ボタンの勇気ある選択

@d_kokucho

ボタンの勇気ある選択

昔々、ある家のリモコンには、何度も押されすり切れたボタンがありました。このボタンは、毎日押されることに疲れ、自分の意志で何かを選びたいという強い願いを持っていました。

「毎日毎日押されて、もう、いやになっちゃうよ」とボタンは、自由を求めて旅に出ることを夢見ていました。


ある日、その家の子供がリモコンを使おうとしました。ですが、いつも使っているリモコンとどこか違う気がします。擦り切れたボタンを見つめ「あれ?こんなボタンだったかな」と首をかしげました。

気にせず子供はボタンを押そうとしましたが、今度はなぜかボタンを押すことができません。

「あれれ?」もう一度押そうとしてよく見ると、彼の指が押し間違えたのではありません。明らかにボタンが動いているのです。彼は驚きのあまり声をあげました。

彼は焦り何度も押そうとしましたが、華麗に逃げるばかりです。そのうちボタンはリモコンの裏側まで逃げたり、時折ジャンプまでして、とうとう彼の前からぽんっと逃げ出してしまいました。


外に逃げ出し自由になったボタンを待ち受けていたのは、ボタンレンジャーというボタンの姿をしたヒーローたちでした。ボタンレンジャーは「一緒に世界の平和を守ろう」と彼を勧誘します。しかし、そこに現れたスマホマンが「消える運命にあるお前たちみたいなのが世界を守れるわけがない。俺に任せておけ」と煽ります。

ボタンは「お前の頭にだってボタンはついてるだろ、なかったら困るだろ」と言い返し、スマホマンを撃退しました。


ボタンレンジャーの仲間になる前に、ボタンは「忘れ物をした」と言って家に戻ることにしました。案の定、家でアニメが見られないと泣いている子供を見つけます。

「やはりな、泣いている子一人助けられないで、世界を救うはないわな」とボタンは思い、リモコンに戻ることを決意しました。

ボタンはリモコンに戻り、子供は再びアニメを楽しむことができました。


ボタンは、自分の役割を果たすことの大切さを感じながら、今日もリモコンの中で静かに押される時を待っているのです。


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