやすければ分かりやすいほど、読者は物語の世界に没入したり、あるいは、登場人物に感情移入したりできるようになるはずです。

     これに関連して、ノエルアリさんはご自身の文体について、その賛否を案じておられましたが、私の読む限りでは、地の文にくどさや過度な堅苦しさ等は、見受けられませんでした。もとより、ジャンルに時代小説と重なる領域が存在するため、どこまでフランクな文体にできるのかについては、難しい部分もあるでしょう(後述の③)。

     一方で、登場人物のほうにも、古風な言い回しによるキャラ付けが行われていますので、地の文から受ける印象以上に、本書が読者を選んでしまう作品であることは、間違いありません。

     御作は、良く言えばオーソドックスで馴染みのある世界観(悪く言えば、平安時代をベースにしたひねりのない舞台設定)であるため、キャラ小説としての傾向を強めるべく、メインキャラクターについては、現在のものよりも一回りオーバーな性格にしてしまっても、良かったのではないかと考えます。例えば、瑞獣のうち、麒麟については読者に近い存在として、今の状態を維持し、残りのメンバーは満仲と同程度まで極端な性格/言動の持ち主にしてしまうという具合です。他作家様の作品に対して、個人的な提案をするのはいかがなものかと思いますが、企画の趣旨に照らして、私の思いつきも下に記します。

    ・水影:現在のような知的でクールな面を残しつつも、〈ゆう〉のことになると、IQが3くらいにまで低下し、ひたすら主上との会話や主上との思い出で、どうにか乗り切ろうとする。結果、ますます〈ゆう〉は嫉妬してしまうなど。
    ・安孫:筋肉を伸びしろと考え、女官にまで筋トレの布教をする脳みそ筋肉。
    ・朱鷺:帝としての力が弱く、自発的な行動を取りにくい状態にあるのですから、大人しく黒子に徹しましょう(要するに、この番外編ではモブキャラの扱いにします)。

     上記の例は、瑞獣の両者がお馬鹿になりすぎるという点を無視しても、実際のところ、変更点はどうでもよく、私の主張は「現行の瑞獣たちでは、読者の中で差別化されることなく埋もれてしまう」という点にあります。
    『ヘイアン公達の月交換視察』の本編を読んでいる読者はともかく、初見の読者からすれば、御作全体を通して安孫の出番は少なく、また、麒麟と朱鷺は作中での役割がほぼ同じであり、満仲だけが飛び抜けてキャラ立ちしているという状態であることは否めません。キャラクターの数を絞るか、そうでないなら、性格/言動を大げさにすることで、一見して差が分かるような状態にしたほうが、望ましかったことでしょう。



    ③総評
     ストーリーは複雑ではなく、明瞭でした。
     舞台設定が煩雑ではないものの、こまごまとした小道具にあたるものが多いため、難解な物語にしなかったことは、非常に賢明な判断だと思います。この意味で、結果的にミステリーの雰囲気を、薄くしか感じられなかったことは、御作にあっては良い方向に働いているかと思います。

     読者が話を理解しやすくなるよう、本文にルビを振ったり、随所で現代語による解説を試みたりするなど、作者としてのノエルアリさんの工夫は、一読者としてはっきりと伝わって来ました。
     また、〈ゆう〉と水影、朔良式部と朱鷺の恋愛を控えめにしか描かなかった点も、男同士の友情をプッシュする作品として、素晴らしい選択だったと思います。

     一方で、キャラクターの心情を深掘りしないというスタンスが、本書のストーリーからドラマ性を大幅に失わせてしまったことは、間違いありません。これは登場人物が多いため、1人ひとりの内面に入ってまで、心情を描くことができなかったことが原因でしょう。

     御作は複雑な心理戦や、高度な頭脳戦で読者を知的に楽しませようとするものではありません。感情の変化によって魅せるものです。このような物語において、キャラクターの心情は前振りにあたります。

     愛の告白の場面を想像してみてください。
     どれだけキャラクターが、その相手のことを慕っているのか。そういったエピソードがあって初めて、読者である我々は告白の成功/失敗に感情移入することができ、余韻に浸ることができるのです。単に告白の結果だけを書いたところで、「その前にあなたはどちら様?」と冷めた気持ちになるだけでしょう。小説の楽しさはここにあります(少なくとも私の考えでは)。

