第10-2話
学生たちの心に「全くできないわけではない」という考えが定着した。
インモラルは完全に氷の障壁を解いた。
すると、平原に残ったスライムがどっと押し寄せてきた。
もうスライムを怖がる学生はいなかった。むしろ難易度が高くなったことを楽しんだ。
数時間が過ぎた。
いつの間にか平原はきれいになった。
あんなに多かったスライムが全て死んだのだ。
生徒たちは短時間で実力が上がったことを自覚した。
「どうですか。構えを変えただけなのに、最初とは感覚が違うでしょう?」
「不思議ですね。これでできるなんて。」
「できないことは皆さんに教えません。特に剣術専攻を志望する学生。 ぜひこの構えは覚えておいてください。今日は魔法を使いましたが、構えという根本はすべてにおいての中心になります。」
体格のいい学生のダリアが一番大きい声で答えた。
「はい!!」
「では、スライムの死体のところへ行ってみてください。拳より小さい液体が残っているはずです。その液体を持ってきてください。」
生徒たちはスライムの死体があるところに行った。
そうしてインモラルの前に大量のスライムの液体が集まった。
ジェニーはつまらないという表情で独り言を言った。
「スライムの液体は貧民街でもゴミ扱いよ。こんなものをどうしてわざわざ集めたのか。」
インモラルはその言葉を聞き逃さなかった。
「言いました。構えは根本だと。それは物にも該当します。活用の仕方によっては小便器も芸術品になるのです。」
インモラルは温度と湿度をチェックした。
平原には太陽が照りつけ、適度な湿気が漂っていた。
その瞬間、妙な空気が流れた。
学生たちが集めてきた液体が少しずつ動いた。
液体は一ヵ所にまとまり、体を膨らませた。
「さあ、これがキングスライムが作られる過程です。」
生徒たちはぼんやりとその奇異な光景を眺めた。
キングスライムの大きさは10メートルだ。
しかも平均レベルは40。
キングスライムが単純なジャンプ攻撃をするだけでも、学生は死ぬだろう。
インモラルは大きなキングスライムが完成する直前に話した。
「では距離を置きましょう。」
インモラルは学生たちを連れて移動した。
止まった位置はキングスライムがジャンプをすればすぐに届く距離だったが、十分だった。
これくらいの距離であればカウンター攻撃を仕掛けやすかった。
「もう少し遠くに逃げなくていいんですか?!私たちより30レベルも高いじゃないですか!」
ラベンダーは震えていた。本で見た知識を通じて、自分が一撃で死ぬという事実を知っているようだった。
「大丈夫です。」
インモラルは真剣な顔でじっとしているように指示した。
生徒たちはその言葉を聞き、インモラルのそばにぴったりと寄り添った。
しばらくしてからだった。
完成したキングスライムが体を丸めて飛び上がった。
するとインモラルと学生たちの頭上には巨大な影ができた。
スライムが降りてきているのだ。
「皆さん、頭を下げないでください。危機の中で頭を下げてはいけません。むしろそこに答えがあります。」
キングスライムの内部には大きな核があった。
大きな飛躍を遂げたせいで、核の部分が丸見えになっていたのだ。
これに一番先に気づいたのはアランだった。
アランは腕を空に上げて言った。
「頭を下げるな!エネルギーを集めろ!」
すると、生徒たちが一人二人と危機感を感じ、腕を空に伸ばした。
「男であるアランもやってる!」
「よし!やってみよう!」
生徒全員がすぐにエネルギーボールを作った。
アランが先にエネルギーボールを撃ち、続いて全員がエネルギーボールを放った。
キングスライムが生徒たちを襲う直前だった。
空中で逃げようがないキングスライムはそのまま弱点を攻められてしまった。
平原に爆音が広がった。
40個のエネルギーボールを打たれたキングスライムは、空中で大きな音と共に爆発してしまった。
爆音が静まったとき、インモラルと生徒たちを覆っていた影はきれいに消えていた。
その代わり、空からポンっとアイテムが一つ落ちた。
[キングスライムエッセンス]
グレード: 希少
アイテムタイプ : 消耗
キングスライムエッセンスは強い毒を持っています。しかし、使用によっては秘薬になります。上手に製造すると、しばらくの間レベルが200に上昇する薬になります。ただし、飲む回数が3回を超えると激痛で死にます。
*レベル50未満がエッセンスに触れる場合、猛毒によるダメージ。
インモラルは生徒がエッセンスに触れないよう注意した。
そしてキングスライムエッセンスをアイテムのみが入るこの空間のインベントリに別で収納しておいた。
-インベントリ収納10/100%
(よし、目的は達成した。だが…)
インモラルは驚いた。
キングスライムを作った理由はエッセンスを得るためだった。
後にダンジョンを攻略する時に使う必要があったため、ゲームをプレイした情報を活用して作ったのだ。
キングスライムは自分で狩りをする予定だった。
ところが、それを学生同士で狩ってしまった。
(これは可能なことなのか?)
生徒たちのレベルは皆10だ。
エネルギーボールも最下級のスキル。もちろん平原で作られるキングスライムは従来よりレベルが5~10程度低い。
(それでもエネルギーボールで殺すには、核の真ん中にある真の核を誤差なく正確に撃たなければならない)
生徒たちがその事実を知っているはずがなかった。
生徒たちは皆、ただ自分たちがキングスライムを倒したことに喜んでいた。
「わぁ!一気にレベルが2も上がった!」
「私も!すごいわ!1日でレベル2も!」
インモラルは平原の上の生徒たちを見ながら静かにつぶやいた。
「この中に特別な目を持った生徒がいるということになる…」
ある一人の人物がインモラルの目に入ってきた。
真っ先に危機を察知して立ち向かった人物。彼はタフで積極的なアランだった。
暖かい日差しが照りつける午後だった。
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