第2話 盗賊は厄介だ

 大木の近くの広場で一夜を過ごした俺たちは次の目標地点の泉の広場を目指して移動した。

途中でリンがウサギを見つけて狩った。俺には気が付かないのによく見つけたな。それに狩り方もすごい。水の塊を作り出してそれを高速でウサギの頭にかぶせる。ウサギは逃げようともがくが水の塊は頭から離れない。そのまま窒息して動かなくなった。

 解体と血抜きは苦手のようなので俺が請け負った。泉につくまでに三匹狩ったので数日は大丈夫だろう。リンはマジックバックを持っていたので助かる。


 泉についたら火を起こしウサギを焼く。携帯食が残り少ないので助かる。俺は泉で体を洗ったがリンは洗わなくていいという。まぁ、俺は気にしないことにした。


 休んでいると行商人が3人追いついてきた。彼らは泉の広場に入ってきたときは俺たちをじろじろと見たが、近寄ると愛想よく話しかけてきた。どうやら俺たちと同行したいようだった。話を聞くとこの先で盗賊が出るらしい。俺の見た目はどう見ても傭兵。無料で護衛代わりにしたいのだろうな。そんな折、リンが腹痛を訴えた。脂汗をだし顔も青いのでこれは今日はここで野営か。行商人たちは顔を見合わせそそくさと去っていった。


「大丈夫か」

「あぁ、すまない、迷惑かける」

「まぁ、いいってことよ」


 翌朝になるまでにリンが回復したので安心した。もう少し休むかと聞いたら、

「いや大丈夫。すまない、ただでさえ足手まといなのにさらに遅れてしまった」

 と謝ってきた。

 足手まとい? いや、リンと一緒に行動するようになって水を探したり食料の確保をしたりする時間が短くなって却って早くなったのだが。そう言うとはにかむように笑った。やばい、俺は稚児好みじゃないが押し倒しそうになる。早く国境を越えてどこかで娼館に行くか。


 いかにも盗賊がいそうな場所というのがある。道が狭く、挟み撃ちができそうなところ。用心しながら通り過ぎようとしたら最近のものらしい血の跡があった。あぁ、先に行った行商人たちのものか。おれはさらに用心し、周りの気配を読みながら動く。途中で人の気配を感じたがそれは近寄ってこず、そのまま通り過ぎることができた。


 人の気配から離れたところでリンが話しかけてきた。

「もう大丈夫のようだよ。近くに誰もいない」

 魔法使いの特性なのかそれともリンのスキルなのか気配を読むのが非常にうまい。なので彼がこういうなら大丈夫だろう。

「あいつら、なんで襲ってこなかったんだ?」

 俺がつぶやくとリンが答える。

「さぁ、この間の行商人でおなかいっぱいだったんじゃないか」

 まぁ、行商人達は結構な荷物を持っていたからな。わざわざ面倒で金も持っているかわからない傭兵と魔法使いを襲うまでもないだろう。


 その後はウサギや鳥を狩ったり木の実や食べられる草を食べたりして道を急ぐ。本当にリンを見捨てなくてよかったよ。こいつ、森の中の知識が半端ないし、魔法も精緻だ。本人曰くしょぼい魔法しか使えないということだが、戦争でもするんじゃなければそんなに強い魔法は要らんだろう。


 無事に国境となる川にたどり着いた。この川は下流に行くと他の川と合流して大きな川となるがこの辺りはまだ歩いて渡れる程度だ。さすがにリンが疲れたようなので俺が狩りに行くことにした。


 いつもに比べて簡単に獲物を狩ることができた。木が揺れてそちらを見ると食べられる木の実も見える。俺はホクホクしながらリンのもとに戻った。


 戻ったところにリンはいなかった。見回すと大きな石が転がっているあたりにリンの着ていたフードがひっかけてあるのが見えた。それは獲物を置いてそちらに向かう。ちょっと脅かしてみよう、そんないたずら心だけだった。岩を回り込むとそこには美少女が水浴びをしていた。


「きゃぁーーー」

 彼女が悲鳴をあげる。この声は、リン?


 そう思う間もなく俺は何かに引っ張られ尻もちをついた。見ると白い糸が俺の体に巻き付いている。俺は逃げようとするとますます糸が増えてくる。何?よく見ると手のひらサイズの蜘蛛が何匹も俺の周りを走り回り糸を巻き付けている。

気が付くと上半身もぐるぐる巻きにされそのまま横倒しにさせられる。ご丁寧にリンが見えない方に倒されている。


「はぁ、バレちゃったね」


 

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