第11話 一過性のマインドソウル6

「これからどうする。」


 俺は特に思いつくこともないので、そんな無責任な事を俺は玲に問いかけていた。


「どうするって.....私達でどうにか変えるしかないでしょ。この運命を。」


「だよな。だが、今の今までで、全く検討がつかねぇんだ。」


「何回もループしても最後の結末がほとんど変わらないからうんざりするよ。」


「そもそも論の話、あの建物に行ってるから悲劇が起きてると思うの。だから、何があってもあの建物に皆んなを近寄らせない。それが結論というか、目標ね」


「なるほど、つまり原因を作らせないって事か。」


「そう言うことよ。」


 確かに。俺たちがあんな事に巻き込まれるそもそもの原因はあの廃病院に行ったことであり、それ以外は無いはずだ。だが、どうだろうか。一度強く興味を抱いたものから高見を離れさせるのは難しい事であろうからな。簡単に行ってればこんなにも苦戦はしないはずであろうからな。


「高見を力ずくでもその気にさせないようにするって訳か。」


「そう。その通りだけど。ただどうやって高見の気を引けば良いのか、それが分かれば早いんだけども。」


 あいつの興味があるもの。アイツの興味を引くもの。

 それは、想像も付かないバカらしい様なことだ。今回の心霊も、そうだしあいつの提案は少しぶっ飛んでいることが多い。だから、今回の心霊も上回るような興味をそそるものを数時間で考えないといけない。そう思うと難易度はどんどん上がっていく。最早、試行錯誤覚悟でやらなければいけないかもしれない。


「そうだな。ただ、一度決まっている運命はどうあがいても中々外れ難いのかもな。」


「うーん、そーね。あんた、何かいい案とかないの?」


「うーむ。そう言われてもな、、、」


 高見の興味を引くもの。心霊。オカルト。馬鹿な事。考えろ。アイツが興味を持つものだ。一体何がある?考えてみろ。なんでも良いから取り敢えず一つの案だけでも考えておきたい。

 この縛られた運命も引き裂く事だ。簡単なことでも良い。俺は、何をすれば良い。アイツに何を誘えば良い。考えろ、考えろ、考えろ。何をしてきて、何をしてこなかったんだ。

 だが、そんな時その場凌ぎの様なあまり良いとは言えないアイデアが浮かんで来た。


「ん?まてよ。いい事思い付いた。」


「え?思い付いたの?」


「ああ、成功するかは分からないが可能性はあるだろう。」


「ないす!なら早速教えて!!」


 俺は玲にその計画を事細かに伝えた。


「......なるほど。少し、アイデアとしては弱いかもしれないけど、可能性が少しでもあるならば一度やって見る価値はありそうね」


 どうやら俺の提案した計画に納得してくれたそうだ。挑戦する。何度でもチャンスはあれど、その間に高見達は苦痛を伴う事になる。例え、その苦痛を覚えていないとしても誰もそんな事は望まれない筈だ。何度も同じ事を繰り返すのは苦痛だ。


「それじゃあ、今から決行!!」


 話に夢中になっていたが、気づけば時刻はもう既に集合時間に近づきつつあった。


「それじゃあ急いで場所まで行こう。くれぐれも、ミスしないようにな」


「当たり前じゃない、私がミスするわけ無いじゃな......」


「ツー、ツー、ツー。」


 電話が切れた時の音が何度も携帯から鳴り響く。

 これから時間もあまりない為、玲の会話の途中で遮る様に切ってしまった。

 きっと後で文句を少なからず言われるであろう。

 しかし、今はそんな事を気にしている場合でもない。

 残念ながら非情な現実が刻一刻と近づいてきているのだ。

 さっさとこの場を離れて、高見らと合流しよう。全てが手遅れになる前に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る