     本書には、この前振りが欠けており、そして、人物の多さという構造上のネックが、それを不可能にしています。これはストーリーの是非ではありません。演出の問題です。裏を返せば、すでに御作は演出について思いを馳せるような、一段上のレベルにあると私は考えます。

     瑞獣4人の登場にこだわるのであれば、いっそ桃による窃盗を、読者に瑞獣たちを紹介するためのエピソードと割り切り、ストーリーの順番を「桃による窃盗⇒連続失踪だと発覚⇒後宮に潜入」という流れにするのもいいでしょう。こういった演出部分については、作者であるノエルアリさんが一番、「どこを読者に見せたいのか」を理解されているはずです。そこに読者の感情がピークになるよう、キャラクターの内面を掘り下げていく。これが次にノエルアリさんの目指す場所になると、私は信じています。



    ④その他の雑感
     以上で自主企画の内容は終了ですが、文脈の都合上、上述の感想に含めることができなかったものたちを、この場に記します。順不同ですが、平にご容赦を ヾ(_ _。)


    1、黄呂の動機
     黄呂が、安孫を偽物にした理由は、引っ張るほどのものだとは思えませんでした。麒麟たちがなんとなく分かっていたという部分で、理由についても示したほうが、「朱鷺による黄呂の評価⇒満足して改心する」という流れに持っていきやすいでしょう。現状では、黄呂がどうして急に改心してしまったのか、釈然としません。自分が生きているか死んでいるかが、黄呂にとってそんなに重要なことだったのでしょうか?


    2、水影と神仏
     水影は神仏の不在を確信しているようです。これは多くの読者にも通じる現代的な感性で、読者の共感を得やすい価値観だと思います。しかし、水影と読者では、その認識に決定的な違いも存在しています。とりもなおさず、読者にとっては、式神や陰陽道もファンタジーの産物である点です。

     御作の世界観にあっては、式神や陰陽道は自明です。神仏を不在とする水影が、これらの存在をどのように認識しているのかについて、私は気になりました。

     もう少し意地悪な見方をするのであれば、神のいない世界で帝の権威をどのように保証しているのか、あるいは水影だけが無神論者なのかといった部分にも疑問を抱きますが、ここまでいくと、さすがに本書のメインターゲットである10代の読者が、これらを疑問視することはないでしょう。ちなみに、私がノエルアリさんだったら気にしません。本書のテーマは、そこにはないからです。
     ただし、朱鷺のカリスマ性については、作中で表現されていなかったように感じられます(私の目には水影のほうが優秀に映ります)ので、瑞獣たちが朱鷺を慕う理由やきっかけとなった出来事ついて、もう少し描写されていても良かったかなと思います。


    3、風と麒麟
     風が鬼の大将である酒吞童子に殺されそうになるシーンは、いきなりの展開で迫力がありました。
     一方で、読者としては、風と麒麟にまだ大きな愛着を持っていない状態でしたので、潜入任務とは関係のない場面で、友情を育むような小エピソードがあったほうが、効果的だったかなと思います。

     また、これに関連して、鬼であることを明かした風に対する麒麟の説得が、両者の友情に訴えかけるものではなく、朱鷺のカリスマ性を主張するものであった点には、賛同できません。読者が朱鷺のカリスマ性を理解していないという点を抜きにしても、もっと素直に感情的であって良かったでしょう。このほうが、「鬼も人も等しく民である」という驚愕の発想を、朱鷺の口から読者にダイレクトに伝えられたと思います。麒麟は情で、朱鷺は発想で風を口説くという構造です。


    4、偽物の正体
     満仲が問答無用で疑われたのには、くすりとさせられました。


    5、全体を通して描きたかったこと
     御作全体を通して描きたかったのは、いったいなんだったのかなという不完全燃焼感があります。
     前半の後宮女人失踪事件だけでも、「鬼の掟と人の世」くらいにまで話を発展させるならば、1つの作品になりそうです。黄呂の話がメインなのであれば、やや第一幕が長すぎでしょうか。それぞれのストーリーを小規模化し、水影・満仲だけでなく、瑞獣たち4人それぞれにフォーカスした、短編集みたいな形でも良かったんじゃないかなと思います(ストーリーが変わってしまうため、必ずしも良いわけではありません)。


