第10話 一過性のマインドソウル5
俺たちを殺した憎き、犯人を倒すため、今から金属バッドを拝借しようと企んでいる時、急に誰かから電話がかかってきた。
よく聞いた着メロが部屋中に響く。
音がデカすぎて耳が痛い。どうやってこの携帯は着信音を小さく出来るんだよ。
はぁー、なんだよ、まったく、こんな大事な時に...誰だ?
きっとろくでもない電話だと思いながら、俺は電話に出る。
「もしもし?俺だぁー。いったいこんな時間になんだ。いったい何処の馬の骨だ?」
「あっ、もしもし、カズ、だよね?.....。」
かなり聞き覚えのある声が電話越しから聞こえた。
それもよーく、聞いた事のある声だ。
その答えは簡単だった、電話相手は俺の友達、いや、ふるきからの幼馴染だ。
「ん、ああ、そう、俺だ。お前からかけてくるなんて随分珍しいじゃないか。こんな時間に一体どうした?なんか事件でもあったのか?」
「いやね、あんたにちょっとだけ相談したいことがあって電話したのよ。」
俺に相談したいことだと?
今までのタイムループでこんな展開一度も無かったよな。
それどころか、玲からの電話は紛れもなく今回が初めての事例だ。
「それで、いったい相談事ってなんなんだ?」
「いやね、物凄くへんぴな変な話で、正直あなたに信じて貰えるかかどうかはわからないけれども。」
「大丈夫だ、俺は人の話を疑った事などない。この世には真実しかないからな。」
「まあ、いいわ、どちらにしろ、話す。あの、もしかしたら、いやもしかしたらって言うかね、私、ずっと同じ、この1日を、この死ぬ日を、何度も、何度もループしているんだ!!。」
俺はそれを聞いたとたんハッとした。
この情報が脊髄から脳に伝わるまでに時間はかからなかった。
耳ではなく俺の本能が伝えた。
まさか俺以外にもこの地獄ののループを体験しているやつがいたなんて、まったく思いもよらなかった。
さらに玲がループしてるとは。
「それは本当か?さっき言ったことで間違いないんだな、玲‼︎」
「ほ、ほんとよ、私が他人に嘘つくわけないじゃない。全くもう、素直に信じなさいよ。私は仮にも、あんたのお友達なんだから」
そうは言っても、俺はこの高まる感情を抑えきれなかった。
まさかまさかの出来事だ。
というか全く予想していなかった。
本当に、全く予想だにしない展開。
少し、意外性な人生について知れた気がした。
「玲!!」
「どうしたの?さっきから、声を荒げて。ちょっとは、落ち着きなさいよ。別にからかったわけじゃないのよ。」
「玲‼︎じ...実は...お.お..俺も...この一日を...あの廃墟で、みんなが死ぬ日を、何度も何度もループしているんだ!!。」
「えっ、あなたも?私と同じくずっと、ずーっと、この日を何度も何度もループしているの?」
驚く声が電話越しに聞こえてくる。無理も無いだろう。こんな非科学的なことをなん度も繰り返しているのだから。
「ああ、そうだ。嘘偽り無く。」
「じゃあもしかして、あの廃病院の惨劇のこと覚えている?」
「ああ、生涯忘れるわけが無い。あんな、2度も3度も絶対に、あってはならないような事を。」
今でも思い出す。何度も見てきたあの忌々しい過去を。いや、この日を。
「あのあと、私はあなたに助けられて、必死に廃病院から生き残り、警察に保護されて、骨が折れてたから治療してた筈なんだけど...寝て起きたら直前まで私は病院で寝てたはずなのに家のベッドの上で目覚めていたんだ。」
気づいたら家のベットから、目覚める...か。
俺がループする時の特徴と全く一緒だ。
「私は不思議に思いその時、学校に行く前に日付を確認したんだ。でも日付はその日から全く変わった様子がない。それで不思議に思った私は、お母さんに昨日のことを聞きだそうと思ったの。でもお母さんは何一つ昨日の私のこと覚えていない様子だった。覚えていないどころか身に覚えがないような振る舞いだった。そしてその後学校に行って、高見からまた誘いが来たからまさかかと思って電話したの。そしたら私もあなたもループしていると気づいた。それが今までの経緯ね。」
「ちなみに俺を、いや。皆んなを殺した犯人の顔は覚えていないか?」
「ごめん.....病院が暗すぎて顔を見ようとしたけど全く見えなかった。フードも被ってたし.....でも犯人が着ていたコートの中に高校の制服っぽいモノが見えたの。」
「えっ!!それってつまり...」
「そう、まさかだとは思うけど、その犯人は同じ学校の奴らかもしれないの。」
おいおい、どうなってやがる。同じ学校の奴が犯人かもしれないって。
もう、訳がわからん。誰だ?そんなことするやつ。学生とは思えないが。
「でもどうして同じ学校の奴らが犯人だと出来るんだ?制服がよく見えてないなら他校の奴らの可能性だってあるし。断定が早いんじゃ...」
「いや、他校がやったとは考えにくいの。だってさ、この高校の近くには他の学校が全くなくて、一番近い所でも10km以上離れているの。貴方も知ってるでしょ。しかもこの廃病院のこと知っているのって、私達や、ここの住民の限られた人しか知らないはずだから、そうかもしれないと睨んでいるの。」
「確かに.....」
もし、それが本当ならば、狂いそうなくらい気持ちが悪い。
同じ学校に、あの殺人鬼が居るかも、知れないなんて。
俺らを苦しめた奴が、同じ県、同じ地域、同じ学校、なんなら一度すれ違ったり、会話を交わしたかもしれない。
それを考えると変な汗が止まらない。
「まあただ、これも一つの考察に過ぎないから、完全に決めつける事は、まだ出来ないんだけどね。」
「違う学校の奴だと、思いたいところだが、きっと同じ学校の奴だろうな。」
このままだと犯人の断定は、今のところ不可能に近い。
くそっ、この運命とやらはどうしたら重い腰を上げて動いてくれるのか。
俺は、決してこんな閉鎖的な日常は、欲しくない。
ハレの日は一日だけで十分なんだよ。
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