第2話 過去に戻った?


 体に衝撃が走ったような気がして、思いきり息を吸い込んで目を開ける。

 ……目が、開いた?

 見慣れた自室のベッドの天蓋。

 え、私……生きてる?


 体がどこも痛くない。

 もしかして、天国……? それとも助かったの? だとしたら、あれからどれくらい経ったの?

 体を起こす。すんなりと起き上がることができた。 

 見下ろす体に、傷はない。包帯だらけだったはずなのに。

 慌ててベッドから降りて、鏡を見る。

 ゆるやかに波打つ燃えるような赤い髪。深い緑色の瞳。……傷一つない白い肌。

 どういうこと? 理解が追いつかない。

 もしかしてあの事故が夢だったの? でもあの痛みを憶えている。夢にしては生々しすぎる。


 そこで響くノックの音。

 返事をすると、侍女のコニーが入室してきた。


「おはようございます、お嬢様」


「あ、ええ、おはよう」


 コニーが少しうれしそうな顔をする。挨拶を返しただけなのに。

 懐かしくさえ感じる、コニーの笑顔。ふわりと胸が温かくなった。


「コニー。その……私、事故の怪我から回復したのよね?」


「事故、ですか?」


「私、大怪我をしたでしょう?」


「……? 申し訳ありません、お嬢様が大怪我をなさったことはないかと思いますが……」


 やっぱりあの事故は夢だったの?

 それとも今夢を見ているの?

 わからない……どうしよう。


「お嬢様、体調がお悪いのですか? 今日から二年生という日ではありますが、無理せずお休みされたほうが……」


「……え?」


 今日から二年生?

 何を言っているの?

 私は王立学園の二年生の終わりの日、卒業記念パーティーで、星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたと断罪されて……。


「あっ……、申し訳ございません、出過ぎたことを申し上げました」


「それは別にいいわ。コニー。今日は何年の何月何日?」


「? 今日は王国歴二五四年、四月五日でございます」


 たしかに、二年生になって初めての登校の日だわ。

 どうなっているの。

 まさか、過去に戻ったとでもいうの……!?

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