第17-1話
「ゴースト系のモンスターよ!」
アランパーティーで一番読書家のラベンダーが叫んだ。
ラベンダーの言葉を一番早く理解した人はアランだった。
アランはパーティーのみんなにわかりやすく話した。
「教養の時間にインモラル校長が教えてくれました!思い出してみてください!」
するとようやく皆が記憶を思い出し、姿勢を取り戻した。
冷たい風が吹く地下5階。
レイスが一方通行の地下に立ちはだかっていた。
動く気がないようだった。
戦闘を避けることは難しい。
そう結論を下したのはアランパーティーの剣士たちだった。
パーティーの前衛組である剣士たちは突進態勢を取った。
地面を蹴る音がした。
5人の剣士たちが力強く進み、剣でレイスを斬った。
スルスルッ。
レイスは何の被害も受けていなかった。
剣士たちを通過させ、気持ち悪い笑みを浮かべた。
「ゴーストに物理攻撃なんて通用すると思う?無知ね!」
剣士たちは嘲笑されても怒らなかった。
攻撃が通じないのは知っていた。
それでも攻撃した理由は時間を稼ぐためだった。
レイスがあざ笑っているときだった。
15個の火の玉がいつの間にかレースに向かって飛んでいった。
魔法使いたちは行動がすばしっこい。
剣士たちが稼いでおいた時間を十分に活用した。
レイスの透明化には弱点があった。
物理攻撃を避けたレースは一瞬だが露出状態になる。
この時、弱いレースの場合はダメージを倍に受けるのだ。
レイスはびっくりして、すぐに魔法防御幕を開いた。
15個の火の玉のうち9個は防いだ。
しかし、6つの火の玉に当たってレイスの体力が30パーセントも削られた。
レイスは苦しそうにうめき声を上げた。
「ウッ。見た目より頭のいい師匠に教わったようね?私の弱点を知っているなんて!」
「おしゃべりなモンスターね!うるさいからさっさと死ね!」
「クウッ、簡単に引き下がるわけにはいかない!」
アランパーティーとレースの戦闘はしばらく続いた。
レイスは弱点がばれてもかなり強かった。
剣士たちの攻撃を受けて露出状態になれば、自分に魔法が降り注ぐことを予想して壁にそっと隠れた。
「モンスターにしては頭を使うな。」
壁から再び現れたレイスは、しつこくアランパーティーを苦しめた。
戦闘は消耗戦になりつつあった。
パーティーの魔法使いたちはそろそろ魔力が底をつきてきた。
一方、レイスの体力もあまり残っていない。
壁に隠れるタイミングより魔法攻撃が早い時もあったからだ。
「ちょっとした浅知恵だけどそれでもモンスターにすぎない!」
ジェニーは息を切らしながらそう言った。
するとレイスが怒り出した。
「私はもともと君たちよりずっと頭のいい人間だった!呪いにかかってこうなっただけなのに!」
「へえ、嘘もつけるのかい?」
アランが独り言を言うと、レイスは力の抜けた声で答えた。
「本当よ…私は人間なのに···。」
「本当ならどうして私たちを攻撃するの?」
「君たちが先に攻撃したじゃない!私はただ頼みに来ただけなの!」
アランは疑いをなくしはしなかった。
ただ、話を聞いてみる価値はあると思った。
モンスターが情報を与えることがたまにあると、インモラル校長が授業時間に話したことがあったのだ。
「もし君が本当に人なら、頭がいいなら、私たちが望む情報とともに私たちを説得しなければならない。」
正直情報以外には関心がなかった。
ところが、レイスの口から思いがけない言葉が飛び出した。
「私の名前はトンド。私はソリッドアカデミーの1年生よ。みんな私を「低能児トンド」と呼んでたわ。すべてはこの時始まった。」
ソリッドアカデミーといえば、アンビションアカデミーよりちょうど順位が1つ高いアカデミーだった。
アンビションが16位ならソリッドは15位ということだ。
レイスは続けた。
「私は自分についたあだ名を消したかったの。私が一番下手なのは知っていたけど、師匠のように従う教授だけは、私に可能性があると毎日言ってくれたわ。」
アランは少し敏感になった。
「師匠」という言葉が気になったからだ。
アランは思わず尋ねた。
「それで?」
「それで私一人でダンジョンに入ってきたの。私が低能児ではないことを証明しようと思って。私は1ヶ月間一人でダンジョンでレベルアップをしたの。そして3階の最初のボスモンスターまでは殺す勢いだったわ。」
「それはすごいね。」
「はっ。最後まで聞いて。私はそれからもう1ヶ月間ダンジョンにいた。一人で6階まで突破しようと思って。 でも…。」
レイスは声を震わせた。
