悪役で最低最悪の公爵家3男に転生したのでゲーム知識で自由に生きていく
青猫 裕
1章 原作開始前
第1話 怠惰で傲慢な転生
「やめろぉーーーーーー!!!」
……なんだ?どうなってる?
俺はさっき、通り魔に殺されたはずじゃ……
家?いや違う…俺の部屋はこんなに大きくない。
ていうか俺の家はこんな洋風じゃない。
「一体何が……」
俺はベッドから立ち上がった。
なんか動きづらい。
部屋に置いてあった大きな鏡を覗いた。
「はぁぁぁぁーーー???」
誰だよこれ?俺か?
いや、この顔見覚えが――
「って、【ゴッド・ブレイズ】に出て来る悪役貴族のキース・グリッドじゃねーか!!!」
【ゴッド・ブレイズ】とは簡単に言うと、学園に通う主人公が勇者になる為に魔王を倒しに行くゲームだ。
その道中に様々な敵、盗賊や魔物、闇組織や悪役貴族、と戦って強くなって行き最終的に魔王を倒すゲームだ。
そして俺はその敵キャラで、割と序盤で主人公にやられてしまう悪役貴族キース・グリッドに転生したようだ……
キース・グリッドとは公爵家三男にして、天賦の才能があるにも関わらずだらけきっていて、その上、本来なら負けるはずのない主人公との決闘に、前日に夜遊びをしていて寝不足、と言う理由で負けてしまう、何ともまぁ、クソ間抜けキャラだ。
2chでもゲーム内での初「ざまぁ」と言う事で何個もスレが立って盛り上がっていたよな。
面白いのがキース・グリッドのガチ恋スレが立ってたりしてたんだよな。
まぁ、ほとんどが冷やかしで、ガチ恋を語ってる人も居たけど本当かどうかは定かではないんだけどな。
そんな事より俺は通り魔に刺されてキースに転生したって事か?
滅茶苦茶やり込んだゲームに転生するのは嬉しいんだけどな……
「何でキース・グリッドなんだよぉーーー!」
ん?いや、まて、ある意味キース・グリッドに転生するのは悪くないんじゃないか?
公爵家でイケメン、それに加えて戦闘の才能も素晴らしい。
確か公式サイトで、キース・グリッドはわざと高いスペックで作って威張らせることによって、主人公に無様に負けた時の「ざまぁ」要素を高めてプレイヤーに楽しませる。
そんな設定があったような……
なら俺が才能を生かして「ざまぁ」を回避すれば【ゴッド・ブレイズ】の世界を楽しめるのでは――
可愛い子も多いからな……
そうだ!そうしよう!
まずは自分のステータスを確認しよう。
確かゲームでは心の中で「ステータスオープン」と唱えればいいみたいな会話があったよな?
(ステータスオープン)
『名 前』:キース・グリッド(男)
『年 齢』:14歳
『種 族』:ヒューマン
『身 分』:公爵家3男
『レベル』:1
『体 力』:20
『魔 力』:20
『基本属性』:『火』『無』
『特殊属性』:『浮遊』『隠密』
『希少属性』:『空間』
『単一スキル』: 『無効](S)『鑑定』(A)『魔法特攻』(A)
なるほど……
これは凄いな。
基本属性は必ず1つは持てる。
特殊属性は1000分の1の確率で持てる。
希少属性は50万分の1の確率で持てる。
つまり希少属性が1つあればかなりヤバい、原作でも数人しか居なかったはずだ。
それに特殊属性2つも相当凄いからな。
それに『浮遊』は持っていると凄く使い勝手が良い。
自分や他の人、物などを浮かせる事が出来る。
その上この『浮遊』は『空間』と組み合わると滅茶苦茶強い。
『空間』には空間転移があるのだが勿論空中にも転移可能だ。
しかし『浮遊』が無いと空中に転移しても落下するだけだ。
故にゲームでは最強の組み合わせと言われていた。
ちなみに希少属性よりレアなのが、賢者、聖女、巫女だ。
唯一属性と呼ばれていてこれらは100年に1度魔王が復活するタイミングで1人づつ現れる。
ん?職業じゃないのかって?
