間接殺人
ヤマノカジ
あの日
セミが鳴いている。
夕日は赤く燃えていて、今にも燃え尽きてしまいそうだ。
そして僕は1人で帰ってしまった。
中学に上がってから二回目の夏休み、一日一日を同じように過ごす時もあったり、友達と遊んだり、充実してる日が続いた。
ある日、小学校からの親友のゆうちんに川遊びに行こって言われた。
僕も別に暇だったから行くことにした。
予定では三、四人集まるはずだったんだけど皆んなに断られちゃったみたいで、当日は僕とゆうちんの2人きりだった。
「川遊びなんてひさしぶだよな」
「そうだね」
集合場所のバス停から十分ぐらい歩いたところで川が見えてきた。
浅く僕達みたいな子供でも大丈夫そうな川だった。
「ここ穴場スポットなんだぞ〜!ほら全ッ然人いなだろ!」
確かに辺りを見回しても他の子供や人がいるような素振りがない。
「よく見つけたね」
「まぁ俺なら余裕ってコト?」
ゆうちんは自分の頭を指でツンツンしながら賢さをアピールしてきた。
まぁ実際ゆうちんは前の定期テストでいい点取ってたしな…実は真面目なのかもしれない。
「そうちゃん水切り競争やんね?ちょっと川ちっちゃいけどね」
「全然いいよ、楽しそうだし」
「うぇいっ」
軽快な相槌の後、僕たちは一人一人黙々と投げる石を決める作業に入った。
こうゆうのはテレビで見たことあるぞ。
確か平べったくてなるべく薄いやつがいいんだよな…
僕は理想に近い石を探し当てることに成功した。
ゆうちんはなんか…すんごい歪な石を持っていた。
僕は少し笑っちゃいそうなのを抑えたけど、
「ぷぷっ」てちょっと声にでちゃった。
ゆうちんはそれを見逃さず
「なにわらってんだよっ!いや絶対俺の方がいいかんなぁ?」
「確かにねっ笑」
「早くやろうぜ」
「うん笑」
先に僕がなげる事になった
「ふんっ!」
投げた石は五、六回弾んだ後に沈んでいった。
テレビはもっとできてたんだけどなぁ?
次はゆうちんの番だ。
「おらっ!!!」
ゆうちんは十二回弾んだいた。
「俺の勝ち〜!後でジュース奢れよっ!」
「え〜!?そんなの知らないよ〜!まぁいいけどさぁ〜」
こうして時間は過ぎ空も暗くなっていき帰る時間になった。
「んじゃっ、そろそろ帰るべ」
「うん」
僕とゆうちんは帰る準備をして、帰路につこうとしていた。
「いや〜そうちゃん今日マジで俺たの」
後ろにいるはずのゆうちんの声が急に聞こえなくなった。
え、なに…?後ろで何かあったの…?
今まで聞こえていたゆうちんの楽しそうな声はなくなっており、聞こえるのは蝉の鳴き声だけ。
少しの硬直の間。僕は思いっきり走った
僕は馬鹿だ。弱い奴だ。
僕はただ怖くて、何をしたらいいのかわかんなくて。
なんで、
なんで、
後ろでかすかに
「そういち…」
って声が聞こえた。
だけど僕は振り向けなかった…何をしてるんだ…馬鹿ッ…馬鹿ッ…!
僕は1人で家に帰った。
家に帰るとお母さんが夕ご飯を作っていた。
「お、おかえり〜なんかすごい汗だくだけどなんかあったの?」
「別に、大丈夫だよ、楽しかったよ」
「そう。じゃあよかった。手洗いうがいしなよ」
「うん」
僕はそのまま自分の部屋に行って泣いた。
これまでにないほど泣いた。
泣きたいのは僕じゃなくてきっとゆうちんなのに。
次の日、ゆうちんのお母さんが来た。
ゆうちんのお母さんは心配そうに僕のお母さんと喋っていた。
僕も呼ばれてゆうちんのお母さんと喋った。
けど知らないっていってしまった。
その日からは僕は生きている感じがしなかった。
夏休みがあけ、登校日初日、教室に入って僕はゆうちんの机を一番に見た。
ゆうちんの机にはひとつの花瓶が。
ゆうちんは僕が殺してしまった。
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