第7話今も生きてる

 僕は現在(2024年)になって初めて「キジマさん」の単語をインターネットで検索してみた。

 「口裂け女」や「トイレの花子さん」等のいわゆるな怪談と違い、この50年間、私の周りで「キジマさん」の話題が出た事も、目にする事も無く、僕自身もすっかり忘れてしまっていた。

 友人何名かに尋ねてみたが、「ああ、なんとなく」程度にしか皆覚えてはいなかった。


 ネットで検索してみると、驚いた事に現在いまも尚「キジマさん」の話は存在していた。

 僕は驚いたと言うよりしてしまった。

 もちろん、話の内容は随分と違っているし、バリエーションもいくつか存在する様だ。


 僕の知る「キジマさん」は女性だが、ネット上の話では男性が多い。

 交通事故に遭ったと言う点は共通、部位は違うが身体の一部を欠損し亡くなった点は共通。

 轢き逃げに遭って犯人を探し、家々を訪れ、そこで「おまえが犯人か?」と尋ねる。家を訪れ問いをなげかける点は共通。

 他にも調べればバリエーションが無数に存在するのかもしれない。

 だが、何よりその「キジマさん」の固有名詞は現在いまも存在していた。

 

 「キジマさん」の名前は今も生きている。


 もうそれだけで、何か神秘的と言うか霊的な何かを感じてしまったのだ。


 

 

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