買えなくて夏

一の八

第1話

「えっせい」



彼女が出来たからには、いずれそういう場面も来るかもしれない。

そんな時が来てもいいよに備えておかないと。

それこそが男のマナーではないのか。



そんな事を思って、近くのドラッグストアに立ち寄った。


それはあくまでもおまけ的な立ち位置で他のものがメインであれば何にも恥ずかしくない。


いざ、店に入ってみると、レジには若い女性の店員さんがいた。


思わず、うっ…となりながらも


とりあえず、メインを探してみると思っているものは違ったものしかない。

これじゃないな。


となると、残りはおまけだけになってしまった。



まぁいいかとメインのついでを探しみることにした。

しかし、1往復2往復するも見つからない。


そうか、この店はそもそも置いてないんだな。

だったら、仕方ないネットで…


いや待て待て、こんな決断も出来ないのに

この先の決断が出来るのか?

探すんだ!絶対にある!


自分を鼓舞しながら別の棚を探してみると、それはそこにあった。


様々なバリエーションをアピールして、選び放題であった。

今すぐにでも手に取れる位置にそれは置いてあった。


手に取るもこれだけを持ってレジに持っていくのは…

レジの店員さん若かったな…大学生くらいかな…


自分の中で小さな羞恥がそれを手にする事が出来ず店を後にした。


車に乗り込むと、ネットで同じ商品を検索した。


なんて、自分はこんな決断も出来なかったのと鬱鬱とした気分で購入ボタンを押した。


スマホの画面には、“購入ありがとうございます”の文字が、

社会に生きる男と同じと言えるのか?

自分に言い訳ばかりをしていていいのか?

そんな事でこの先も…?


とめどない自分に対してのネガティヴが湧き上がる。


だがその感情は、沸々と静かに治っていった。


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買えなくて夏 一の八 @hanbag

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