そうだこの世界に職業なんてものは無い。
何でかは知らないけど、運営がそう作ったんだから俺は知らん。
そして勇者なんだが選ばれるのではなくて、勇者は魔王を倒した人が勇者の称号を得る。
その為庶民でも誰でもなれるのが勇者だ。
「うーん、それにしても俺の未来は明るいのでは……」
それじゃあ、今後の事を考えるとするか。
原作開始は学園に入学してからだ。
猶予は1年…それまでに自由に生きても誰にも邪魔されない位に強くなる必要がある。
幸いキースは序盤で、しかも主人公が弱い時に傲慢で負ける。
故に俺が敵にならなくても対してストーリーに影響は無いと思う。
主人公との決闘イベントも俺が平民の癖に聖女になった主人公の幼馴染が気に食わなくて、キース・グリッドの方から決闘を仕掛ける事になる。
このイベントはスキップだな…俺、平民聖女好きだし…寧ろ仲良くしたいくらいだし……
まぁ、そんな上手く行かないだろうけどな…だって聖女は主人公に恋してるからね……
話はずれたけどこの猶予1年は長いようで短い。
だから有効活用する必要がある。
とりあえず魔法を試してみるか。
(コンコン)
「キース様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、問題無い」
入って来たのは50代位の執事服を着た男性だ。
俺はこの執事を知っている。
50代で現役の王国の暗部で活動している所謂スパイだ。
スパイと言っても裏切るとかは無くて、王国の害とならないかを近くで見張っているだけだ。
それ以外は普通にグリッド公爵家の執事でかなり信用は出来る…王国に害さえ与えなければね。
勿論父親も王国の暗部って事は知っているから、スパイと言うよりはどっちかというと見張りみたいなものだ。
(鑑定)
『名 前』:セドリック・セバス(男)
『年 齢』:54歳
『種 族』:ヒューマン
『身 分』:侯爵家執事(王国暗部)
『レベル』200
『体 力』:6000
『魔 力』:2400
うん、流石は王国の暗部だ…くそ強い。
レベルはmax500なので序盤で200はかなり高い。
ちなみにセドリックはこの国でも最強候補に入る猛者だ。
属性や単一スキルは『鑑定』のランクをSにしないと見れないか……
「キース様、お食事のご用意が出来たのでお持ちしました」
「あぁ、ありがとう」
俺がそう言うとセドリックは怪訝そうな顔を向けて来た。
それもそうだろう…キース・グリッドは傲慢で怠惰で女好き、そんな性格だ。
故に感謝の言葉など言うはずがない――それがキース・グリッドだ。
まぁ、俺は俺だキース・グリッドの性格を受け継ぐ気なんてさらさら無い。
「どうした、セドリックよ」
「いえ、何でもございません。ここにお食事を置いておきます」
「あぁ」
「では、何かあればお呼び下さい。それでは失礼いたします」
こういう事は執事じゃなくてメイドの仕事なんだがキース・グリッドに付いているメイドは居ない。
キース・グリッドは公爵家である事を利用して、多くの人に迷惑をかけて来た。
暴言、暴力、セクハラ、器物破損、数え切れないほどだ。
その為父親は、キース・グリッドの事は特に気にしていない。
そこでメイドも付けないで気の毒に思ったセドリックが仕方なくお世話している感じだ。
完全キース・グリッドの自業自得なんだけどな。
「こりゃ、頭痛いな……」
自由に生きて、可愛い女の子とイチャイチャしたい俺からしたらこの悪評は邪魔すぎる。
とりあえず1年間はこれ以上悪評が流れないようにしないとな……
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