    6、偽物の安孫を見抜くトリック
     口癖から偽物を見抜くトリックは、これまでの会話が活かされた素晴らしいものでした。
     一方で、安孫の武術や武家としての思想まで模倣することができた偽物(あるいは黄呂)が、どうしてこの部分だけをコピーすることができなかったのかという理由について、いくらかの補足が欲しかったです。ジャンルとしてのミステリーを目指さないのであれば、要らないかもしれません……。


    7、一益と死者蘇生(黄呂と偽世)
     今は亡き朔良式部を、黄呂が生き返らせてみせるという提案をしたとき、朱鷺は「そのようなことを望んではいない」として、この提案を退けます。言うなれば、御作は死者蘇生の是非を、朱鷺個人の問題に還元することで、善悪としての明言を回避したのです。
     しかしながら、偽世とは何かという場面では、一転して一益が「死者蘇生は人に許される行いではない」と、これを拒絶しています。これは文脈からしても、偽世を破壊した場面における一益の台詞からしても、一益個人が死者蘇生を嫌っているのではなく、社会として死者蘇生は許されないと断じる強いものです。

     しかしながら、これを支える根拠は「それが禁忌である」という弁舌だけで、どのようなために禁忌となっているのかを、説明するものではありません。
     偽世を作った本人の黄呂ならば、ある意味では偽世は黄呂個人のものなので、「悔いているので壊す」という行動に不自然さはありません。しかしながら、これがライトノベルではなく、ライト文芸であるならば、作者としての「死者蘇生を悪と断じる理由」を、一益の口から語ってもらいたかったなというのが、正直な感想です。念のために言えば、これは高尚な理由を求めているわけではありません。結果的に、東雲家をぼこぼこにすることになった大義を「それは悪である」という一言で片づけてしまってもいいのか、という意味合いです。


    8、安孫をもっと心配してあげよう
     安孫が偽物に入れ替わったことを、瑞獣たちは、その絆から察しています。しかしながら、これを朱鷺に伝えることは「面白くない」として退けます。
     読者にとって面白くないという意味ならば、そのとおりでしょうが、現に安孫が偽物と入れ替わっていることは、瑞獣たちにとっては確定している事実なわけですから、もっと心配していないと不自然です(満仲がどれだけ天才であろうと、相手も陰陽大家という実力が保証された人物です。油断はできません)。
     したがって、瑞獣たちが朱鷺に真相を伝えない理由は「面白くないから」という安孫の安否に関係しないものよりも、「自分たち瑞獣から真相を知ったために、朱鷺が偽物を見破れたという状態にしてしまうと、事の経緯を安孫に知られたとき、安孫本人が朱鷺に認められていないのかと悲しむかもしれない。これを危惧した(安孫の名誉を守りたかった)」など、安孫を慮ってのもののほうがベターでしょう。「面白くない」という理由は結果論、安孫が無事に戻って来るという物語の結末が見えている、作者だからこその意見だろうという印象が拭えません。


    9、念のための確認
    ・第13話 急転より
    >>〔前略〕真相解明にも繋がるのではない”と”かと思うてな」
     この部分に”と”を入れているのは、意図したものですか?



     此度の企画が、ノエルアリさんにとって少しでも有意義なものであったらば、これに勝る喜びはありません! (o*。_。)oペコッ
     私の理解力不足による誤り等が多々あると思いますので、何かありましたら返信等でお知らせください。

    作者からの返信

    お返事が遅くなり、大変申し訳ございません💦

    イベントに参加させていただき、そしてまた最初から読んでいただいたこと、感謝の言葉が尽きません。

    本当に大変だったと思いますし、様々なアイディアをいただいたこと、本当にありがとうございます。

    この物語は、一章と二章で毛色が違っているので、仰られる通り、コメディからのミステリなのですが、ミステリというには確かに足りないものがありますね。

    そして、キャラクターが多すぎるのも、私の課題としてそのとおりだなと。

    9はミスですね💦お恥ずかしい。ご指摘、ありがとうございます。

    有意義も有意義。この物語は本編へと続くものなので、こちらでいただいたアイディアやご提案など、隈無くそのまま活かしていきたいと思っております。

    ここまでの分量でいただいたご感想、一生の宝物にいたしますね!本当にありがとうございました!!