第17話 作戦会議

 急に魔族があらわれたということで街の皆が不安になっている中、冒険者たちがギルドに集められていた。



「それでは……冒険者ギルドによる緊急ミッションを発令します!! いまだ森の奥に潜む魔族の探索よ。Cランク以下のパーティーは探索のみで、もしも魔族をみつけてもBランク以上のパーティーが来るのを待つこと。王国からの援軍も来るし無理に戦う必要はないからね」



 ほとんどの冒険者がいるということで、皆の注目が集まる中アイシャさんも緊張した面持ちで皆に説明している。

 

「すいません、待機って言われてももしも魔族を見つけた場合はどうすればいいんでしょうか? 応援を呼ぼうにもうかつに動いたら危ないんじゃ……」

「それに関してはわしから説明しよう」



 恐る恐る手を上げて疑問を口にするアベルに答えたのはエレナである。グスタフとくっついている時とは違い真剣な表情の彼女は、エルフ特有の整った顔立ちもあり、知的なオーラを放っている。



「おお、エレナ様だ!! 本当にここにきていたのか」

「魔王殺しの英雄様だ!! あの人さえいれば魔族なんて怖くないぜ」

「うふふ、かっこつけているエレナさん可愛いです!!」



 あ、エレナってばほめられて笑みを浮かべたいのに必死に耐えている。真面目な顔を取り繕いながら彼女がカバンから取り出したのは小さい貝の形をした魔道具だった。

 音声の再生する魔道具に似ているけどあれは違う。



「これは遠く離れていても声を伝えることのできる魔道具じゃ。ほれ、何かしゃべってみるといい」

「は、はい」


 エレナが無造作に投げた貝の魔道具をアベルが受け止めると緊張した様子で口にする。



『本当に聞こえるのかな? ていうかエレナ様可愛い……』

「わしは可愛い系ではなくクール系なのじゃが……」

「「おおーーーーーー!!! すげえ、こんなものを作るなんてさすがは大賢者様だぜ」」



 ボリュームの上がったアベルの声がエレナの持つ声から聞こえてきて、冒険者たちが称賛の声をあげる。

 さすがは大賢者様大人気だなと思っていると、エレナを指さしてドヤ顔で言った。



「ふふん、わしが天才なのは事実じゃが、これを作るヒントをくれたのはそこのグスタフじゃ。こやつのアイデアがなければ完成しなかったじゃろうな」

「え、グスタフってあのうさん臭い仮面の……?」

「不審者ランキング一位の……」



 冒険者がざわっと騒ぎ出して信じられないとばかりに俺を見つめる。

 あれ、俺の評価って低くない? いや、本気を出してなかったからしかたないんだけど……

 ちなみにこの魔道具は昔電話みたいなものを作れない? ってエレナとはなしてたら面白そうだなと作ったものである。彼女とは俺の前世の知識を使った便利な魔道具やおいしそうな料理を一緒に作っていたりしたのだ。



「師匠……私は師匠の強さを知ってますからね」

「うう、ありがとうティア……優しさが染みるよ」



 へこんでいるとティアが頭をよしよしと撫でてくれる。可愛い上にママ味もあるだって? この弟子、将来が恐ろしすぎるね。

 そして、魔道具の説明も終わりひと段落する。



「あの……エレナ様良かったら私たちとパーティーを組んではいただけないでしょうか?」

「いや、ここは俺たちが!! 前衛職は豊富ですし、必ずやあなたを守って見せますよ!!」

「おお、エレナはやっぱり人気だなぁ……」



 さっそく勧誘をうけて人だかりを受けている光景に思わず感心していると、得意げになっているエレナと目が合う。

 彼女がこちらむかってくるとまるでモーゼの海割りのように人が左右によけていき、ぎゅっと腕を掴まれた。



「うお?」

「すまんのう……わしのパートナーは決まっているんじゃ。この男とな」

「なっ、グスタフと……?」

「でも、あの人がこの魔道具を発明したって言うし、実はすごい人なんじゃ……」

「確かにトロルをたおしたっていう噂もあるしな……」

「そうです、師匠は強くてかっこいいんですよ!! 今更わかってももう遅いですよ」



 なんだか俺にまで注目が増えているんだけど。だけど、ここまで来たら目立つのは嫌だとか言っている場合ではないだろう。

 次に魔族と戦う時は魔眼も使わねばならないだろうし……それにまあ、皆に尊敬の目で見られるのはちょっとうれしい。



「ふふん、わしとお前さん、ティアならば魔族なんぞ敵ではないじゃろ?」

「ああ、エレナが仲間なら心強いよ」

「うふふ、三人で頑張りましょう」



 信頼に満ちた目でこちらを見つめる彼女に俺は頷く。あれだけ本心を聞いたのだ。彼女が裏切ることはないし、俺ももう背中を預けることができる。

  そして、武器の最終チェックなどを終えて森へ向かおうとすると見知った顔が声をかけてきた。



「ティアちょっといいかしら?」

「はい、いったい何の用でしょうか?」



 それはティアを追放したパーティーの一人でプリーストのフラウだ。彼女は緊張した面持ちティアを見つめているのだった。










★★★



 グスタフ君の冒険者ギルド内での評価がなんか上がってきましたね。

 そして、フラウはティアにどんな用があるのか?

 

 次回お楽しみに!!



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