第18話 残虐性のマッドサイエンス2

「ごめんね、正直言って高見以外の君たちにはね、恨みは無いんだよ。でも、どうせならさ。皆んな一緒が一番でしょ。ひとりぼっちにさせちゃ、あまりにも可哀想じゃない?そう思わないかな?」


 腕を後ろで組み、こちらを見つめる。そして、何よりも沖橋の目には光が入っていない。コイツは正常な人間ですらない。狂っているのだ。


「思うわけねぇだろ。俺は殺す理由を聞いてるんだよ。そんなお前の持論なんてどうでもいい。」


「あー、生意気だね。まぁ、良いよ。時間もないから特別に教えてあげるよ。」


 大事なキーワードがこれから飛び出すはずだ。俺はこの出来事を忘れない様に必死に沖橋の顔を睨みつける。


「それはね、、、前世の恨みなんだよ?」


 狂気の笑顔のまま沖橋はそう答えた。


「はぁ?どういうことだ?」


「詳しくは語らないけどね、彼には前世での恨みがあるんだよねー。まぁ、それが一番かなー。」


「正直現世での彼には恨みは無いよ。」


「じゃあどうしてそこまで?」


「はぁ、バカなの?恨みってものは数千年も続く様な恐ろしいものなんだよォ。貴方が私を恨む様にね。」


「まあ、立ち話が過ぎたわ。せいぜいそこで野垂れ死になさいねー?じゃあ、おやすみ。また、次のループで。misfortune」



「待て!!せめて俺を殺してからにしろ!!行くな!!」


 俺はそう必死に叫んだが彼女の足が止まる事は無かった。ああ、絶望とはこの事を言うんだな。俺には無駄に数分の時間が余ってしまった。耐え難い苦痛の中、俺は携帯電話を取り出し、玲に電話を掛ける。


「頼む、出てくれ!!」


 すると、3コールしたほどのタイミングで玲が俺の電話に出てくれた。


「もしもし、カズ!!どうしたの?何かあったの?」


「......お願いだ玲!!今日は君はずっと家に居てくれ、、、」


「ど、どうしたの急に!!高見を殺した犯人を探すんじゃ無かったの?」


「それがな、玲。犯人ってのは案外身近に居るんだなって事を、俺は不本意ながら学んでしまったんだ。」


「!!誰なの?その犯人!?」


「沖橋......グハァ」


 口からドロドロとした血が喉の奥から流れてくる。そのせいで吐血してしまった。

 地面いっぱいに血がどんどん広がっていく。


「カズ、大丈夫なの?」


「ま、まぁ、一応には。今は気にするな。」


「そ、そう?大丈夫なら良いんだけど。それで、沖橋さんが犯人と分かった確信は何かあったの?」


「俺が直接コンタクトを取り、探った。その時に、向こう側から語ったんだ。」


「そんな、無茶な。」


「ああ、無茶だった。だが、アイツで確定だ。認めたんだ。高見を殺そうとする意思をな。」


「なんてことなの。正直信じられないくらいの事が起きてるわ。でも、貴方がそう言うならば信じる他ないわね。」


「ああ、それが有....難い.....」


「大丈夫なの?さっきから苦しそうだけど。」


 本当は大丈夫じゃ無いさ。何故なら今この瞬間死にかけているのだから。

 強がっているがもうそろそろ限界でいつ事切れてもおかしくは無い状態であった。


「俺は、何度でもやり直せる。次こそは、この流れを断ち切るんだ。」


 俺はそう言いながら意識が薄れていった。死ぬ間際に。玲の心配そうな声が電話越しに聞こえてきた。


「ど、どうしたの?カズ!!!!大丈夫??」


 大丈夫じゃ無い。今また死にかけているところだ。すまないな、玲。また、次のループで会おう。また会う日まで。


「また、学校で会いましょう。」

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