「でも6階のボスモンスターに負けてしまったわ。私の精神と肉体はダンジョンに捕らわれてしまった。そこで私を救おうと教授がダンジョンに訪ねてきたのよ。」
戦闘はいつの間にか中断された。
アランパーティーは、レイスの訴えが嘘ではないことを知った。
この話は数ヵ月前、西部国家から広がった話でアカデミーの生徒なら一度は聞いたことがある。
(弟子を救うために教授一人がダンジョンに単独で入って。)
その結果は教授の失踪につながり、多くの生徒の心を痛めた。
通常、教授級は初級ダンジョンを単独で突破することができた。
しかし初級であっても数多くの危険要素があるのがダンジョンだ。
予想外のことが起きて命を落とすことは多い。
つまり、世間は助けに行った教授も死んだと判断していた。
レイスが言った。
「教授は一人で9階に上がった。私が肉体を取り戻せるように、ダンジョン核を壊してくれると言っていた。」
ラベンダーが首を横に振った。
「何も知らないのね。9階を突破することと、ダンジョン核を壊すというのは別の意味よ。9階にはレベル60のボスが生息しているけど、ダンジョンのどこかのダンジョン核を守るのはレベル200くらいの怪物。」
「つまりそれって…!」
私の師匠が死んだというのか。レイスはそう言おうとしたが、それが事実になるかと思い途中で口をつぐんだ。
アランは沈んだ声で尋ねた。
「事情は分かった。そして僕の頼みを聞いてくれるかは別だ。君の言っていることが本当かどうかは分からないし、君が僕たちにとって何の得があるかも分からない。僕は僕の師匠にそう教わった。君なら理解できるよね?」
レイスはアランが何を言っているのか分かった。
師匠に仕える弟子なら理解するほかなかった。
レイスはアランが賢いと思った。
確信の声でレイスが言った。
「私は5階に追放され、数ヵ月間ここを放浪した。だから道に詳しい。この先は数多くの分かれ道が出てくる。本当に君たちを助けることができる。」
「ふむ。」
「お願い。私も次の階に連れて行って。呪いのせいか一人で次の階に行くことができないのよ。私は自分を安心させてこの世を去った先生を見つけたい。」
「情報があるというのは信じるよ。でも君が経験したことが真実だという証拠は?簡単でいいから見せてみて。」
「いいわ…これを見れば信じるでしょう。」
レイスは落ち着いた雰囲気で、宙の1か所を何度も回った。
するとそこから古い映像が流れ始めた。
弱い弟子とそれを守るための師匠の話。
しばらく続いた映像は世間に知れわたっていた事実そのままだった。
「さあ、今のは記憶を見せるシンクロ魔法。すべて私が経験したことなの!これで私を信じる?」
アランは映像が終わった後深く悩んだ。
間違った選択で取り返しのつかないミスは避けたかった。
アランは自分の学科ジャンパーに取り付けられたブローチを掴んだ。
初めてブローチのスイッチが入った。
「校長先生。今も私たちの姿を見ていますか?」
あっという間だった。
ブローチから中年男性の声がした。
「ああ。」
「気になることが一つあります。今出た映像が幻覚魔法の一種なのか、それともシンクロ魔法なのかが知りたいです。」
「……レイスが見せてくれた映像だね。あれは自分の記憶を見せる本当のシンクロ魔法だよ。」
「そうですか。」
「アラン、後悔のない判断をするようにしなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
ダンジョンの外にいたインモラルは一切そぶりを見せなかったが、内心驚いていた。
レイスにあんな事情があるとは思わなかった。
インモラルはこの世界に詳しいと自負していた。
ゲームを深く掘り下げて、大事件は本当に全て分かった。
(私の記憶が間違っているのか?)
レイスは階層の難易度を上げる軽いクエストに過ぎなかった。
ところが、まるで小さなクエストが重いクエストに拡張されたようだった。
(まあそれはどうだっていい。)
とにかく流れが変わった。
アランは一度パーティーと話した後に決断を下した。
悩んでいたアランは結局、レイスと一緒に行くことにした。
アランは自分の手で絶壁を作ったようなものだった。
レイスは不吉な気配で強いモンスターを引き寄せる。
これでダンジョンの難易度上昇は避けられない。
結果的にこの階は簡単に突破することが難しくなった。
(その選択に責任を負うことができるのか、アラン。)
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